事業者にとって防災は、事業を継続するうえでは欠かせない取り組みのひとつです。
企業における防災は人命の安全を守るだけでなく、事業の継続・早期復旧も見越したものでなければなりません。
本記事では防災の基本的な考え方や事業継続のための企業防災、備えておくべき防災グッズについて解説します。
防災を強化しようと考えている事業者は、ぜひ参考にしてください。
目次
防災とは災害を防ぐこと
防災とは文字どおり、災害を防ぐことを指します。防災を知るには、まずはどのような災害があるのか理解を深めましょう。
防ぐべき災害には自然災害と人的災害がある
災害と聞くと地震や台風、洪水、豪雪などが想起されますが、自然災害だけでなく人的な災害も多く存在します。
人的災害には、以下のものが挙げられます。
- 工場や建物の火災・爆発
- 交通事故・業務上の事故
- 有害物質の流出による環境汚染
- テロ
放火による火災や突発的な交通事故などは、外的要因によって突然起こるものもあり、100%避けるのは難しいでしょう。
しかし、環境汚染や業務上の事故などは、管理を徹底することでリスクや被害は減らせます。
さまざまなリスクを想定して、災害に備える必要があります。
減災との違い
防災はもともと災害の発生や被害を、できるだけゼロに近づけることを目的とする取り組みです。
対して防災に似た言葉である減災は、ある程度の被害を受けることを前提としたうえで、可能な限り被害を抑える取り組みを指します。
1995年の阪神淡路大震災以降、防災で完全に災害を防ぐことは難しいと判断されるようになりました。
現在では「災害による被害は生じるもの」という考えを前提として、被災しても人命が失われないことを最優先し、さまざまな対策を組み合わせて災害に備えることが重要視されています。(※内閣府:防災基本計画「防災の基本方針」より)
減災という言葉があまり普及していないことも背景にありますが、現在における防災は減災の意味合いが強くなりました。
企業においても被害をゼロにすることは理想ですが、現実的な施策としては災害の発生に備え、被害の軽減を重視して臨機応変に行動することが求められます。
事業継続のためには企業防災が必要
企業においては災害が起きた際にも、事業を継続させるための取り組みが不可欠です。
企業が取り組むべき防災と、非常時にも事業を継続させるための考え方をお伝えします。
防災だけでは企業の災害への対策としては不十分
以前と比べ、災害による被害の軽減を目的とした防災を行う企業は増えました。
しかし、災害後にも事業を継続するための取り組みが十分に行われている企業は多くありません。
災害が起こった際の従業員・顧客の安全確保や物的被害の軽減、二次被害の防止などはもちろん重要ですが、事業継続のための取り組みとしてはまだまだ不十分です。
従来の防災と事業継続を目的とした防災の違い
従来の防災では災害に備えて、被害軽減策を講じることが重視されていました。
しかし事業継続への取り組みとしては、被災した後にも事業を継続、もしくは早期の復旧を目指すことが求められます。
具体的には、以下の施策が挙げられます。
- 優先的に復旧させる業務や事務所を、事前に選定しておく
- 被災後に使える資源は限られるため、有効に活用するための計画を立てる
- 停電により工場・事務所などの施設が完全に止まってしまわないように、非常用電源を確保する
従来の防災にある安全確保や被害の軽減に加え、重要業務の選定や被災した際の計画を立てておくなど、業務継続を目的とした視点で対策を立てるようにしましょう。
防災の基本概念は自助・共助・公助
防災に取り組むうえで、防災の基本概念である「自助・共助・公助」の考え方を理解しましょう。
自助 | 自分自身や家族、組織の安全を自分たちで守ること |
共助 | 地域や近隣の方と協力して、助け合うこと |
公助 | 国や自治体、行政による支援物資の提供や人命救助などの対応のこと |
企業においては、従業員が自らの安全を守ったり、組織として社内の安全を確保したりする「自助」への取り組みや、近隣の住民・他企業と助け合う「共助」の考え方が求められます。
東日本大震災では釜石市の小学生が、日頃の防災訓練の取り組みから、自らの判断で無事に避難できたことを「釜石の奇跡」として取り上げられました。
さらに避難した子どもたちは自らの命を守っただけでなく、地域の高齢者や幼児の避難を助け、避難後の生活に大きく貢献したことも知られています。
かつては公助による対応を頼りにする考え方が主でしたが、行政の対応力を上回る災害が発生する場合や、行政自体の被災により行政機能が麻痺する恐れもあります。
東日本大震災の例のように、それぞれが自助・共助の考え方を持って、防災に取り組むことが重要です。
防災として企業が取り組むべき対策とは
企業が防災として取り組むべき対策を、具体的にお伝えします。
これから防災に取り組む事業者は、参考にしてください。
災害の知識や地域の情報を得る
災害に備えるためには、まず災害の知識や地域の情報を得る必要があります。
事業所のある地域が抱えている災害リスク、災害による被害をできるだけ抑える方法などの情報を知っておきましょう。
内閣府の「防災情報のページ」には、各自治体の防災に関するホームページが一覧になっています。
ハザードマップや避難所の情報もまとめられているので、ぜひご活用ください。
また、従業員は災害発生時に事務所にいるとは限りません。
自宅や営業先など、どこにいても対応ができるよう、避難経路の確認を徹底するよう日頃から伝えておきましょう。
対策する災害・復旧する業務に優先順位をつける
災害にはそれぞれ、事業や安全に対する影響度と発生頻度があり、両者ともに高いと判断される災害から対策しましょう。
すべての災害に備えられればよいですが、リソースが限られているので現実的ではありません。
業務に関しても、優先的に復旧する業務を決めておく必要があります。
以下のような業務を優先するとよいでしょう。
- 売上を大きく左右する業務
- サービスの提供が止まった際に、最も損害が大きい事業
- 市場のシェアや会社の評価、顧客の信頼を維持するために必要な業務
また業務に優先順位をつける際には、重要業務が止まった場合に会社としてどれだけの時間なら止まっても大丈夫か、復旧までどの程度の時間がかかるか、といった時間軸での判断も必要です。
防災訓練や研修を定期的に行う
従業員各自に防災意識を持ってもらうことは企業にとって重要であり、定期的な防災訓練や研修の実施は非常に効果的です。
前述した「釜石の奇跡」でも、子どもたちの命運を分けたのは、日頃の防災教育で学んだ内容を各々が正しく実践したことにあります。
避難経路の確認や災害発生時の初動対応、安否連絡など、それぞれが自らの判断で適切な行動を取れるよう、定期的な訓練・研修を通して意識づけていきましょう。
防災グッズ・備蓄品を準備する
基本的な防災グッズは常に準備しておき、いつでも持ち出せるようにしておきましょう。
各自の判断で持ち出せるように、どこに何があるかといった情報は従業員間で共有しておくことも重要です。
防災グッズ・備蓄品には、以下のものがあれば便利です。
事前対策として導入しておきたいもの | 耐震マット、地震検知器、窓ガラス防災用フィルム、家具転倒防止ポール |
避難時に役立つもの | 懐中電灯、レインコート、手袋・軍手、ヘルメット、長靴・歩きやすい靴 |
避難後に役立つもの | 水・食料品、トイレットペーパーやティッシュペーパー、簡易ベッド、携帯用トイレ、救急箱、防災タオル、ポケットラジオ |
閉じ込められた際に役立つもの | 口を抑えるためのハンカチ、居場所を知らせるための笛、非常食(飴やチョコレートなど) |
また災害時には停電する恐れがあるため、防災グッズとして蓄電池を準備しておくと便利です。
蓄電池にはモバイルバッテリーのようなデイユースのものから、防災目的の企業向け大容量蓄電池までさまざまな製品があります。
目的に応じて準備しておくとよいでしょう。
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まとめ
企業にとっての防災は災害に備えるだけでなく、事業の継続・復旧も見据える必要があります。
正しい知識を身に付けたうえで対策を講じ、従業員にも周知徹底しましょう。
災害時における事業継続のための計画を立てるなら、BCPマニュアルを策定することも重要です。
BCPについて詳しく知りたい方は、別の記事で解説しているのでそちらもご覧ください。