国内ではデジタル技術の普及が急速に進んでおり、これによりビジネスのスタイルも大きく変化しています。
DX時代へと変化するにあたって、企業としては必要な人材を確保したり、
社内の人材がデジタル技術を身につけるために学び直したりとさまざまな準備を進めているのです。
その中でも現代では新たな人材を確保することが容易でないことから、新たに学び直すリスキリングが注目を集めています。
この記事では主にリスキリングの意味やメリットなどを説明し、実際に行われている事例についても紹介するので参考にしてみてください。
目次
リスキリングとは?
リスキリングとは、簡単に説明すると新たにスキルを身につけることです。
例えば新たな職業に就くにあたって必要なスキルを身につけたり、働き方の変化などに適応するために必要なスキルを身につけたりといった意味があります。
なぜリスキリングが必要になってきたのかという理由は、DX推進が加速しているからです。
DX時代へと移り変わるために国内のさまざまな企業が取り組んでいますが、ここで課題となる部分がデジタル技術の専門的スキルを持った人材が不足していることです。
これによりリスキリングの必要性が国内でも高まっており、課題解決のために各企業が動いています。
リスキリングが注目を集めている理由
具体的にリスキリングが国内でも注目を集めている理由は大きく分けて2つあります。
国内でもデジタル化が進んでいること
最も注目される理由の一つとしては、デジタル化が進んでいることです。
欧米と比べると日本はそれほど進んでいないと言われていますが、ここ最近になってからあらゆる業界でデジタル化が進んでいます。
しかし、デジタル化の取り組みが進んでいるにも関わらず、その技術を持つ人材が少ないのが大きな課題となっているのです。
DX関連の業務は、具体的にデジタルやコンピュータに関する知識などがあげられ、特に国内ではDX関連の業務に携わったことがない方も多いとされています。
これらの課題を解決するためにリスキリングが注目されているのです。
新型コロナウイルスにより働き方が大きく変わってきたこと
新型コロナウイルスがなければ、これほどリスキリングが注目を集めることもなかったでしょう。
それほど新型コロナウイルスが世界に与える影響は大きく、国内の企業でも働き方が大きく変わってしまいました。
例えば会社に出勤して社内で働くことが当たり前だった世の中が、テレワークへと変わった企業も増えています。
また、顧客とのやり取りも対面で行うことが当たり前でしたが、現在ではオンラインへと移行するなど、従来の働き方では対応しきれなくなっているのです。
これらの働き方へと移り変わってきていますが、このケースで必ず必要となるのがデジタル技術となります。
例えば、申し送りなどを電話で行い、メモを取りながら行うとなると効率も悪く、ミスが発生するケースもあるでしょう。
しかし、デジタル技術を習得していれば、パソコンとインターネット環境を活用してスムーズな申し送りが可能になるなど、別の場所で働いていても効率が悪くなることはありません。
環境が大きく変わることによって、今までとは違う新たなスキルの習得が必須となるため、リスキリングを行う企業が増えているのです。
リスキリングが企業にもたらすメリットとは
リスキリングを行うことで企業にもたらすメリットはどのような点があげられるのか気になっている方も多いでしょう。
ここでは具体的にメリットを紹介するので参考にしてみてください。
スキル習得により新たなアイデアが生まれやすい
リスキリングを行うことによって、従業員が今まで習得したことがないスキルを身につけられます。
これにより、今までの発想になかったアイデアが生まれることも多く、うまく活用することで業務の効率化につながったり、売上アップにつながったりする可能性も高いでしょう。
社内に新しい発想が生まれやすい環境が作れるというのは、リスキリングの大きなメリットと言えます。
業務の効率化につながる
新たなスキルを身につけることによって、業務の効率化にもつなげやすいメリットがあります。
例えば、申し送りを紙タイプでしか行ったことがなく、これらをテレワークで対応しようと思うと電話になったり、郵送などになったりと効率が悪くなります。
しかし、社内で専用のツールやシステムを導入し、それらのスキルを従業員全員が身につけられればパソコンやスマホ一つで効率よく行うことが可能です。
特にスムーズなやり取りや帳票などを電子化で作成できるツールやシステムなら、従来の働き方よりも業務が効率化する可能性も高いでしょう。
リスキリングを行い、デジタル技術などさまざまなスキルを身につけることによって、テレワークなどで今まで以上に時間がかかるようになることはありません。
新しい働き方になっても今までより効率的に業務を行いたいのであれば、リスキリングは必要不可欠と言えるでしょう。
コスト削減を実現できる
DX時代には、データサイエンスやAIなどの高度なスキルを持った人材が必要となるケースもあります。
これらの専門的スキルをもった人材を外部から集めようとすると、それなりに高額な報酬を支払わなくてはなりません。
しかし、DX時代に向けて事前に今いる従業員への教育を進めていれば、
新たに外部からスキルを持った人材を集める必要はなくなります。
従業員を多く雇ってDX時代へ対応する必要がなくなるというのは、企業にとって大きなメリットと言えるのではないでしょうか。
どんな環境でも対応しやすい体制を整えられる
従業員全体がデジタル技術など新たなスキルを習得することによって、あらゆる環境でも対応しやすいメリットがあります。
例えば、現在では新型コロナウイルスの影響によってテレワークの推進が行われています。
これらの環境を想定していない企業では、業務がうまく進まず結局出勤しなければならないなど古い組織のまま進んでいかなければならなくなります。
しかし、事前に従業員への教育を行っていれば、テレワークへも柔軟に対応できるため、感染が爆発している危険な環境に出勤して業務を行う必要はありません。
これにより従業員が不安を抱えたまま出勤することもなくなりますし、どこにいてもすぐに業務への対応ができるようになるのは大きなメリットと言えるでしょう。
リスキリング導入における課題や問題点とは?
リスキリングを導入して企業に大きな効果をもたらすためには、課題や問題点をしっかりと理解しておかなければなりません。
ここでは今後の課題としてあげられている3つポイントをご紹介します。
従業員のスキルを可視化しなければならない
リスキリングを行う際には、そもそも社内の課題を見つけなければならず、
そのためには従業員一人ひとりが保有しているスキルを把握しておくことが大切です。
しかし、国内の企業で従業員一人ひとりのスキルを把握しているところは少なく、
そもそも課題がわからないと悩んでいるところも少なくありません。
また、一人ひとりに対して聞き取り調査などを行うのも時間がかかってしまうため現実的ではないでしょう。
そのため、これらの課題を解決するためにはできる限りツールやシステムを導入し、
AIによって職場に必要なスキルを明確にしておくと安心です。
スキルデータベースや、スキルマップの信頼度が高ければ、
課題を見つけるのにもそれほど時間がかかることはなく、自社がやらなければならないことを明確にできるでしょう。
従業員のモチベーションを維持し続けるための工夫
どのような企業にも、さまざまな考え方を持った従業員がいます。
例えば新しいことを学び続けたいと思う方もいれば、そもそも学ぶことに抵抗のある従業員もいるでしょう。
この場合、課題としてあげられるのが後者の場合です。
学ぶことに抵抗のある従業員のモチベーションが低下してしまうと離職率が高くなったり、仕事の効率も悪くなる可能性があります。
特に難しいスキルをいきなり押し付けてもさらなるモチベーションの低下につながる可能性があるため、
個々のスキルを把握しながら無理なく始めることがポイントでしょう。
リスキリングの効果を出すための重要なステップ
リスキリングを導入するのであれば、効果は出したいと思っている企業が多いでしょう。
そのためにはしっかりとステップに沿って進めていくことが大切です。
ここでは導入前に知っておきたい重要なステップについて紹介するので参考にしてみてください。
ステップ1:まずは自社の課題を把握しよう
働き方が変わることによって、自社にとってどのようなスキルが必要になるのか見極める必要があります。
例えば、データ分析のスキルを身につけたいのにHTMLやCSSを学んでも意味がありません。
リスキリングを導入するにあたって何を身につけることで大きく成長できるのかを考える必要があるため、課題は明確にすることが大切です。
ステップ2:リスキリングサービスの利用も検討する
リスキリングを効率的に行う方法としては、サービスの活用も検討しましょう。
種類はさまざまですが、例えば技能向上や研修支援を行ってくれるサービスがあったり、業務効率化のためのサービスがあったりと幅広く存在しています。
自社だけで対応することが難しい場合は、より効率化させられるサービスの活用がおすすめなので、自社の課題に合うものがあれば積極的に利用しましょう。
ステップ3:ゴールのための目標を決めよう
自社の課題を明確に決めることができたら、ゴールのための目標を決めることが大切です。
目標値をあらかじめ決めておかないと従業員のモチベーションを維持することが難しくなります。
課題となるスキル習得まで、どこまで学べばゴールとなるのかをしっかりと決めておくことで社内全体としても取り組みやすくなるでしょう。
ステップ4:リスキリングを行うにあって従業員への報告は怠らない
課題を克服するためには、従業員全員のモチベーションを保つことが大切です。
例えば、いざリスキリングを行うとなっても、何を目的としているのかわからなければ従業員のやる気はなくなってしまいます。
なぜ、何のために行うのかを明確に伝えることができれば、そのスキル習得の必要性が従業員も理解しやすくなるでしょう。
ステップ5:実践
習得したスキルは社内の業務で活かしてこそ意味があります。
従業員全体が課題をクリアできたら実際の業務に取り入れてみましょう。
実践したあとは、どこがどのように変わったのかデータとして示し、新たな課題が見つかればそれを改善するための取り組みも始めることが大切です。
リスキリングの事例
ここでは日本も含めて世界の企業がどのようなリスキリングを行っているのか紹介します。
これから実施したいと思っている企業は、事例なども参考にしながら始めてみてください。
Amazon
引用元:Amazon
Amazonは米国の中の大企業の一つで、リスキリングにも力を入れていくと発表しています。
具体的に2025年までに従業員10万人に行うと発表しており、投資額は一人あたり約75万円です。
内容としては、非技術系人材を技術職に移行させるための高度なスキルを持つ人材を育てていくとAmazonは話しています。
今後はAI技術の発達により、非技術系人材が必要なくなる時代がやってくると言われています。
リスキリングを実施してスキルを身に着けないと多くの人材が職を失うこととなってしまうのです。
Amazonはこれらの人材でも働ける環境を作るため、今後力を入れて実施していきます。
富士通
引用元:富士通
日本ではDX時代へ早急に対応していくことが重要とされていますが、その中でも早い段階から着手していたのが富士通です。
富士通はDX企業への変革のため、約5年の期間をかけて従業員にリスキリングを実施すると説明しています。
かかるコストは5年間で5,000〜6,000億ほど投資するとされており、大きなプロジェクトになることが予想されます。
日立製作所
引用元:日立製作所
日立製作所は、デジタル社会を生き抜くための企業と個人をつくるリスキリングを実施すると発表しています。
主に課題としてあげられているのがデジタル対応力を持つ人材の強化です。
これらが重点課題の一つとしてあげられており、課題解決のためのデジタルリテラシーエクササイズという基礎教育プログラムを開発しました。
プログラムはDXに関する基礎知識を身につけるまでの工程を学べるようになっており、登山をする感覚のプログラムです。
対象となっている従業員は約16万人とされており、課題の克服をするための大きなプロジェクトとなっています。
AT&T
AT&Tは米国の中でも大手の通信会社です。
リスキリングを比較的早い段階から行ってきた実績を持っている企業で、主に通信業界の移り変わりに対応するために実施したとされています。
AT&Tは2008年に従業員に対するスキル調査を行ったところ、約半数が今後あまり必要にならないスキルしか持っていないことが判明しました。
このままでは通信業界の中で成長していくことができないと考え、2013年に10万人を対象にしたリスキリングが実施されています。
かかったコストは10億ドルとも言われていますが、プロジェクトに参加した従業員の昇進率は上がり、
離職率も抑えることができたなど大きな成果が出たと話題になりました。
まとめ
今回はリスキリングについて基本的な意味からメリットについても紹介しました。
海外を中心に行われていたリスキリングですが、徐々に日本にも実施する動きが見受けられます。
今後の働き方や技術の変化に対応するために必要不可欠な部分となるため、特に現代の技術についていくことができていない場合は、早急に対応することが必要でしょう。