企業が社員を募集する場合、求人広告などを利用するのが一般的です。
現在では、求人サイトなどもあるため、従来の雑誌求人に比べて価格が安く手軽に利用できるようになりました。
しかし、求人広告を利用しても自社にマッチした人材を見つけられないという悩みを抱える企業は非常に多いです。
また、多数の応募から適切な人材を探す必要があるため、採用担当者の負担も増大します。
そこで、現在は「リファラル採用」が非常に注目を集めています。
実際に、どのような採用方法なのか気になる方もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事ではリファラル採用の基本的な意味や企業にとっての
メリット・デメリットなどについて解説しますので、興味のある方はぜひ参考にしてください。
目次
リファラル採用とは?意味をわかりやすく解説
『リファラル採用』とは、自社に所属する社員から友人や知人を紹介してもらう採用手法のことです。
リファラルとは英語でreferralのことで、求職者の推薦・紹介を意味します。
例えば、社内で人員が不足しているときに信頼がある社員に大学時代の友人を紹介してもらうというのがこの手法です。
現在は、さまざまな企業が人手不足になっており、人手が足りないことで悩みを抱える企業は多くなっています。
求人広告などで広く募集をかけることもできますが、多額の費用を支払ってもスムーズに適任の人材が見つかるとは限りません。
一方、リファラル採用は社員に直接紹介してもらうため、費用を抑えられます。
また、知り合いなので紹介してもらう人材の情報を事前に詳しく知ることが可能です。
自社が求める人材に適しているかを判断しやすいため、近年採用手法として注目を集めています。
ちなみにリファラル採用は元々、アメリカで広まった手法です。
しかし、現在は日本のベンチャー企業を中心に多くの企業が採用手法として取り入れています。
縁故採用との違いについて
昔から縁故採用は非常に有名です。
縁故採用は社員の血縁関係、親族、知人・友人を紹介してもらい採用する手法ですが、どのような点がリファラル採用と違うのでしょうか。
明確な違いは採用プロセスです。
縁故採用の場合は、採用されることを前提に面接などが行われます。
また、求人広告などによる一般公募とは異なり、“特別なプロセス”を設け、実施されることが多いでしょう。
例えば、「書類選考のみ」、「面接のみ」というように特別ルールが設けられます。
一方、リファラル採用は通常プロセスと同じように選考が実施され、合否を判断するのが一般的です。
また、内定になることが前提になっていません。
そのため、縁故採用とは意味合いが大きく異なります。
リファラル採用を取り入れて得られる企業のメリット5つ
リファラル採用を取り入れることで企業は大まかにわけて5つのメリットを獲得することができます。
メリットを知ることで、優れた手法であることを理解できるため、ぜひ参考にしてください。
費用を削減することできる
1つ目のメリットは、費用の削減です。
現在は、無料で掲載してもらえる求人広告もありますが、
クリックするたびに15円〜1,000円、応募につき5,000円〜8,000円という費用がかかります。
そのため、掲載は無料でも人材を確保するためにはある程度の予算を確保することが重要です。
また、選考投資型の求人の場合は120万円以上必要なものもあるため、企業は莫大な出費を余儀なくさせられます。
一方、リファラル採用は掲載費用や人材紹介サービス手数料が不要です。
紹介者へのボーナスなどかかる費用は限定的になるため、企業はコストを大幅に抑えることができるでしょう。
ミスマッチを防ぐことができる
2つ目のメリットは、自社に適切な人材とマッチングすることが容易な点です。
社員の友人や知人は自社の企業理念を理解しており、社員と同じ価値観を持っている可能性も高くなります。
また、採用プロセスに入る前にその人材の特徴や現在の職業などを社員から聞くことが可能です。
プロセスに入る前から適任な人材かどうかを判断することができるため、ミスマッチを防ぎやすくなるでしょう。
定着率の向上を期待できる
3つ目のメリットは、定着率が高いという点です。
社員の知人や友人になるため、まったく企業と関係のない人材が入ってくるときよりも雰囲気に溶け込みやすくなります。
「○○さんの紹介」というだけで社員は安心感を抱いてくれる可能性が高く、積極的な会話も期待することができるでしょう。
「社内に馴染めずに退職してしまう」、「コミュニケーション不足によるモチベーションの低下」などを防ぐことができるため、採用後の定着率が高くなります。
転職の必要がない人材を雇用できる
4つ目は、転職の必要がない人材を雇用できる点です。
企業が求人広告などを利用して人材を募集する場合、基本的には現在無職だったり、転職願望があったりする人が応募します。
つまり、転職を希望する人以外と接触することは難しいです。
一方、リファラル採用は「転職願望がなく今所属する企業で黙々と働いている人」や「プロジェクトの指揮に携わり企業にとっての要人材」という人たちと出会うことができます。
元々転職を希望していないため、流動性が低い人材です。
また、企業が手放したくない優秀なビジネスパーソンを獲得できる可能性もあるため、その点は大きなメリットとなるでしょう。
社内改善に効果を期待できる
5つ目のメリットは、社内改善に一定の効果を期待できる点です。
社員の友人や知人になるため、企業とまったく関係のない人よりも周囲に意見をいいやすくなります。
長年事業を継続しているとその企業にとって当たり前の習慣が出来上がり、社内で改善点を見つけられないケースも珍しくありません。
リファラル採用によって獲得した社員は、ほかの企業でも働いた経験があり、その習慣に触れていないため、違和感を持ちやすくなります。
また、意見をいいやすいため、社内の改善点にいち早く気づき、悪い部分をブラッシュアップできる可能性があるでしょう。
ここは注意!リファラル採用による3つのデメリット
メリットが非常に多いですが、実際にデメリットもいくつか存在します。
企業がデメリットを知ることで、注意点などを把握することができるので、ぜひ参考にしてください。
内定までに時間がかかる
1つ目のデメリットは、内定までに時間がかかるという点です。
社員の知人や友人の中には、転職を希望していない人もいます。
例えば、現在所属する企業で働いている方も多いでしょう。
そのようなビジネスパーソンは、会社の中で重要な仕事を受け持っており、クライアントも多数抱えているため、簡単にすべてを手放すことはできません。
また、重要なポストであればあるほど、引き継ぎに時間がかかるため、紹介されてから短期間で獲得することが難しいケースもあるでしょう。
そのため、人材不足が深刻ですぐに補填しなければならない企業が取り入れることは厳しいかもしれません。
人間関係に配慮が必要
2つ目のデメリットは、人間関係に配慮しなければならない点です。
社員とすでに人間関係がある人材を紹介してもらうため、両者への配慮が重要になります。
例えば、紹介してもらった友人を不採用にした場合、社員・友人間の人間関係が悪くなる可能性もあるでしょう。
また、理由を細かく説明できないと企業に対して不信感を抱かれる心配があります。
そのほかにも紹介した知人・友人が採用後に退職してしまうと、紹介した側の社員がやる気を失い、道連れのような形で退職の連鎖が起きる可能性も否めません。
人間関係や人材配置に配慮し、万が一トラブルが発生したときも被害を最小限に抑える工夫が必要です。
従業員のバランスに偏りが生まれる
3つ目のデメリットは、従業員の構成バランスが悪くなることです。
知り合いや友人を紹介するため、同世代や同じスキルの人材が集まりやすくなります。
極端な例ではありますが、男性ばかりの職場になることもあるでしょう。
また、バランスに偏りが生まれることで少数派の年代や性別が何かの決定をする際、不利になる可能性もあります。
少数派の社員にとって居心地の悪い空間になってしまうこともあるため、注意するべき点のひとつになるでしょう。
いくらかかる?リファラル採用によって発生する費用
リファラル採用は、求人掲載費用がかからず、人材エージェントの手数料も不要なため、コスト面で魅力を感じる方も少なくないでしょう。
実際に、社員から紹介してもらうため、企業は無料で優秀な人材を確保することも可能です。
しかし、企業の中には紹介を促進させるため、ある程度の費用を捻出して効率化を図っているところがあります。
これからリファラル採用に取り組み企業の中には、どのようなことに費用が発生するのか把握しておきたいという方もいるのではないでしょうか。
リファラル採用に発生する費用は下記の3点です。
- 紹介者ボーナス
- 採用活動費
- 外部サービスの利用料金
それぞれのかかる費用について詳しく解説します。
紹介者ボーナス
1つ目の費用は、紹介者ボーナスです。
社員から積極的な紹介を得るために、企業の中には紹介報酬制度を設けています。
紹介報酬制度とは、友人や知人が内定になったとき、紹介してくれた社員に一定のボーナスを支払う制度です。
紹介料は法律で決められておらず、具体的な金額は企業の判断に委ねられています。
すでに導入している会社では、インセンティブとして数万円〜数十万円を支払っているところが多いです。
紹介報酬制度がない場合、積極的な紹介を得られないケースも珍しくありません。
例えば、友人から転職の相談を受けているのに、見返りがないことで自社を紹介しないということもあるでしょう。
実際に紹介する側にも早期退職など、友人や会社に迷惑をかけるリスクがあります。
人間関係を崩したくないという方の中には無理をしないほうが無難と考える方も少なくありません。
紹介報酬制度を創設すれば、ボーナスがあるのでそのようなリスクを覚悟で紹介してくれる方が増えます。
そのため、リファラル採用を積極的に行いたい企業にとって必要な制度といえるでしょう。
採用活動費
かかる費用として採用活動費が挙げられます。
リファラル採用を積極的に行うためには、紹介ボーナスで十分であると考える方もいるでしょう。
しかし、企業の魅力を知ってもらうために、イベントを開催するほうがさらに採用活動を促進させられる可能性があります。
また、外食費や交通費などを企業が負担する仕組みがあれば、紹介者側が行動を取りやすくなるためさらなる加速が期待できるでしょう。
採用活動費の予算額は企業の判断に委ねられます。
どのぐらいリファラル採用を積極的に取り組みたいのかによって予算を考えるのもいいかもしれません。
外部サービス利用料金
外部サービス利用料金も必要な費用のひとつです。
外部サービス利用料金とは、リファラル採用を効率化するために導入するリファラル採用プラットフォームサービスに必要な料金です。
実際に利用することで、人事管理機能や告知機能を使用できるため、人事の負担を大幅に減らすことができます。
また、リクルーターエンゲージ機能により社員の自発的な紹介を促すことも可能です。
多くのサービスは、要見積もりとなっているため、具体的な料金を知ることはできません。
また、種類も複数あるので、導入を検討している方はそれぞれのサービスで見積もりを取り、自社に合ったものを選択するようにしてください。
リファラル採用を成功させる5つのポイント
リファラル採用を成功させるポイントは5つあります。
ポイントを知ることで失敗のリスクを大幅に減らすことができるので、ぜひご覧ください。
採用制度の仕組みを作る
採用制度の仕組みを作り「紹介しやすい・されやすい」プロセスを構築します。
例えば、募集要項や応募方法などを明確にして共有することです。
募集要項がわからない場合、社員は具体的にどのような人材を推薦すればいいのかわかりません。
また、企業が求める人材が効率的に紹介されず、採用活動が非効率化します。
そのため、まずは募集要項を明確にして、企業がどのような人物を採用したいのかを社内で共有する必要があるでしょう。
募集要項と同様に、応募方法がわからない場合、友人や知人にどこから応募すればいいのか伝えることが難しくなります。
応募がスムーズできないことで機会損失が多くなることが予想されるため、しっかりと構築してからリファラル採用を導入するのがおすすめです。
積極的な推進を促進できる仕組みを構築する
紹介を加速させる環境を構築することも重要なポイントとして挙げられるでしょう。
前述でご紹介した通り、紹介報酬制度を設けることもそのひとつに含まれます。
また、外食費や交通費を企業が負担することで、社員による採用活動を積極的に進められるようになるでしょう。
このような仕組みを構築せずにリファラル採用を導入すると社員から紹介を得られないという事態に陥ります。
失敗する原因にもなるため、あらかじめ予算を確保して積極的に活動できる環境を構築することが大切です。
紹介ハードルを下げる
紹介のハードルを下げることもポイントのひとつとして挙げられます。
紹介ハードルが非常に高く設定されている場合、当然社員からたくさん紹介を受けることは難しくなるでしょう。
なぜなら、身近な友人や知人の中にそのハードルを超えられる人材が限られてしまうからです。
ハードルを下げることで、気軽に紹介できる雰囲気を作ることができます。
これにより、企業は多くの人材と直接接触して自社に合った人材を選ぶことができるのでおすすめです。
リファラル採用プラットフォームサービスの導入
リファラル採用プラットフォームサービスを導入することもポイントになります。
実際にシステムを導入することで活動状況を可視化することが可能です。
また、社員が楽に紹介できる環境を構築することができます。
これにより、リファラル採用に必要な仕組みや環境作りをスムーズに行うことができるでしょう。
失敗のリスクを大幅に減らすことができるため、実際に企業の中には導入しているところも多いです。
複数の採用経路を取り入れる
企業の中には、リファラル採用に魅力を感じてそのほかの採用経路をクローズしてしまう方もいるかもしれません。
しかし、採用経路によってメリット・デメリットがあるため、リファラル採用に一本化することは好ましいとはいえないでしょう。
また、リファラル採用が社内に定着するまでには一定の時間がかかります。
ある程度の時間が必要になるため、それ以外の採用経路を閉ざしてしまうとその期間まったく新しい人材が入ってこないという事態に陥るかもしれません。
そのため、複数の採用経路と平行しながらリファラル採用を導入するのがおすすめです。
これにより、広い窓口を設置しつつ、優秀な人材を獲得できる道も確保することができるので、企業にとってメリットがあるといえるでしょう。
リファラル採用の具体的な導入手順とは?
これからリファラル採用を取り入れる方の中には、導入方法について把握しておきたい方も少なくないでしょう。
手順に沿って詳しく解説しますので、導入の際の参考にしてください。
①制度設計を実施
はじめに制度設計を実施します。
成功するためのポイントでもご紹介した通り、下記のような項目を細かく決めるのが重要です。
項目 | 設定の注意点 |
募集要項 | 企業が求める人材に合わせて随時変更を加える |
採用基準 | できるだけわかりやすく設定し、社員や紹介される知人・友人に混乱を抱かせないようする |
報酬支払額 | 社員報酬の明確化(給料やボーナス、福利厚生、支払い条件、職種、雇用形態) |
紹介報酬料 | 紹介する側の報酬を決める |
採用活動費 | 外食費や交通費など、企業負担の有無や負担の割合を明確にする |
問い合わせ先 | 人事に問い合わせができるようにする |
制度設計を決めることは、友人・知人を紹介する社員のモチベーションにもつながります。
また、応募しやすい環境を作ることにもなるため、非常に重要です。
募集要項は、応募するかどうかを決める判断基準になるため、できるだけ細かく明記するようにしましょう。
採用基準も同様に、紹介するか否かを判断する指標にもなります。
そのため、適切に詳細を記載するのが好ましいでしょう。
②システムを導入する
次に、システムを導入します。
リファラル採用プラットフォームサービスを製品ごとに比較し、自社に合うものを選択しましょう。
それぞれの製品で料金などが異なります。
また、高額のサービスもあるため、自社が捻出できる予算をあらかじめ決めておくことも重要です。
③プロジェクトを発足させよう
小規模からリファラル採用を実施していきたいという企業はプロジェクトを発足させると効果的です。
はじめから社員全員にリファラル採用制度を利用してもらうことは難しいケースも珍しくありません。
例えば、導入したばかりなので事例がなく、募集要項に当てはあるが躊躇ってしまう社員も少なくないでしょう。
そのため、まずは小規模からはじめて実績づくりをしていきます。
プロジェクトメンバーは5名程度で構成するのがおすすめです。
実績が積み上がってきたら小規模のチームを新たに発足させて競わせる形でリファラル採用を推進していくのが成長の近道になるでしょう。
④社内告知を実施する
プロジェクトの発足によりある程度の実績が積み上がったら、次は社内告知を実施して社内全体にリファラル採用を取り入れていきます。
チラシを活用したり、社内SNSで情報を共有したりして社内にリファラル採用の存在を知ってもらい、紹介者にどのようなメリットがあるのかを把握してもらいましょう。
プロジェクトを発足する場合はメンバーが限られます。
また、リファラル採用を広める活動をしなければならないという責任も強くなるため、あえてアナウンスする必要はありませんでした。
しかし、社内全体に広めるときは、コア業務とは別に働きかけを行わなければならないため、定着しづらいです。
そのため、積極的にリファラル採用の存在を知ってもらう活動が重要になるでしょう。
⑤社内全体に展開する
告知のあとは、実際に社内全体へリファラル採用を展開します。
紹介状況などを定期的に把握して、あまり積極的に人材が推薦されない場合は、制度設計を見直したり、アナウンスの機会を増やしたりする工夫が大切です。
まとめ
今回は、リファラル採用の基本概要や取り入れることによって企業が得られるメリットについて解説しました。
リファラル採用はコスト削減や転職希望者以外の人材獲得など、さまざまなメリットを獲得することができます。
しかし、闇雲に導入しても失敗する可能性もあるため、プロジェクトの発足など、できるだけ失敗のリスクを減らしながら導入を進めていくのがコツです。