営業活動は企業にとって必要不可欠です。
新規顧客を獲得しなければ、会社は売上を伸ばすことができません。
また、既存顧客から再購入などを促し、LTVの向上を目指すことも重要です。
このような新規顧客獲得やLTVの向上は営業が大きな役目を担っており、売上に直結するので、企業経営に大きな影響を与えます。
しかし、企業の中には、非効率な営業に頭を抱えている方もいるのではないでしょうか。
例えば、見込みのない客に足を運び、交通費のコストが増したり、営業マンが過重労働になっていたりする会社も少なくないでしょう。
現在、営業活動を効率化するために、インサイドセールスの導入を進めている企業が増えています。
実際に、どのような手法なのか知りたいという方もいるのではないでしょうか。
この記事では、インサイドセールスの基本概要やメリット、特徴などをわかりやすく解説しますので、興味のある方はぜひチェックしてください。
目次
インサイドセールスとは?特徴をわかりやすく解説
『インサイドセールス』とは、営業プロセスに含まれるひとつのポジションのことで、マーケティング部門が選定した見込み顧客の中からホットリードを探し、それを営業マンに引き渡す活動をする役割のことです。
また、温度感の低い見込み顧客に対してリードナーチャリングを行い、ホットリードを育てたり、既存顧客のLTV最大化を目指したりする役目も担います。
リードナーチャリングは見込み顧客を育てることです。
また、インサイドセールスがホットリードを引き渡す営業マンのことをフィールドセールスと呼びます。
インサイドセールスはアメリカで1990年代に生まれた営業手法で、日本では2005年頃から認知されるようになりました。
そのため、新しい手法ではありません。
しかし、人手不足や買い手主導の購買行動などによって積極的に採用する企業が増えたのです。
インサイドセールスが注目を集める背景
注目を集めた背景は、下記の4つです。
- 少子高齢化社会
- 買い手主導の購買行動
- サブスクリプションモデルの増加
- 新型コロナウイルス感染症の流行
それぞれの背景について詳しく解説します。
少子高齢化社会
現在の日本は、消費高齢化社会といわれており、現役世代が高齢者に比べて少ないです。
そのため、企業の中には人手不足に陥り、少ない社員で成果を出さなければならないところが増えました。
つまり、従業員1人に対しての売上を向上させる必要があります。
インサイドセールスは見込み顧客の温度感を見極めてフィールドセールスに渡すので、成約率が高いです。
そのため、効率化を期待できるため、従業員1人に対しての売上も上がることが予想されます。
このように、少子高齢化社会という社会問題によって注目が集まったという背景もそのひとつに含まれるでしょう。
買い手主導の購買行動
買い手主導の購買行動も背景のひとつです。
従来においては、与えられた情報で商品を購入するかどうかを決めていました。
例えば、セールスマンの一方的な商品紹介、広告などが挙げられます。
しかし、現在はインターネットが普及し、自分で調べて商品を購入するかどうか決めています。
消費者が自発的に動く買い手主導の購買行動に変化したのです。
インサイドセールスは別名、内勤営業ともいわれており、電話やメールを用いて顧客にアプローチします。
広範囲に自社商品の認知度を高めることができるので、興味を持ってくれる人を掘り起こしやすいです。
サブスクリプションモデルの増加
サブスクリプションモデルとは、月額料金で商品を提供するサービス形態のことです。
現在、サブスクリプションモデルでサービスを提供する企業は非常に増えました。
実際に、音楽や動画配信サービス、自動車など幅広い分野で採用されています。
サブスクリプションモデルは短期間で契約を解除することができるため、企業は顧客をつなぎとめておくための活動が必要です。
また、上位プランへアップグレードを促し、客単価を向上させることも大切になります。
インサイドセールスは、見込み顧客だけでなく、既存顧客に対してもアプローチし続けるため、サブスクリプションモデルに最適です。
LTV最大化を目指すことができるため、積極的に導入を進める企業は非常に多くなっています。
新型コロナウイルス感染症の流行
最後の背景として挙げられるのが、新型コロナウイルス感染症拡大です。
インサイドセールスは別名、内勤営業ともいわれており、メールや電話、チャットなどを用いて顧客にアプローチします。
新型コロナウイルス感染症拡大によって対面営業がしづらい社会になりました。
緊急事態宣言が発令されたときは、企業に対して7割のテレワークが求められオフィスに出勤することも難しくなりました。
このように活動がしづらくなったので、インサイドセールスで営業活動を加速させる企業が増えたのです。
無駄に足を運ぶ必要がなく、見込み顧客に対してのみ商談を行うことができます。
ご時世に合わせた営業活動ができるようになるため、注目されるひとつのポイントになりました。
従来の営業とは何が違うの?
従来の営業方法と比較すれば、インサイドセールスに対する理解をさらに深めることができます。
従来の営業との違いは、営業プロセスのステージごとで分業が行われているかどうかです。
一般的な営業プロセスには下記のようなステージが含まれます。
- ターゲット選定
- リード獲得
- アプローチ
- アポイント獲得
- 商談
- 契約
従来の営業モデルは、上記のステージをすべて営業マンが担当していました。
一方、インサイドセールスを採用する分業型モデルにおいては、ターゲット選定・リード獲得はマーケティング部門、アプローチ・アポイントはフィールドセールス、商談・契約はセールスというようにステージごとで分業します。
従来は営業プロセス全体をフィールドセールスのみで対応していたのに対して、インサイドセールスを採用したケースでは、複数のポジションを設置して各ステージをそれぞれの専門家が対応するというイメージです。
導入することで得られる5つのメリット
実際に、導入することで得られるメリットは5つあります。
それぞれのメリットについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
数多くの見込み顧客にアプローチできる
1つ目のメリットは、アプローチできる見込み顧客数が多いという点です。
インサイドセールスが顧客にアプローチする際は、電話やメールを用います。
顧客リストなどがあれば、オフィスから短時間で顧客にアプローチすることができるので非常に便利です。
企業によっても異なりますが、200件以上というような圧倒的な数の顧客に接触できるので、大きな魅力を感じる企業は少なくないでしょう。
担当する業務範囲が狭い
2つ目のメリットは、担当する業務範囲が狭いという点です。
従来の営業方法は、ターゲット選定からクローズまで営業マンが対応していました。
そのため、ターゲット選定中に商談予約の電話がかかってくるというようなことは日常茶飯事です。
しかし、インサイドセールスを営業プロセスに採用することで、それぞれのポジションで役割を分業することができます。
インサイドセールスは、見込み顧客のアプローチとアポイント獲得、リードナーチャリングに専念できるため、そのほかの作業はマーケティング部門とフィールドセールスに任せることが可能です。
特定の業務のみに専念できるため、営業部門に大きなメリットがあります。
少人数でも成果を上げやすい
3つ目のメリットは、少人数でも成果を上げやすいという点です。
本来、インサイドセールスを採用した営業プロセスは大企業など、リソースを容易に確保することができるところに限られていました。
なぜなら、それぞれのステージで各ポジションを担当する営業マンを配置しなければならないので、大量の人員を確保する必要があるからです。
そのため、本来インサイドセールスは大人数で対応する営業スタイルでした。
しかし、IT技術の進歩でシステムを導入できるようになり、少人数の企業においてもインサイドセールスという手法を採用できるようになったのです。
つまり、中小企業はもちろんのこと、スタートアップ企業などもインサイドセールスを導入しやすく、さらに効率的に利益を出していくことができるので、大きなメリットになります。
営業マンの負担や交通費を抑えられる
4つ目のメリットは、営業マンの負担や交通費を削減できるという点です。
インサイドセールスを採用することで、見込みのない顧客に対して直接訪問する機会が減ります。
営業マンは見込み顧客だけに訪問し、商品説明やサービス紹介をするため、交通費の削減を期待することができるでしょう。
また、同時に全体の移動距離が短くなるため、営業マンの負担も大幅に抑えることができます。
営業状況を共有できる
5つ目のメリットは、営業状況を共有することができる点です。
基本的にインサイドセールスは営業支援システムなどを導入するため、情報共有や管理がしやすくなります。
誰がどのような顧客に訪問しているのかなどの情報をリアルタイムで確認することが可能です。
また、従業員間でノウハウを容易に共有することができるようになるため、属人化を防げることも大きなメリットになるでしょう。
デメリットはある!?注意点をチェック
次に、インサイドセールスのデメリットを確認していきましょう。
考えられるデメリットは、大まかにわけて3つあります。
インサイドセールスに特化したノウハウが必要
1つ目は、インサイドセールスに特化したノウハウが求められる点です。
インサイドセールスは見込み顧客からホットリードを選定して、フィールドセールスに引き渡します。
また、リードナーチャリングを行い、見込み顧客の温度感を高めることも重要な役目です。
企業の中には、このようなノウハウを営業マンが持っていないケースも珍しくありません。
例えば、訪問営業のみで対応していた企業や見込み顧客の育成をしていなかった会社などです。
このように、フィールドセールスでは得られないノウハウも含まれるため、その点は注意するようにしましょう。
コミュニケーション方法が異なる
2つ目は、フィールドセールスとコミュニケーション方法が異なるという点です。
直接対面で顧客に商品やサービスを紹介する場合、会話だけでなく、表情、身振り手振りなども相手に伝わります。
言葉以外で相手を説得させることができるので、営業を有利に行えていたという方もいるでしょう。
一方、インサイドセールスの場合はメールや電話で顧客とコミュニケーションを図ります。
言葉やコンテンツのみで相手に商品やサービスの魅力を伝えることは容易ではないでしょう。
コミュニケーション方法が変わることで営業成績に影響を与えるケースもあるので、その点は注意が必要です。
フィールドセールスとの連携が重要
3つ目のデメリットは、フィールドセールスとの連携が重要であるという点です。
インサイドセールスは温度感の高い見込み顧客をフィールドセールに紹介することが役目なので、両者の連携は非常に重要です。
インサイドセールスが顧客とやり取りしていた情報が円滑に開示されていない場合、フィールドセールは有利に商談を進めることができなくなるため、効率が悪くなります。
そのため、両者が連携しやすい体制をつくり、運用することがポイントです。
インサイドセールスの代表的な3つの手法
インサイドセールスの基本的な手法は大まかにわけて3つあります。
どのような手法で顧客に接しているのかをしっかりと把握しましょう。
セミナーなどに参加した顧客へアプローチする
1つ目の手法は、セミナーなどに参加した顧客にアプローチすることです。
実際にセミナーでは、参加者と名刺交換する機会は多くなっています。
その情報を持ち帰り、イベント終了後にアプローチを開始するのです。
しかし、すべてのセミナー参加者が自社製品に興味を持っているとは限りません。
もちろん、興味関心が高い人もいますが、付き添いや興味本位で参加したという方も少なくありません。
ニーズ段階はそれぞれの参加者で異なるため、それぞれの顧客でパーソナライズ化されたアプローチをすることが重要です。
自社サイト訪問者に対するアプローチ
2つ目の手法は、自社サイトに訪問した人に対するアプローチです。
Webサイトには自社製品に興味を持っていないユーザーもアクセスします。
例えば、自社が発信している記事から情報を収集したい人などです。
しかし、ユーザーの中には、資料請求をしてくれたり、無料で配布している教材をダウンロードしてくれたりするケースもあります。
そのようなユーザーにメールアドレスからアプローチを仕掛けるというのがインサイドセールスの手法です。
例えば、教材などのコンテンツをダウンロードしたユーザーに対しては、「知りたい情報が含まれていたか」、「ほかに求めている情報があるか」などをヒアリングして有料の教材を勧めます。
また、資料請求をした見込み顧客に対しては、ニーズをヒアリングして自社商品を利用すればどのような悩みを解決できるのかを伝えるのです。
“資料請求をする”、“コンテンツをダウンロードする”という行動は自社製品に対して興味関心がある見込み顧客と判断できるので、商談化や契約を獲得できる可能性があります。
既存顧客へのフォロー・アプローチ
3つ目の手法は、既存顧客へのフォローやアプローチです。
新規顧客獲得は、既存顧客よりも難易度が高いといわれています。
その理由として、広告効果の低下や競合の増加、インターネットの普及などが挙げられるでしょう。
そのため、既存顧客にもう一度自社製品を利用してもらうほうが圧倒的に低コストであり、獲得効率もよくなります。
そこで、インサイドセールスがサービス利用者や今まで自社製品の購入歴がある方にアプローチを行います。
例えば、新製品が登場したときは、メールや電話などでコミュニケーションを図り購入を促すのです。
既存顧客は自社製品に対して興味関心がある人なので、購入してもらえる可能性が高くなります。
また、サブスクリプションモデルを展開している企業は、既存顧客のニーズをヒアリングし、さらに上位プランにアップグレードさせることも手法のひとつです。
新規顧客を獲得するよりも効率が良く、収益が向上するためにさまざまな企業で行われているインサイドセールスの手法になります。
インサイドセールス導入する前に知っておきたい3つのポイント
インサイドセールスを導入する前に知っておきたいポイントは3つあります。
導入を検討している人が把握することで、運用失敗のリスクを下げられるので、ぜひ参考にしてください。
インサイドセールスの業務範囲を明確にする
1つ目のポイントは、インサイドセールスの業務範囲を明確にすることです。
インサイドセールスの業務範囲は法律などで定められておらず、企業が自由に決めることができます。
例えば、リード獲得に専念するケースもあれば、契約までのすべてのプロセスをインサイドセールスが担うというパターンも珍しくありません。
そのため、明確に決めておかないとインサイドセールスの業務範囲が曖昧になってしまいます。
一般的なインサイドセールスの組織におけるパターンは4つです。
- リード発掘型
- リード育成型
- 営業クローズ特化型
- フィールドセール協業型
リード発掘型や育成型は、その名通りリードの発掘や育成がメインの業務になります。
見込み顧客を発掘したり、温度感が高めるようにアプローチしたりするのが仕事内容です。
営業クローズ特化型は、ターゲット選定から契約までのすべてのフェーズをインサイドセールスが担います。
また、フィールドセール協業型は、両者で業務を分業して営業プロセスを構築するパターンです。
それぞれの企業でインサイドセールスを導入する目的が異なります。
そのため、ニーズに合わせて適切なパターンを選択するようにしましょう。
連携しやすい体制をつくる
2つ目のポイントは、迅速に連携できる体制を構築することです。
特に、分業型を採用する企業は、マーケティング部門とインサイドセールス、フィールドセールそれぞれで担う業務が異なります。
また、それぞれのポジションがうまく連携していないと営業プロセスを円滑に進めることは難しいです。
例えば、インサイドセールスがフィールドセールに見込み顧客情報を正しく伝えていない場合、商談化できたとしても契約を獲得できない可能性は高くなります。
そのため、各ポジションが容易にコミュニケーションを図れるような連携しやすい体制をつくることが求められるでしょう。
システムを導入する
3つ目のポイントは、システムを導入することです。
それぞれのポジションが連携を図るためには、システムの導入は必要不可欠になります。
なぜなら、顧客情報を伝えるたびにメールや電話を使用したり、直接フィールドセールのもとまで足を運び説明したりすることはとても非効率だからです。
そのため、インサイドセールスを導入する企業はシステムを使い、効率化を図るのが望ましいでしょう。
実際に導入するシステムとして、下記の3点を挙げることができます。
- CRM(顧客管理システム)
- SFA(営業支援ツール)
- MA(マーケティングオートメーションシステム)
このようなシステムを導入すれば、情報をリアルタイムで共有することができます。
また、営業プロセス内における業務でさまざまなサポート支援を受けられるので、成功するための鍵といえるでしょう。
まとめ
今回は、インサイドセールスの基本概要やメリット・デメリット、手法や導入する前に知っておきたいポイントについて解説しました。
インサイドセールスには、営業マンの負担軽減や交通費の削減、広範囲に営業できるなど、さまざまなメリットがあります。
また、少人数で成果を出しやすいため、大企業だけでなく、中小企業やスタートアップ企業も採用しやすい点が特徴です。
しかし、インサイドセールスを導入すれば、これらのメリットをすべての企業が獲得できるとは限りません。
システムの導入や業務範囲を明確にするなど、成功に必要なポイントをしっかりと把握した上で営業プロセスを変更する必要があります。
インサイドセールスを営業プロセスに採用するときに導入するシステムは、CRMやSFA、MAツールなどが有名です。
また、今まで使ったことがない企業は、この機会に導入をご検討ください。