NPSは顧客のロイヤルティや売上の向上につながる重要な指標です。
しかし、「NPSって何?」「NPSをとり入れたいけど、どうしたらいいか分からない」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
実は、海外の企業では3分の1以上がNPSを活用しているといわれていて、日本でも徐々に注目されているのです。
今回はそんなNPSについてやメリット、顧客満足度との違いや成功事例についても徹底解説します。
NPSの算出方法や注意点についても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
NPSとは?
NPSとは、「ネット・プロモーター・スコア」の略です。
企業やそのサービス、商品などの顧客の愛着度を表す、「顧客ロイヤルティ」を計測する指標になります。
この顧客ロイヤルティは、特にカスタマー・エクスペリエンス戦略には重要です。
NPSは、2003年にアメリカのコンサルティング会社、ベイン・アンド・カンパニー社の
フレドリック・F・ライクヘルド氏が「ハーバード・ビジネス・レビュー」で発表したのが始まりです。
昨今では、グーグルやアップルなどの欧米の企業の3分の1が、このNPSを導入して顧客ロイヤルティを計測しています。
顧客ロイヤルティを計測していることで、サービスの改善を測り、リピーターや顧客の獲得に務めているのです。
NPSの算出方法
NPSの算出方法を解説します。
まず「あなたはこの企業・ブランド・サービスを同僚や友人にすすめる可能性はありますか」と行うのです。
そして、0~10の段階で評価してもらいます。
この質問の評価に応じて、「推奨者」「中立者」「批判者」の3者に分け、顧客を分類するのです。
- 推奨者
9と10に答えた人で、その企業のサービスを愛用し、周りの人にもすすめてくれます。
- 中立者
7・8と答えた人で、中立的な立場ですすめることもなく、悪口も言いません。
何かのきっかけで、競合のサービスに移ることもあります。
- 批判者
0~6と答えた人で、その企業のサービスや商品を買おうとすると、ネガティブな口コミをします。
この推奨者の割合から、批判者の割合を引いた数値が、NPSです。
例えば、10人のうち4人が推奨者で6人が批判者の場合、NPSは40-60=-20がNPSとなります。
NPSと顧客満足度の違い
NPSと混同されると思われるのが、顧客満足度です。
確かに、顧客満足度もカスタマー・エクスペリエンス戦略では重要視されています。
日本では、この顧客満足度が顧客のことを測る指標として使われてきました。
しかし、NPSと顧客満足度には違いがあります。顧客満足度はその名の通り、顧客がその企業やサービスに満足しているかを測る指標です。
この満足という言葉は、あいまいなものでもあります。
そして、たとえ満足したからといって、リピーターになったり、周りの人にすすめるかといったらまた別の問題です。
そのため、顧客満足度のみで業績の向上に務めるのは、困難であるといえます。そこで登場するのがNPSなのです。
満足度の定義
長年、日本ではこの顧客満足度で顧客の満足度を測り、業績の向上に努めてきました。
その顧客満足度は、その企業やサービスに満足しているかを測るものです。NPSとの違いは、世界基準がないことです。
一方でNPSは、「この企業・サービスを友人や同僚にすすめたいですか」という共通の質問をします。
そこから、顧客のロイヤルティを計測するのが特徴です。このNPSには世界的な基準があり、どんな企業でも取り入れやすいというメリットがあります。
NPSは顧客ロイヤルティが共通の定義です。
それとは違い、顧客満足度は、満足度の定義がそれぞれの企業で違いがあります。
顧客満足度は売上と連動しない
顧客満足度は、現在の満足度を評価しますが、あくまでも現時点での満足度を評価しているにすぎません。
離反者の8割が、顧客満足度でその企業やサービスを満足していると評価しています。
しかし、実際には再購入を行っていないというデータもあるのです。
このように、満足と答えていても、必ずしもリピーターになったり、ロイヤルカスタマーになるとは限りません。
いくら顧客満足度を向上させるために施策を打ったとしても、売り上げにつながらないのです。
そのため、顧客満足度は、売上に連動しないといわれています。
その点、NPSは商品やサービスなどの再購入や他者への推奨の直接的な質問での評価です。
そのため、顧客のロイヤルティとの相関性が高いといわれています。
また、NPSは、企業などの業績との相関性も高いです。
長期的な視点
顧客満足度調査は、その評価が収益にどれほど影響するか予想しにくいでしょう。
しかし、一方でNPSは、顧客がその商品やサービスに対して次の行動をとるかとらないかを確認することができます。
そのため、将来の収益にどう相関してくるかという可能性が出てくるでしょう。
NPSは、企業の収益の向上をより意識しています。
また、NPSは、友人や同僚にすすめられるということは、それだけで顧客満足度が高いという証拠です。
そのため、その商品やサービスを購入する層も増えていくと予想でき、将来性まで見据えることができます。
よって、NPSは企業の長期的な視点で、収益性を見るという点でも取り扱われているのです。
NPSを活用するメリット
これまで、NPSについてや顧客満足度との違いについて解説しました。
続いては、NPSを活用するメリットについてご紹介します。
NPSを活用するにあたってのメリットは次の通りです。
収益化の判断材料となる
NPSの主なメリットの1つは、収益化の判断材料となることです。
NPSは、将来性を考慮に入れて質問します。
そのため、その商品やサービスが収益を上げる可能性があるか予測する判断材料の1つとしてみることが可能です。
NPSの評価が高ければ、顧客がその商品やサービスを購入し続ける可能性が高いといわれています。
また、口コミなどで新規顧客を獲得できる可能性も高いと判断できるでしょう。
NPSは、企業の業績と相関性があるといわれています。
NPSのスコアを上げることは、顧客のロイヤルティを高めることにも役立ちます。
そのうえ、企業の業績や利益がアップしやすいともいえるでしょう。
そのためには、定期的にNPSを調査し、改善することが求められています。
顧客に適したアプローチを実行可能
2つ目のメリットは、顧客に適したアプローチを実行することができることです。
NPSでは、推奨者・中立者・批判者の3つに分けられます。
そこで、自社の顧客はどれが一番多いかNPS調査をすることで知ることが可能です。
推奨者はどうしてこの商品やサービスを支持するのか、批判者はどうしてこの商品やサービスを批判するのか、要因を探ります。
そうすることで、商品やサービスの改善にNPSを利用することが可能です。
また、想像していた顧客と実際にNPSであぶり出された顧客とは、まったく違うというギャップがある場合もあります。
NPSを活用することで本当の顧客層を知ることができ、最適なアプローチを実施できるのです。
顧客から見た自社のポジションを確認できる
NPSは、共通の質問や評価方法で評価します。
NPSを利用することで、顧客から見た業界内の自社のポジションを確認することも可能です。
また、競合他社とのスコアの比較もしやすいのもメリットの1つになります。
NPSの評価スコアは、すべて数値で表されるため、専門家でなくても簡単に分かります。
自社の評価スコアよりも、同業他社の評価スコアが高かったり低かったりしても数値で理解が可能です。
そのため、NPSを活用した改善もしやすくなります。
しかし、NPSの平均値が変わってしまうため、異業種での比較はできません。
実際に、30ポイントほどの平均値の差がみられています。
同業種内での自社のポジションや業界の平均スコアが、NPS調査をすることで簡単に把握することが可能です。
NPSを活用する際の注意点
NPSを活用するメリットについて解説しました。しかし、NPSにはメリットだけではありません。
NPSを活用する際の注意点もあります。
続いては、NPSを活用するにあたっての注意点についてご紹介します。
スコア自体がマイナスになる可能性がある
NPSは世界各国で使われているグローバル基準の評価方法ですが、日本ではマイナスになる可能性があります。
これは、アンケートでつい真ん中の評価を選んでしまう「中心化傾向」にあると分析されているのです。
普通のアンケートでは、真ん中の評価は普通と評価されますが、NPSの場合0~6の批判者という評価になってしまいます。
そのため、厳しい評価が出やすくなり、結果的にマイナスの評価となってしまうのです。
しかし、重要なのは、定期的に調査をして改善されているかや同業他社と比べることです。
また、自社がどのような評価を受けているかを把握することになります。
海外のデータと比べる時は、日本の顧客の評価は低めに出ることを承知しておきましょう。
回答していない顧客も考慮に入れる
これはNPSに限らずどの調査でもいえることですが、回答しない顧客も一定数いることも考慮に入れなければなりません。
そういった方々は、一般に「サイレントマジョリティー」といわれます。
反対に、NPSなどのアンケートに積極的に参加する顧客は、能動的ともいえるでしょう。
NPSへの回答数が少ない場合は、サイレントマジョリティーが多くなる傾向があります。
顧客を正確に把握できないため、現状を把握していない結果になってしまうのです。
調査でできるだけ多くの回答数を獲得するようにしましょう。
また、アンケート以外での顧客情報や購入履歴なども分析します。
そうすることで、サイレントマジョリティーの意見もくみ取るといった対策ができるでしょう。
NPSの成功事例
これまで、NPSを活用するにあたってのメリットや注意点について解説しました。
参考程度に、NPSの成功事例をご紹介します。詳しく見ていきましょう。
事例1:コクヨ株式会社
コクヨ株式会社は、「自社のファンを増やす」「顧客対応で得られた情報を活かす」という大きな目標を掲げ、2016年からNPSを導入しました。
顧客満足度調査とともにNPSを導入して実施したのです。
従来の顧客満足度調査で知ることができなかった顧客の評価を改善につなげています。
分析によると、顧客がコクヨに対しての改善や期待は、顧客ロイヤルティへの影響度が74%も持っているようです。
NPSの結果から、コクヨの事業成長に関わる問題を見出しました。
そこで、翌年から毎年にわたってNPS調査し、改善に努めています。
また、その改善が顧客にとって満足のいくものになっているか、NPSで評価しているのです。
事例2:ソニー損保
次にご紹介するのは、ダイレクト自動車保険の中で14年連続のナンバーワン、ソニー損保です。
ソニー損保では、2013年にNPSを試験的に導入しました。NPSを導入したことにより、顧客の詳しい情報を把握することができたのです。
まず、どうしてソニー損保を継続して契約しているかを調査したところ、「他社損保の検討が面倒」という意見が出てきたそうです。
必ずしも「ソニー損保がいい」というわけではないことが分かりました。
また、NPSの数値をもとに契約者数の分布と次の年の継続率を分析します。
そのことによって、批判者と中立者を推奨者に変えていく施策が可能になりました。
NPSは、収益に直結する指標であると、経営にとっても重要視されています。
事例3:Airbnb
滞在先を探す旅行者と、空き部屋を貸す者をつなげるプラットフォームを経営しているAirbnbも、NPSをとり入れています。
Airbnbでは、空き部屋を貸したいホストと、部屋を借りたいゲストを増やすことで売上の増加につながるのです。
増やすには、「友人紹介制度」が欠かせません。この紹介制度を重視しているために、NPSを導入しました。
その結果、推奨者の割合が批判者よりも13%高いという結果になったそうです。
もちろん、13%高かったというだけで軽視はしていません。
中には適当に評価する人もいるので、他の回答も合わせて回答者を見分ける必要があります。
Airbnbは、60万人もの回答者から、真剣にNPSを分析しているのです。
まとめ
NPSは、顧客ロイヤルティを数値で示すことができ、うまく活用することで、業績や売上の向上に役立ちます。
今回は、NPSについてやメリット・注意点、3社の導入事例などについて徹底解説しました。
NPSを導入することで、顧客が企業に求めていることも分かります。
また、NPSはマーケティングにも応用することができるので、ぜひ検討してみてください。