施設運営者にとって、大規模災害への備えは不可欠です。特に介護施設では、職員だけでなく利用者の安全も守る必要があり、大きな責任が課せられているのです。
本記事では、介護施設の防災で平常時から備えるために知っておくべきことや訓練について、緊急事態発生時に求められる対応をお伝えします。
また、災害への備えに関連して、介護施設での義務化が決まったBCPについても解説します。
介護施設の防災を強化したい方や、災害への不安を抱えている施設運営者は、ぜひ参考にしてください。
目次
介護施設の防災で平常時から備えること
防災は来たるべき事態に備え、平常時から入念に準備しておくことが重要です。
本項で紹介する基本的な取り組みは、以下のとおりです。
- 防災マニュアルを作成しておく
- 正しい情報を得て、災害に備える
- 防災グッズ・備蓄品を準備しておく
- 定期的な防災訓練・教育の実施
防災マニュアルを作成しておく
避難経路や緊急時に点検すべきポイント・利用者への対応・安否確認の方法など、緊急事態を想定して定めておきます。
避難経路に関しては、土砂崩れや道路の損壊も起こりうるので、1つのルートだけでなく、複数のルートを設定しておくことが重要です。
また、医療機器を日常的に使っている利用者がいる場合は、誤作動の有無やバッテリー残量など、確認項目に不足がないよう入念に記載しておきましょう。
厚生労働省のホームページには各災害に応じて作成できる防災マニュアルのひな形が、ケアマネジメントオンラインには、基本的なものですが介護施設向けのひな形が公開されています。
各自治体も地域に合わせたひな形を作っている場合があるので、作成の際には参考にしてください。
正しい情報を得て、災害に備える
地域が抱える災害リスクや災害による被害をできるだけ抑える方法など、正しい情報を知っておきましょう。
内閣府の「防災情報のページ」には、各自治体の防災に関するホームページが一覧になっています。
ハザードマップや避難所の情報もまとめられているので、ぜひご活用ください。
防災グッズ・備蓄品を準備しておく
防災グッズ・備蓄品には、以下のものがあれば便利です。
- 事前対策として導入しておきたいもの…耐震マット、地震検知器、窓ガラス防災用フィルム、家具転倒防止ポール
- 避難時に役立つもの…懐中電灯、レインコート、手袋・軍手、ヘルメット、長靴・歩きやすい靴、二つ折り担架、折りたたみ式車椅子
- 避難後に役立つもの…水・食料品、トイレットペーパー・ティッシュペーパー、簡易ベッド、携帯用トイレ、救急箱、防災タオル、ポケットラジオ
- 閉じ込められた際に役立つもの…口を抑えるためのハンカチ、居場所を知らせるための笛、非常食(飴やチョコレートなど)
災害時には停電する恐れがあるため、防災グッズとして蓄電池を準備しておくのも便利です。
蓄電池は商品によって容量が異なり、小型のものであればスマートフォンやポケットラジオの充電、大容量なら炊き出しや冷暖房まで、用途に合わせて幅広く活用できます。
また、豪雨や豪雪により、施設は無事でも停電が長く続く場合もあります。事業用の大容量蓄電池なら、停電が続いても施設の運営が続けられるのでおすすめです。
定期的な防災訓練・教育の実施
マニュアルを作成して事前の計画が十分に立てられていても、職員に浸透していなければ意味がありません。
職員に災害時の対応を把握させ、危機意識を養うには、定期的な防災訓練・研修による教育が不可欠です。
また、災害発生時を想定した訓練により、防災マニュアル自体の改善すべき箇所が見えてきます。
避難ルートや設定している初動対応に無理がないかなど、定期的なメンテナンスにも役立ちます。
介護施設で災害発生後に求められる対応
介護施設で災害が発生した際には、以下の対応が必要です。
- 安否確認と救護活動
- 情報の収集・共有
- 避難の実施
- 施設の復旧
利用者と職員の安全を守るためには、いずれも重要な行動です。職員それぞれが緊急時に適切に動けるよう、入念に確認しておきましょう。
安否確認と救護活動
職員や利用者が無事であることが第一です。
利用者の状態に変わりがないことの確認と、メンタルケアも行いましょう。
エレベーターがある施設であれば、エレベーター内に誰かが閉じ込められていないか確認しなければなりません。
救護・救命が必要な場合は、負傷者の応急手当も必要です。緊急時に備え、日頃から訓練しておきましょう。
また、出勤していない従業員に対しても、安否確認できる体制を整えておくことも重要です。
情報の収集・共有
災害発生直後は、正しい情報収集に努めましょう。
特に利用者を導く立場である職員が、誤った情報に踊らされてはいけません。
自治体の防災情報ホームページやテレビ・ラジオなどで、地域の情報が得られます。
また、河川の近くの施設では、国土交通省の川の防災情報というサイトが便利です。
近所の河川を登録しておけば、現在の水位がわかるようになっています。
避難の実施
情報収集や施設内の状況に応じて、避難の必要性を判断します。
避難勧告のない自主避難の場合は、避難所が利用できることの確認が必要です。
また、時間的に余裕がある場合、二次被害の防止措置や施錠も忘れずに行いましょう。
避難時においては利用者だけでなく職員に対しても、健康状態や精神状態への配慮が必要です。
家族の安否や自宅の被災状況を勘案し、無理のない勤務シフトを組みましょう。
施設の復旧
災害状況が落ち着けば、後片付けや施設の復旧作業に移ります。
がれきの撤去や危険箇所の確認、必要があれば消毒などの安全措置も行います。
施設に被害が生じた場合、被害箇所を写真におさめ、行政機関や保険会社に施設修復を相談しましょう。
介護施設では防災対策のほかにBCP対策が義務化
災害への備えとしては、防災対策だけでなくBCP対策も不可欠です。特に、介護施設ではBCPの策定が義務化されました。
BCPについても確認しておきましょう。
BCPとは
防災は、未然に災害に備え、被害を軽減させることです。
一方、BCPは不測の事態が発生した際にも、事業を継続することに重きを置きます。
また、防災の対象は自然災害だけでなく、火事や事故などの人的災害も含みます。
BCPはさらに範囲が広く、不祥事による訴訟や感染症の流行など、事業を中断する恐れのあるあらゆるリスクを含むのです。
介護施設におけるBCP策定の義務化について
介護施設では他業種に先駆けて、2024年からBCPの策定が義務化されました。
背景には新型コロナウイルスの影響が大きく、高齢者や持病がある場合に重症化リスクが高いこと、施設内でのクラスターの発生リスクがあることなどが挙げられます。
介護施設における事業中断は、利用者が日常生活を送れなくなるリスクがあります。
不測の事態に利用者・職員が困らないためにも、BCPを早急に策定しましょう。
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まとめ
介護施設における防災は、利用者の生命の安全をも左右するので、責任重大です。
災害はいつか必ず起こるもの、という意識を日頃から職員全員がもつことが求められます。
また、BCPをまだ策定していない場合は、早急に対応すべきです。
BCP作成に不安がある方は、専門家に相談するのもひとつです。