iPhoneを使用しているとアプリからトラッキングの許可を求められることがあります。
トラッキングはユーザーを追跡・分析するための機能ですが、具体的なイメージを持つことができない人も少なくありません。
この記事では、トラッキングとはなにかについて説明し、やり方や技術についてもご紹介します。
また、iPhoneを使用したトラッキング設定の確認方法や変更の仕方についても解説しますので、興味のある方はぜひ参考にしてください。
目次
トラッキングとは?
トラッキングとは、英語表記で“Tracking”と書き、日本語に翻訳すると『追跡すること』を意味します。
業界によってトラッキングの意味合いが少し異なるため、下記の表を参考にして違いを明確にしましょう。
業界 | トラッキングの意味 |
マーケティング業界 | ユーザーを追跡し趣味嗜好を分析。そのデータをもとに効率的に広告を配信することを意味します。 |
IT業界 | システムの動きやデータの動向をログとして収集・監視することを指します。 |
物流業界 | 配送状況の追跡を意味します。 |
この記事で解説するトラッキングは主にマーケティング業界で使われるものです。
特定のユーザーの行動を収集・分析してその人の趣味嗜好を把握し、適切な広告を表示するために使われます。
iPhoneでトラッキングを許可した場合、アプリ間及びサイトでこれらの情報を共有することができるため、常に興味のある広告が表示されるようになるのです。
ユーザー側は、興味のないサービスや商品を紹介されることが少ないため、広告に対して不快感を抱きづらくなります。
また、配信者側は常にユーザーごとに合わせて興味のある広告を配信できるため、マーケティング効率を向上させられる点がメリットです。
トラッキングされる情報は下記の3点になります。
- Webの閲覧履歴
- 位置情報
- アプリ内検索履歴
そのほかの情報に関しても情報収集される可能性があるため、アプリによって許可する・しないをしっかりとわけて行う必要があるでしょう。
トラッキングに使われる3つのツール
トラッキングに使われるツールは、大まかにわけて2つあります。
それは、Cookieとブラウザフィンガープリントです。
また、Cookieはファーストパーティとサードパーティにわけられます。
ファーストパーティCookie
Webサイトにログインするとき2回目以降IDやパスワードの入力が自動で省略されます。
これはファーストパーティCookieによるものです。
ファーストパーティCookieは、閲覧したWebサイトのドメインが発行するCookieになります。
取得する情報は下記の通りです。
- 訪問したページ
- ユーザーの利用環境
- ネットワークを特定するIPアドレス
ユーザーは、ログイン情報など入力作業を省略できるという点が魅力になります。
また、Webサイト等を提供する側は、ユーザーの訪問情報を得られることがメリットです。
サードパーティCookie
サードパーティCookieとは、訪問したWebサイトとは異なるドメインから発行されるCookieのことです。
例えば、訪問したWebサイトに広告が表示されていたとします。
サードパーティCookieの場合、この広告を配信しているサーバーからCookieが発行されるのです。
そのため、サードパーティCookieは複数のWebサイトでトラッキングが可能になります。
しかし、プライバシーの観点から2022年までにGoogleはサードパーティCookieの廃止を発表しています。
ブラウザフィンガープリント
ブラウザフィンガープリントは、その名の通りブラウザの指紋を意味します。
簡単に言えば、ブラウザがユーザーの情報を収集し、個人を特定する方法です。
フロントエンド開発に用いられるプログラミング言語には、JavaScriptがあります。
その言語を使用すれば、ユーザーが使用するOSやブラウザ名など、さまざまな情報を取得することが可能です。
その情報を取得し、ハッシュ値を取ることができるようにしたのがブラウザフィンガープリントになります。
スマートフォンで使用されるトラッキング技術とは?
スマホで用いられるトラッキング技術は、下記の3点です。
- 広告識別子
- Sensor ID
- アプリ
それぞれの技術について解説します。
広告識別子
広告識別子とは、広告IDともいわれており、端末1台に対して発行されるIDのことです。
広告識別子はアプリ広告で利用することができます。
ユーザーの趣味嗜好を収集し、そのデータをインストールしたアプリに共有することが可能です。
もちろん、広告配信以外の目的で利用することは禁止されます。
Sensor ID
Sensor IDは、iPhoneやAndroidに搭載されているセンサーから情報を収集し分析するトラッキング方法です。
ケンブリッジ大学の研究チームによって発表されました。
下記のようにOS別で搭載されているセンサーは異なります。
モバイルOS | 搭載センサー |
iPhone | ・ジャイロスコープ ・磁力センサー |
Android | ・ジャイロスコープ ・磁力センサー ・加速度計 |
スマホで使用されているトラッキング技術の中でもっとも最新です。
これにより、センサーの仕組みを細かく分析できるというメリットがあります。
また、この技術の活用によって消費者行動データの高度な分析ができるようになりました。
アプリ
アプリをインストールすると位置情報やカメラ、ストレージなどのアクセス許可を求められる場合があります。
ユーザーが権限に許可を与えるとアプリはこれらの情報を収集して追跡することが可能です。
トラッキングの計測方法について解説!
トラッキングを計測する方法は下記の2点です。
- ダイレクト計測
- リダイレクト計測
それぞれどのような仕組みで計測されるのか解説します。
ダイレクト計測
ダイレクト計測は、ページの中に計測タグを設置してタグを読み込んだときにカウントする方法です。
サーバーを経由しないため、バックエンド側に不具合が発生してもカウントを継続することができます。
一方、Webページの中に計測タグを組み込むため、ページが多い場合、設置に手間がかかる点がデメリットです。
また、計測タグの反応〜クリックするタイミングの間にはタイムラグが発生します。
リダイレクト計測
リダイレクト計測は、リダイレクトサーバーを経由してカウントする方法です。
特定のページに遷移する前に、クリックとみなし計測します。
Webページを読み込むとき、必ずリダイレクトするため、計測の精度が高いです。
また、リダイレクトする際にクッキーの付与が可能なため、端末によるクッキー付与制限を回避できます。
一方、計測にはサーバーを介すため、ダウンしたときに計測も中断してしまうことがデメリットです。
また、リダイレクト計測でトラッキングするためには、専用のサーバーで管理する必要があります。
複数のサーバーを運用しなければならないため、費用負担が大きくなりがちです。
トラッキングを許可するメリット・デメリットとは?
トラッキングを許可することで、ユーザーはさまざまなメリットを獲得することができます。
一方、デメリットも存在するため、知っておくと便利です。
メリットは興味のない広告が表示されないこと
メリットは、興味のない広告が表示されないことです。
例えば、男性が使用しているスマホであるにも関わらず、レディースファッションの広告が表示されると興味がないので不快感を感じることがあります。
また、広告配信側においても成約効率が悪くなるため、両者にとってデメリットです。
トラッキングを許可することで、過去の利用履歴などの情報からユーザーが興味のある広告を表示させることができます。
そのため、不愉快に感じることが少なく、ユーザービリティの向上にもつながるため、トラッキングを許可するユーザーも多いです。
デメリットは趣味嗜好が周囲に気づかれる
トラッキングを許可するデメリットは、自分の趣味嗜好を周囲に気づかれてしまうことです。
トラッキングは、ユーザーの情報を収集し、それをもとに興味のある広告を表示させる機能になります。
例えば、ネットショッピングアプリを使用して検索した商品や購入したことがあるものと似た商品がほかのアプリの広告に表示されることが多くなるのです。
自身のスマホを第三者が使用するとどのような商品やサービスに興味があるのか知られてしまう恐れがあるため、プライバシー保護の観点から気になる方も存在するでしょう。
また、位置情報などの重要なデータも提供することになります。
トラッキングから得られる情報を広告配信目的以外で使用することは禁止されていますが、不安に感じる方も少なくないでしょう。
セキュリティ上、問題あり?プライバシーを守るために必要なこと
トラッキングを許可すると、アプリやWebサイトで検索している情報を提供するだけでなく、位置情報などの重要なデータも把握されてしまいます。
しかし、トラッキングは便利な機能であることも否めません。
実際に拒否してしまうと自分の興味のない広告が表示されて不愉快な想いをすることになります。
トラッキングを許可しながらプライバシーを守るためには、下記の3点を見直すのが重要です。
- トラッキングを許可したアプリ
- 位置情報を許可するアプリ
- モバイルOSのバージョン
それぞれの見直すポイントについて解説します。
トラッキングを許可したアプリを見直そう
1つ目は、トラッキングを許可したアプリを見直すことです。
トラッキングを許可するとさまざまな情報を提供することになります。
それらの情報は広告配信のために利用されますが、不安を感じる方も少なくないでしょう。
そのため、トラッキングを許可するアプリは自分の中で限定するのがおすすめです。
例えば、信頼のおけるアプリのみ許可を与えるというように対策します。
許可する・しないをアプリごとにわけることで、リスクを最小限に抑えることができるので便利です。
位置情報を許可しているアプリを見直す
2つ目のポイントは、位置情報を許可しているアプリを見直すことです。
位置情報を許可するとスマホの位置を緯度経度情報等で提供することになります。
位置情報変更のたびにサーバーへ情報を送信すれば、常にスマートフォンを追跡することも可能です。
そのため、位置情報を許可するアプリはかなり限定するのが一般的になります。
特に、位置情報が必要ないアプリに許可を与えている場合は危険です。
例えば、電卓アプリや電話帳アプリなどが挙げられます。
位置情報を許可しているアプリをチェックして不要なら拒否するようにしてください。
OSのバージョンをチェックする
3つ目のポイントは、バージョンをチェックすることです。
モバイルOSは、定期的にアップデートされます。
アップデート内容はさまざまですが、セキュリティ強化等も含まれるのです。
OSのバージョンに脆弱性が見つかりバージョンアップをせずそのまま状態で使い続けているとセキュリティ上、好ましくありません。
そのため、日頃からバージョンアップ情報を確認し、更新があったときは速やかにアップデートするのがおすすめです。
過度なトラッキングを防ぐためには?
過度なトラッキングを防ぐことで、利便性を保持しながら安全性も取り入れることができます。
そのため、適度なトラッキングに抑えることでより快適に利用することが可能です。
過度なトラッキングを防ぐポイントは3つありますので、興味のある方はぜひ参考にしてください。
広告ブロックツールを利用する
1つ目のポイントは、広告ブロックツールの活用です。
広告ブロックツールの中にはトラッキングを抑制する機能があります。
例えば、広告コンテンツをブロックしたり、Cookieデータのトラッキングをブロックしたりすることが可能です。
パソコンだけでなく、スマホ用の広告ブロックツールも公開されているため、App Storeなどからダウンロードすることができます。
過度なトラッキングを抑制しながらスマホを利用できるようになるため、トラッキングを活用しつつ安全で快適にスマホを使いたい人におすすめです。
ウイルス対策ソフトの活用
2つ目のポイントは、ウイルス対策ソフトの導入です。
ウイルスからPCやスマホを守ることは、大前提になります。
トラッキング以外のトラブルを防ぐことができるので、活用するのがおすすめです。
ブラウザのプライバシー設定を見直す
3つ目のポイントは、ブラウザのプライバシー設定の見直しを挙げることができます。
iPhoneを使用している方は、プライベートブラウズをオンにすることで設定可能です。
オンにすることで、閲覧履歴が保存されなくなったり、デバイス間のWebサイトの共有もできなくなったりします。
また、検索履歴や訪問したWebページがSafariで記録されなくなるため、情報を残さずにWebサイトの閲覧が可能になります。
iPhoneを使用してトラッキングの許可を確認する手順
先程、プライバシーを保護するためにトラッキングを許可するアプリを選定することが重要であるといいました。
実際に、iPhoneを使用して自分がトラッキングを許可しているアプリを確認したい方も少なくないでしょう。
具体的な手順をキャプチャー画像付きで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
1.はじめに、ホーム画面から設定アプリを起動します。
2.設定の中からプライバシーを選択してください。
3.メニューの中からトラッキングを選択します。
4トラッキングを要求しているアプリ一覧です。トラッキングを許可しているアプリはスイッチがオン、拒否している場合はオフとなっています。
5.また、上部にある「Appからのトラッキング要求を許可」のボタンをオフにすると、すべてのアプリに対してトラッキングを拒否し、今後ダウンロードしたアプリに関しても自動的に使用不可となります。
iPhoneでトラッキングの許可を変更する方法
次に、トラッキングの許可を変更する方法について解説します。
1.先程と同様に、「設定」→「プライバシー」→「トラッキング」の順にタップします。
2.次に許可したいアプリのスイッチをオンにしてください。今回のチュートリアルではChatworkというアプリのトラッキングをオンにしました。
3.以上でChatworkに対してトラッキングの許可を与えることができました。
まとめ
今回は、トラッキングの基本概要とiPhoneで確認したり、設定を変更したりする方法について解説しました。
基本的に、トラッキングは広告配信目的で使用される機能です。
また、ユーザーが興味のある広告を表示できるというメリットがあります。
しかし、デメリットがあるということも覚えておく必要があるでしょう。
ユーザーの趣味嗜好に関するデータを収集するため、他人に自分の関心事を気づかれてしまうリスクがあります。
また、広告目的以外で使用されることはありませんが、位置情報など重要なデータを提供するのは事実です。
プライバシーが気になる方は、許可を与えるアプリを選定する、位置情報許可アプリをチェックする、アップデート情報を随時チェックするなどの対策をするのがおすすめです。