2011年に発生した東日本大震災では、多くの命が犠牲となりました。
そしてこれを機に、日本中の自然災害対策への意識が高まってきています。
実際に現在も日本各地で地震を始めとした自然災害が頻発しているため、対策は必須です。
特に介護施設では、自然災害への対策が求められています。
実際に、2024年からBCP策定が義務化されることが決定しました。
この記事では、東日本大震災による介護施設への影響と、BCP策定の重要性について解説します。
特に災害の多い地域の介護施設で働く方には、ぜひご覧いただきたいです。
目次
東日本大震災によって介護施設関連で犠牲者が出ている
東日本大震災では、岩手県、宮城県、福島県の介護施設でも多くの犠牲者を出してしまいました。
犠牲者数のデータは、下記のとおりです。
死亡者 | 行方不明者 | |
利用者 | 407 | 78 |
職員 | 58 | 115 |
合計 | 465 | 193 |
犠牲になった方々だけではなく、東日本大震災によって苦しんだ介護施設利用者は他にも大勢います。
たとえば、物流がストップしてまともに食事を摂れなかったり、電気やガスなどの生活インフラの停止によってさまざまな不便を強いられたりという状況がありました。
また、災害によるケガで障がいを抱えてしまった方や、ショックでPTSDを患ってしまった方も少なくありません。
利用者だけではなく、職員の方々も大変な思いを強いられました。
自身の命が助かった後も、災害対応で油断ができない状態が続きました。
たとえばパニックを起こした利用者の対応や、食品や救急用医薬品など限られた備品の配分など、災害時にやるべきことは多岐にわたります。
しかし、このような大変な状況の中でも、犠牲者を1人も出さなかった介護施設が存在します。
その要因には、災害発生が夜間ではなかったことと、職員教育の成果があるそうです。
前者は運によってもたらされたものですが、後者は施設の弛まぬ努力や、職員への理念の浸透が大きく影響したのでしょう。
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東日本大震災への介護施設の対応
東日本大震災の影響を受け、介護施設はさまざまな対応をしてきました。
実際にどのような対応をしてきたか、下記の3点に分けて解説します。
- 要援護者の受入体制等
- 介護等サポート拠点設置等
- 介護保険制度における対応
要援護者の受入体制等
まず介護施設は、受入人数の拡大をおこないました。
被災により家を失ったり、原発事故に伴い家から退去せざるを得なくなった方々を救うためです。
そして多くの人数を受け入れるためには、多くの職員が必要となるため、職員の派遣調整もおこなわれました。
介護等サポート拠点設置等
介護施設の利用者のケアだけではなく、仮設住宅に住む要介護者・要支援者のサポートをするために、サポート拠点が置かれました。
サポート拠点では生活支援の他に、住民のための地域交流スペースも用意されました。
そして国はこのような対応のサポートをすべく、復旧に係る施設整備に対する国庫補助率引き上げ処置を実施しました。
介護保険制度における対応
介護保険制度における対応としては、被保険者証なしでのサービス利用の受入や、保険料の猶予や免除がおこなわれました。
これにより、経済的に困窮している方まで介護施設を利用できるようになりました。
東日本大震災によってBCP策定が重要視されている
東日本大震災をきっかけに防災意識が高まりましたが、防災対策をより具体的かつ実現可能なものにするために必要なのが、BCPです。
BCPは、2024年から介護施設での策定が義務化されるほど重要視されています。
2024年から介護施設でBCP策定が義務化
介護施設では、感染症対策強化や業務継続に向けた取り組みの強化を目的として、BCP策定が義務化されました。
義務化がされるのは2024年からであるため、それまでにBCP策定を実施しましょう。
義務化に反した場合の罰則規定があるわけではないですが、BCP策定をすることによって得られる報酬加算がされなくなるため、実質的には損をすることになります。
とはいえ、BCP策定は決して容易ではありません。
もし自施設の力のみでのBCP策定が難しそうであれば、BCPコンサルの活用も検討してみてください。
BCPコンサルの詳細につきましては、下記の記事で紹介しています。
厚生労働省が「自然災害発生時の業務継続ガイドライン」を公開している
公的機関である厚生労働省が自然災害発生時の業務継続ガイドラインを公開しているということは、それだけ自然災害に備えたBCP策定の重要性が高いということです。
自然災害発生時の業務継続ガイドラインでは、介護施設でのBCPの重要性について解説されています。
介護施設は利用者の命を預かっているため、BCP策定により災害のダメージを最小限に抑え、利用者を守らなければなりません。
そして利用者を守るためには、災害発生時でも事業の継続ができる体制を整える必要があります。
なぜなら、介護施設は利用者にとって生活の場であり、家同然のものであるためです。
災害発生時でも事業を継続するためには、職員の安全確保や、事業の継続に必要な備品の準備が必要です。
自然災害発生時の業務継続ガイドラインでは、BCP策定のポイントや自然災害発生に備えた対応についても具体的に書かれているため、ぜひご覧ください。
介護施設では自然災害のほかに「感染症」への対応が必須
自然災害だけではなく、感染症も無視できません。
なぜなら介護施設の利用者には、感染症に対する免疫が弱い高齢者が多く、被害の拡大が予想されるためです。
特に昨今流行している新型コロナウイルス感染症は、高齢者の方が重症化しやすいことが知られています。
特に同じ施設で生活を共にする場合は、感染症の感染率が高くなります。
そのため介護施設では、消毒の徹底やマスクの着用といった基本的なこと以外の対策もBCPで定めて実施しなければなりません。
具体的な対策につきましては、感染症発生時のBCPガイドラインをぜひご覧ください。
東日本大震災後の介護現場を支える「民介協」
民介協(全国介護事業者協議会)とは、民間の介護事業経営者のネットワークのことです。
東日本大震災発生直後は、介護施設への資源の輸送や、人材の確保などのサポートをおこないました。
民介協の強みは、行政とは異なり意思決定が早く、迅速な対応ができることです。
2011年4月に入ってからは、介護施設に入浴車両を持ち込み、入浴支援を開始しました。
入浴は身体を温め清潔を保つだけではなく、精神的なリラックスにも役立つため、介護現場におけるケアでも重要だと考えられています。
介護現場における入浴の重要性は、東日本大震災以前の阪神淡路大震災や、中越沖大地震での支援経験から認識されるようになりました。
介護現場を支える民介協ですが、支援活動を通じて見えてきた課題もあります。
たとえば人手不足で被災地に人員を送り込めなかったり、サービス提供責任者などが抜けるとコンプライアンスに引っかかってしまったりという問題があります。
また介護事業と同様に、災害時に必要とされる医療機関との連携も課題のひとつです。
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まとめ
多くの犠牲者を出した東日本大震災。
災害自体を防ぐことはできませんが、災害対策により被害を抑えることはできます。
人命を預かる介護施設は、他の事業よりも一層盤石な防災体制を整えなければなりません。