日本は、マグニチュード5以上の大地震が発生しやすく、地震大国と呼ばれるほどの国です。
地震は身近なものであり、いつ起きてもおかしくありません。そのため、地震が起きた時のために、さまざまな準備をしておく必要があります。
特に高齢者が多く利用する介護施設は、地震による被害が大きくなりやすいです。
そのため、介護事業従事者は、他の事業以上に入念な地震対策をしなければなりません。
この記事では、介護施設で地震が起きた時の対処方法やチェックリストを紹介するので、ぜひ地震対策に役立ててみてください。
目次
介護施設は地震が起きたら大きな被害を受ける
かつて何度も日本に大きな被害を及ぼしてきた地震ですが、介護施設ではとりわけ被害が大きくなる傾向があります。
なぜなら、介護施設の利用者は、身体の不自由な高齢者が多いためです。
また、高齢者は身体的なハンデだけではなく、危険を察知する能力が衰えていたり、パニックを起こしやすかったりという特徴があります。
実際に東日本大震災では、岩手県・宮城県・福島県で少なくとも59カ所の介護施設が被災し、入居者と職員合計で578人の方が死亡または行方不明となってしまいました。
また阪神淡路大震災では、死亡者のうち65歳以上の高齢者が50%以上を占めています。
上記2つの大災害からも、高齢者が地震による被害を受けやすいことがわかります。
現在では、大地震が発生した場合に、新型コロナウイルス感染症が拡大するリスクも伴います。
避難所では「3密」を避けるのが難しいため、クラスター発生の可能性も高いです。
新型コロナウイルス感染症は、特に高齢者にとっては危険なものであるため、より被害者が増えてしまう可能性があります。
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地震が起きた時に考えられる問題
介護施設で暮らす高齢者は、若者に比べて多くの問題に直面します。
地震が起きた時に考えられる介護施設で発生する問題としては、以下のようなものがあります。
- 自力での避難が難しい人もいる
- 情報収集収集が難しい
- 避難生活に適応できないこともある
自力での避難が難しい人もいる
介護施設には、病気や体力の衰えによって自力での避難が難しい人もいます。
また、認知症で状況を把握できず、避難の必要はないと独断で決めてしまうような行動を起こす高齢者もいるでしょう。
安全な場所に自力で非難するのが困難なため、介護施設で働く職員のサポートが重要です。
情報収集が難しい
高齢者はインターネットに使い慣れていないことが多く、情報を収集するのが難しいです。
そのため、発生した地震の情報や現在の状況を把握できないといったことが起こってしまいます。
また、それだけではなく、避難指示や避難勧告をインターネットから得ることができず、結果として逃げ遅れるといったことも少なくないです。
避難生活に適応できないこともある
避難場所に何とか避難できたとしても、避難生活に適応できないこともあります。
バリアフリーが不十分な避難場所の場合、高齢者は避難生活に不便を感じてしまうことが多いです。また、「トイレに行けない」「普段服用している薬がない」などの問題も起きます。
そのため、介護施設で働く職員の助けが欠かせません。
介護施設で地震が起きたときの対応マニュアル
介護施設で地震が起きた時の対応手順は、下記の通りです。
- 入居者と職員の安否を確認する
- 入居者を集める
- 避難経路を確保する
- エレベーター内に人が閉じ込められていないか確認する
- 備蓄品をまとめる
- 避難場所に避難してもらう
- 入居者の心身のケアをおこなう
1.入居者と職員の安否を確認する
最優先でおこなうべきなのが、入居者と職員の安否確認です。
もし怪我人がいる場合は、応急処置をしたり、医療機関の協力を要請したりする必要があります。
一人一人の安否を確認することは、非常事態が発生した場合かなり難しくなります。
電話番号が分かれば一斉送信が可能なサービスがおすすめです。
SAFEYは、リスク情報配信、位置情報、緊急連絡を一つのプラットフォームに統合したサービスです。
有事発生時における迅速な事実確認並びに対象者への緊急連絡など弾力的な危機管理運用に寄与します。
2.入居者を集める
安否確認ができたら、見守りがしやすいよう入居者を集めましょう。
入居者同士が集まることで不安が和らぎ、パニックを起こしにくくなるというメリットもあります。
3.避難経路を確保する
避難経路を確保すべく、扉や非常口、窓はできる限り開放しましょう。
ただし、近隣の火災や建物の損壊がある場合は、外から火や破損物が入ってこないよう注意する必要があります。
4.エレベーター内に人が閉じ込められていないか確認する
地震発生時には、エレベーターが停電によって停止してしまうことがあります。
もしエレベーターに人が乗っている場合は、最寄り階から素早く降りてもらいましょう。
5.備蓄品をまとめる
停電が起きると、備品を探すのが難しくなります。
そのため、電気が点灯しているうちに備品をまとめておきましょう。
6.避難場所に避難してもらう
避難情報の警戒レベルが3になったら、入居者の方には避難場所へ避難してもらいます。
避難場所は指定緊急避難所や福祉避難所、安全な場所にある知人宅などです。
特に福祉避難所は、高齢者や障がいのある方に特別な配慮をしてくれるため、必ず最寄りの福祉避難所を把握しておきましょう。
福祉避難所の場所は、各自治体のホームページで確認できます。
7.入居者の心身のケアをおこなう
地震がある程度落ち着いたら、入居者のアフターケアをおこないます。高齢者は心身共に大きなダメージを受けやすいです。
メンタル面では、地震の被害によるショックや、生活の変化によるストレスからダメージを受けます。悪化すると、不眠やうつ状態になってしまうこともあります。
対処方法としては、入居者がひとりにならないようにしたり、他社とのコミュニケーションの機会を増やしたりすることが有効です。
身体面では、地震によるケガや、心の不調が身体に及ぶこともあります。
たとえば、食欲が出なかったり、疲れがとれなかったりなどです。
このような場合は、備品の薬を服用させたり、救護所に相談してアドバイスを受けたりしましょう。
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介護施設で地震が発生した際のチェックリスト
介護施設で地震が発生した際のチェックリストは、下記の通りです。
- 火元の点検とガス元栓の閉鎖
- 出火を見つけたら火災報知器を押して直ちに可能な範囲で消火活動
- 火災発生時の消防署への連絡と避難指示(エレベータは使用中止)
- 戸が閉まらないようにものを挟み込む
- ガラスの破片や棚の転倒状況を確認して安全な避難経路を確保
- 建物の崩落などの危険を周囲に知らせる
- 負傷者の有無の確認
- 負傷者の応急手当
- 電源確保
- 負傷者を附近の病院等へ移送
- 施設被害の全体像の把握と周辺の被災情報の収集
- 利用者への家族等への連絡
- 漏電、ボイラーの破損など二次災害発生の原因になるものをすぐに点検し、電力会社や電気工事業者の判断を得る
- 給水、供電などのライフラインや給食等設備に支障がないか点検
- ガラスの破損、備品の転倒、タンクの水・油漏れ等を点検し、必要な清掃を行う
- 避難誘導を開始する前の点呼と総括責任者への報告
- 入居者等への避難誘導連絡と安全指導班への避難手順の指示
介護施設で地震が起きた時のためにしておくこと
介護施設で地震が起きた時のために、あらかじめ下記の4つのことをしておきましょう。
- 必需品の備蓄をしておく
- 地震を早く知り職員へ迅速に伝達できる体制を整えておく
- 定期的に避難訓練を実施する
- 災害対応マニュアルを作成しておく
1.必需品の備蓄をしておく
地震が起きた際は、食料や救急用医薬品などの調達が難しくなる恐れがあります。
そのような事態のためにも、必需品の備蓄はしておきましょう。
- 食料…飲料水、レトルト食品、乾パン、缶詰、粉ミルク、流動食、水で炊けるご飯、インスタント食品、調味料など
- 救急用医薬品…三角巾、ガーゼ、包帯、眼帯、綿棒、絆創膏、ウェットティッシュ、石鹸、はさみ、ピンセット、紙テープ、小型ナイフ、ビニール袋、体温計、衛生用手袋、消毒液、鎮痛剤、目薬など
- その他備品…毛布、女性用品、下着、紙おむつ、タオル、マスク、ポリ袋、筆記具、工具、小型洗浄水装置、生活用水、簡易トイレ、消火器、代替熱源、蓄電機、電池、ラジオ、小型テレビ、メガホン、車椅子、懐中電灯、マッチ、ロウソク、担架、ヘルメットなど
備品はなるべく早く取り出せるよう、できる限り玄関に近い所に保管しましょう。
特に食料や救急用医薬品はすぐに必要になる可能性が高いため、取り出しやすい位置に保管しておくと良いです。
また、利用者の送迎車にもある程度の備品を保管しておきましょう。
2.地震を早く知り職員へ迅速に伝達できる体制を整えておく
地震が起きたら、いち早く気づくことが重要です。
そのためには、常に緊急地震速報を受け取れるようにしておきましょう。
また、他の職員に地震のことを迅速に伝達するための体制を整えることも必要です。
3.定期的に避難訓練を実施する
避難訓練は軽視せず、定期的に実施しましょう。
普段からできていないことは、緊急事態時にできるはずがありません。
避難訓練の際には、実際に利用することになる避難場所や避難経路の確認もしておきましょう。
可能であれば、実際にチェックリストで示した内容を一部でも実践するなど、本番に近い状況で避難訓練をおこなうと良いです。
4.災害対応マニュアルを作成しておく
災害対応マニュアルを用意しておくことで、地震発生時に何をすべきかが明確になります。
特に地震発生時は冷静さを欠いてしまう可能性があるため、行動指針となるマニュアルがあると安心です。
災害対応マニュアルに記載した内容は、避難訓練時に実施し、有事の際に再現できるようにしておきましょう。
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まとめ
地震の発生自体は防げません。
しかし、普段から準備をしておいたり、地震発生時に適切な行動を取ったりすることで守れる命はあります。
多くの被害者を生み出してしまった過去を繰り返してしまうことのないよう、利用者の命を預かる介護事業従事者は、不断の努力をしなければなりません。