感染症に備えるBCPとは?一般企業が決めておく6つの項目と初動対応

※この記事には一部PRが含まれます。

「欠勤者が増えたら、重要業務をどう継続する?」

「テレワークへ切り替える基準は?」

「取引先にはいつ、何を伝えるべき?」

感染症が流行すると、どこまで準備しておけばよいのか迷いますよね。

感染症の流行に備えるには、予防策だけでなく、人員が不足しても重要業務を続けられるBCP(事業継続計画)が必要です。

継続・縮小・停止する業務や代替要員、発動基準などを平時に決めておけば、発生時の混乱を抑えられます。

本記事では、一般企業が感染症に対応するためのBCPの目的や、計画に盛り込む6つの項目を解説します。

この記事でわかること
  • 感染症対策BCPの目的と他の計画との違い
  • 感染症対策BCPに盛り込む6つの項目
  • 発生段階に応じた初動対応
  • 訓練と見直しのポイント

自社のBCPに感染症への備えが十分盛り込まれているか、見直す際にお役立てください。

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感染症に備えるBCPとは?一般企業が策定する目的

感染症に対応するBCPとは

感染症に対応するBCPとは、感染症の流行によって従業員の欠勤や取引先からの供給停止などが起きた場合に、重要業務を継続・早期復旧するための計画です。

目的は、すべての業務を通常どおり続けることではありません。

従業員の安全を守りながら、限られた人員や設備を重要業務へ振り分け、事業への影響を抑えることにあります。

感染症では、建物や設備に直接的な被害がなくても、従業員本人の罹患や家族の看護によって人員が不足することがあります。

取引先や委託先でも同時に感染が広がれば、商品・資材の調達やサービスの提供に影響が及ぶかもしれません。

そのため、継続する業務の優先順位や必要な人員、勤務体制、BCPの発動基準などを平時に決めておく必要があります。

感染症対策マニュアルとの違い

BCPと感染症対策マニュアルは、目的が異なります。

比較項目感染症に対応するBCP感染症対策マニュアル
主な目的重要業務の継続・早期復旧職場での感染予防と拡大防止
主な内容業務の優先順位、人員配置、勤務体制、発動・復旧の判断手洗い、消毒、換気、感染者が出た場合の対応
主な対象事業と業務全体従業員や職場環境
判断することどの業務を継続・縮小・停止するか感染を広げないために何を行うか

感染症対策マニュアルだけでは、人員が不足した場合にどの業務を優先するかまでは判断できません。

一方、感染防止策がなければ、BCPを策定していても働ける従業員を確保しにくくなります。

どちらか一方を選ぶのではなく、感染症対策マニュアルとBCPを連動させることが大切です。

一般企業が参考にできる感染症対応のガイドライン

一般企業が感染症に対応するBCPを作成・見直す際は、次の公的資料を参考にできます。

「事業者・職場における新型インフルエンザ等対策ガイドライン」では、職場における感染対策だけでなく、事業継続計画の策定や実施体制、教育・訓練なども示されています。

内閣府の「事業継続ガイドライン」は感染症に特化した資料ではありませんが、重要業務の選定や事業継続戦略、訓練・見直しなど、BCP全般の考え方を確認する際に役立ちます。

ガイドラインの内容をそのまま当てはめるのではなく、自社の業種や規模、人員、取引先との関係に合わせて具体化しましょう。

感染症と自然災害でBCPはどう違う?

感染症と自然災害、BCPの違い

感染症に対応するBCPと自然災害に対応するBCPは、どちらも重要業務の継続・早期復旧を目的としています。

ただし、被害の広がり方や影響を受ける経営資源が異なるため、自然災害向けBCPの内容をそのまま適用するだけでは、感染症に十分対応できません。

主な違いは、次のとおりです。

比較項目感染症に対応するBCP自然災害に対応するBCP
被害の対象人員への影響が中心人員・建物・設備・インフラなど
影響範囲地域を越えて広がりやすい被災地域に集中しやすい
影響期間長期化・波状化することがある発生後、復旧に伴って影響が縮小していくことが多い
事業への影響欠勤者の増加、需要の変化、取引先の停止など拠点や設備の損傷、停電、通信障害、物流の停止など
主な対策代替要員、交代勤務、テレワーク、業務の縮小代替拠点、設備の復旧、備蓄、データのバックアップ

自然災害では、被害を受けた拠点や設備を復旧し代替手段を確保することが中心です。

一方、感染症では施設を使用できても従業員が出勤できず、業務を続けられない場合があります。

そのため、自然災害向けのBCPがある企業も、人員不足や感染拡大の長期化を前提に、業務の優先順位や勤務体制を見直す必要があります。

自然災害BCPとは別々に管理するのではなく、共通する方針を生かしながら感染症特有の対応を追加しましょう。

自然災害を含むBCP全体の考え方や策定の流れは、BCP対策の必要性や策定手順で詳しく解説しています。

感染症に備えたBCPに盛り込む6つの項目

感染症BCP策定に盛り込む6つの項目

感染症が発生してから対応を考えると、業務の優先順位や人員配置の判断が遅れます。

平時のうちに、次の6項目を感染症BCPへ盛り込んでおきましょう。

1.重要業務と縮小・停止する業務

まず、感染症の流行時にも継続すべき重要業務を明確にします。

顧客や社会への影響、売上、法令上の責任などを踏まえ、業務を次のように分類しましょう。

  • 優先して継続する業務
  • 状況に応じて縮小する業務
  • 一時的に停止できる業務

あわせて、重要業務を最低限維持するために必要な人員・設備・システムも整理します。

すべての業務を続けようとせず、限られた人員をどこへ振り分けるか決めておくことが大切です。

重要業務の優先順位や目標復旧時間を具体化する方法は、事業影響度分析(BIA)の記事で詳しく解説しています。

2.欠勤者を想定した人員配置と代替要員

感染症の流行時には、従業員本人の罹患だけでなく、家族の看護や学校・保育施設の休業によって欠勤者が増えることもあります。

欠勤率を一律に設定するのではなく、自社の人員構成や業務に合わせて複数の状況を想定しましょう。

  • 担当者が不在でも継続できる業務か
  • 代替できる従業員がいるか
  • 他部署から応援を出せるか
  • 特定の従業員に業務が集中していないか

代替要員を決めるだけでなく、手順書の整備や引き継ぎ、複数の従業員が業務を担当できる体制づくりも必要です。

3.発動基準と指揮命令系統

BCPをいつ発動するのか、誰が判断するのかを明確にします。

発動基準として検討するのは、社内の感染者数だけではありません。

欠勤状況や地域の流行、取引先の停止、行政からの要請なども判断材料になります。

あわせて、次の役割を決めておきましょう。

  • BCPを発動・解除する責任者
  • 業務の縮小や停止を決める担当者
  • 各部門へ指示を出す責任者
  • 責任者が不在の場合の代理者

状況に応じて判断できるよう、数値だけでなく、複数の条件を組み合わせて基準を設定します。

4.テレワーク・分散勤務と感染防止対策

出社人数を抑えながら業務を続けるため、テレワークや分散勤務へ切り替えられる業務を整理します。

事前に確認したい項目は、次のとおりです。

  • 社外から利用できるシステム
  • パソコンや通信環境の確保
  • 情報セキュリティのルール
  • 出社が必要な業務と担当者
  • 交代勤務や時差出勤の方法

感染防止対策は手洗いや消毒の方法だけでなく、勤務体制をどのように変更するかまで計画へ落とし込みましょう。

5.取引先・委託先・サプライチェーンへの対応

感染症の影響は、自社だけでなく、取引先や委託先にも及びます。

重要業務に必要な商品・資材・サービスを洗い出し、供給が止まった場合の代替手段を検討しておきましょう。

主な確認事項は、以下のとおりです。

  • 重要な仕入先・委託先と連絡先
  • 供給停止が業務へ及ぼす影響
  • 代替できる調達先や委託先
  • 納期変更やサービス停止時の連絡方法
  • 取引先から優先的に求められる業務

    特定の取引先へ依存している場合は、調達先の分散や在庫の確保も検討する必要があります。

    6.通常体制へ戻す条件と復旧手順

    感染者や欠勤者が減っただけで、すぐに通常体制へ戻せるとは限りません。

    必要な人員や取引先からの供給、停止していた業務の状況を確認し、段階的に復旧させます。

    通常体制へ戻す条件として、次の項目を定めておきましょう。

    • 出勤できる従業員数
    • 重要業務の稼働状況
    • 取引先や委託先の復旧状況
    • 滞留している業務や受注への対応
    • テレワークや交代勤務を解除する基準

      復旧の優先順位と判断者を決めておけば、感染の再拡大にも注意しながら通常体制へ移行できます。

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      【発生段階別】感染症発生時の初動対応と行動例

      感染症発生時には、感染状況や欠勤者数、業務への影響を確認しながら、対応を段階的に切り替えます。

      発生直後から収束までの判断と行動例は、次のとおりです。

      段階主な判断行動例
      感染疑い・感染者の発生直後BCPを発動するか、勤務体制を変更するか感染・欠勤状況を確認する/責任者へ報告する/従業員へ必要な情報を共有する/テレワークや分散勤務へ切り替える/取引先への影響を確認する
      欠勤者が増えた段階継続・縮小・停止する業務を見直すか重要業務へ人員を再配置する/代替要員を配置する/優先度の低い業務を縮小・停止する/取引先へ納期や提供体制を連絡する/代替の調達先や委託先へ切り替える
      感染が収束した段階通常体制へ戻せるか、段階的な復旧が必要か出勤可能な人数を確認する/停止していた業務を優先順位に沿って再開する/滞留した業務へ対応する/テレワークや交代勤務を段階的に解除する/今回の対応を記録する

      初動対応では、感染者が出たことだけを基準にするのではなく、人員や取引先の状況、重要業務への影響をまとめて判断することが重要です。

      実際の対応は感染症の種類や流行状況によって変わります。

      国や自治体が発信する情報を確認しながら、自社で定めた発動基準と指揮命令系統に沿って進めましょう。

      感染症発生時にBCPを機能させる3つのポイント

      感染症に備えたBCP

      BCPは、計画書を作成するだけでは十分ではありません。

      発生時に従業員が迷わず行動できるよう、周知・訓練・見直しを継続することが重要です。

      従業員への周知と連絡体制を整える

      従業員には、BCPの内容と自分が担う役割を事前に共有します。

      特に、次の項目を明確にしておきましょう。

      • 感染疑いや欠勤時の報告先
      • BCP発動時の指示系統
      • 出社・テレワークを判断する基準
      • 緊急時に使用する連絡手段
      • 連絡が取れない場合の対応

        連絡網を作成していても、情報が古ければ機能しません。

        担当者や連絡先を定期的に確認し、社内チャットやメールが使えない場合の代替手段も決めておく必要があります。

        欠勤者の増加を想定して訓練する

        訓練では「感染者が1人出た場合」だけでなく、複数の部署で欠勤者が増えた状況も想定します。

        たとえば、重要業務の担当者が出勤できない、取引先からの供給が止まる、テレワークへ一斉に切り替えるといったシナリオです。

        代替要員への引き継ぎや連絡、意思決定が計画どおりに進むか確認しましょう。

        訓練を通じて、実際に対応できない手順や不足している情報が明らかになります。

        計画書を読むだけで終わらせず、従業員が判断・行動する機会を設けることが大切です。

        訓練の種類やシナリオの作り方、実施後の評価方法は、BCP訓練の進め方で詳しく解説しています。

        訓練や感染症の動向に応じて見直す

        BCPは、訓練後だけでなく、社内体制や事業環境が変化したときにも見直します。

        主な見直しのタイミングは、次のとおりです。

        • 訓練で課題が見つかったとき
        • 組織や担当者が変更されたとき
        • 新しい業務や拠点が増えたとき
        • 取引先や委託先が変わったとき
        • 国や自治体の方針が更新されたとき
        • 感染症への対応を実際に行ったあと

        見直しでは、計画と実際の対応に差がなかったかを確認します。

        課題と修正内容を記録し、次の流行時に生かせる状態へ更新しましょう。

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        感染症によるBCP策定の際によくある質問

        FAQ

        感染症に対応するBCPの作成・見直しについて、一般企業が抱きやすい疑問へ回答します。

        一般企業にも感染症を想定したBCPの策定義務はありますか?

        一般企業に対して、感染症に対応するBCPの策定を一律に義務づける法律はありません。ただし、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく指定公共機関や介護事業所など、業種・事業形態によっては業務計画やBCPの策定が求められます。義務のない企業も、従業員の安全確保と重要業務の継続に備えて、感染症リスクをBCPへ反映しておくことが大切です。

        自然災害向けBCPに感染症対策を追加するだけでもよいですか?

        はい、問題ありません。感染症BCPを別の計画書として作成する必要はないためです。ただし、感染防止策を追記するだけでは不十分です。人員不足の長期化や取引先への影響を想定し、重要業務や勤務体制、発動・復旧の基準まで見直しましょう。

        一般企業向けの感染症対応BCPのひな形はありますか?

        すべての一般企業に共通する公的なひな形はありませんが、次の資料を作成の土台にできます。ひな形や様式をそのまま使わず、自社の重要業務、人員、取引先、勤務体制に合わせて具体化しましょう。

        ひな形や様式はそのまま使わず、自社向けに具体化する必要があります。作成手順とひな形の選び方は、BCP策定の記事をご覧ください。

        介護事業所や医療機関の感染症BCPとは何が違いますか?

        一般企業と介護事業所・医療機関では、継続すべき業務や適用される基準が異なります。介護事業所では感染症と自然災害に対応したBCPの策定・運用が義務づけられています。医療機関では、その機能や適用される施設基準に応じて、必要なBCP・体制整備の内容が変わります。介護・医療分野では、厚生労働省が示す業種別のガイドラインや基準を確認してください。

        感染症による人員不足を想定してBCPを見直そう

        感染症に対応するBCPでは、感染防止策だけでなく、欠勤者が増えた場合に継続・縮小・停止する業務を決めておくことが重要です。

        自然災害向けのBCPを策定している企業も、代替要員やテレワークへの切り替え、取引先への対応、通常体制へ戻す条件が定められているか確認しましょう。

        計画は作成して終わりにせず、周知・訓練・見直しを続ける必要があります。

        ミツモルでは、BCPの策定や見直しに関する無料相談を承っています。

        「感染症への備えが十分かわからない」「現在の計画が実際に機能するか不安」という方は、お気軽にご相談ください。

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