クレーム対応は対応するカスタマーサポート人員の負担が大きく、厄介なものとして捉えられることが多いです。
しかし、適切なクレーム対応をすることで、商品サービス改善のきっかけが探れたりかえって自社のファンなってくれたりする可能性もあることをご存知でしょうか。
今回は、クレーム対応の理想的な方法について、詳しく解説します。
実際の事例・例文もピックアップしますので、対応レベルをあげたい方はぜひチェックしてみてください。
目次
クレームに隠されたメリット・デメリット
まずは、クレームに隠されたメリット・デメリットを正しく理解していきましょう。
一見デメリットだらけのクレームにも、会社をよくするヒントがあるかもしれません。
メリット
クレームには、実はメリットも多いものです。
厄介かつ面倒なものと感覚的に捉えすぎず、良い面にも目を向けてみましょう。
自社のホスピタリティを最大限発揮できる
クレームは、自社の対応力が試される最大の場と言っても過言ではありません。
文句・不満・不安・怒りを抱いて連絡してくるユーザーに対し、いかに自社のホスピタリティを伝えるか、試されていると捉えましょう。
周りから支持される人ほど腰が低く温厚であるように、会社の知名度や評判に奢ることなく懇切丁寧に対応する姿勢を示すことが大切です。
なかには「クレームを嫌う会社は一流になれない」という考えを持つ経営者もおり、クレーム対応がいかに重要か分かります。
クレーム対応がきっかけでファンになってもらえる
人は、自分が期待していた以上のことを相手にしてもらえると、相手のことを好意的に受け取りやすいものです。
クレーム対応でも同じように、大きな不満を持って問い合わせをしてきた方にも
期待されている以上の対応ができれば、かえって好印象を持たせられるでしょう。
「こんなに親切に対応してもらえた」
「困りごとをスピーディーに解決してもらえた」
という印象で会話を締められれば、自社のファンになってくれるかもしれません。
ポジティブな口コミ・評判が出回る可能性もあり、クレーム対応に力を入れるメリットが分かります。
商品サービス改善のきっかけを探れる
ユーザーからのクレームには、商品サービスの改善すべき要素がたくさん含まれています。
「〇〇支店の対応が雑だしレスポンスが遅すぎる」
「新商品の〇〇のフレーバーがあまりにも甘すぎて胸やけする」
など、改善すべき内容が明らかであるケースもあるでしょう。
クレームを寄せる人の多くは、それだけ自社に期待し、改善を求めている人でもあります。
まずは期待を裏切って迷惑をかけたことを丁寧に謝罪しながら、そのうえで本音の意見を伝えてくれたことを感謝しましょう。
企業規模が大きくなればなるほど本音を伝えてくれるユーザーは少なくなるため、クレーム対応は貴重なチャンスだと言えるのです。
デメリット
クレームにメリットが多いことは重々承知していても、どうしてもデメリットが発生するシーンもあります。
どんなシーンだとデメリットの方が大きくなってしまうのか、検証してみましょう。
1件ずつのクレーム対応に時間がかかる
クレーム時にはユーザーの不満が爆発しているケースが多く、対応に時間がかかります。
どんなことが起こったのか、どんなポイントが不満だったのか、その裏に隠れた思いは何か、何を自社に期待しているのかヒアリングするだけでも、通常以上に労力が割かれるでしょう。
電話でのカスタマーサポートであれば、ひとりのユーザーに対しひとりの人員を割く必要があり、より工数が増えてしまいます。
また、メールでのカスタマーサポートであっても、内容を精査したうえで適切な部署に対応手法を照会するシーンが多く、手間がかかります。
カスタマーサポート人員のメンタルが傷つく
クレームを伝えようとしているユーザーは感情的になることも多く、カスタマーサポート人員のメンタルが傷つくこともあるでしょう。
一方的に何時間も怒鳴られ続けたり、商品サービスや会社の姿勢ではなく一個人の人格を否定されたりするケースもあり、長く続けていることでメンタルヘルスを損なう可能性も考えられます。
会社として最大限サポートする必要があり、社員を守るための取り組みも欠かせません。
クレーム対応ノウハウの共有が難しい
カスタマーサポート歴が長い人材と、経験が浅い人材との間で大きな差があり、ノウハウの共有が難しくなるリスクも挙げられます。
せっかく新規人材を雇っても早期退職されてしまい、ノウハウを引き継げないこともあるでしょう。
会社自体にナレッジが蓄積されず、業務が属人化しやすいことも懸念点です。
そうした状況が長く続くことでクレーム対応の品質が下がることも想定され、会社にとっては大きなデメリットとなるでしょう。
クレーム対応時にやってはいけないこと
次に、クレーム対応時に絶対やってはいけないことを紹介します。
かえって火に油を注ぎ、二次クレームになる恐れもあるため、特に注意しておきましょう。
相手の話を遮る
クレームを言っている人の話は、どんなに長くとも最後まで聞き通すことが原則です。
一見筋が通らず矛盾しているように感じられる内容であっても、一旦全て吐き出してもらいましょう。
途中で相手の話を遮ったり、「要はこういうことですよね」と勝手な要約をすることで、相手は更に傷つきます。
「自分の話を聞いてもらえなかった」「わかったようなフリをされた」というネガティブな印象を与えてしまうため、特に注意しておきましょう。
相手の話を疑う
相手の話を疑い、最初から聞く姿勢を持たないこともNGです。
「十分な品質管理をしているのですが、本当にそのようなことがあったのでしょうか」
「本当に起きたことかを確認するため、証拠となるような写真・動画があれば拝見できますか」
という対応をすることで、疑いのスタンスから入っていることが伝わってしまいます。
また、ユーザー側の過失を確認するような質問をされた場合も、一気に不信感が根付いてしまうでしょう。
例え本当に起きたことか疑わしかったとしても、まずは相手の言い分を飲み込み、自社の信頼が足りなかったことを謝罪することが重要なのです。
「うちは悪くない」と主張ばかりする
どうにか自社の過失割合を下げようと試みるあまり、「うちは悪くない」という弁明ばかりしてしまうことも問題です。
クレーム対応をはじめとするカスタマーサポートは、その名の通りカスタマー(消費者)であるユーザーをサポートするために存在します。
トラブルやクレームが発生したときに自社側の都合ばかり考えていては、相手をサポートすることはできません。
少なからず不利益を被ってしまったユーザーの気持ちに寄り添い、自社のどんなナレッジを活用すればリカバリーできるか、考えていきましょう。
解決できないまま終話する
問題が解決できないまま終話すると、「結局何もしてもらえなかった」「言っても変わらなかった」という無力感を与えてしまいます。
完全なる解決が難しくとも、次の行動につながる「ネクストアクション」だけは提示できるよう、意識しておくとよいでしょう。
次にすべきことが見つかると人の意識は自然と次に引っ張られるため、クレームを言う段階から脱却できます。
しかし、次にすべきことが見つからなかった場合、漫然として不満なそのまま蓄積されてしまうのです。
なかにはクレームを言うだけで満足する人もいるため、意見を伝えてくれたことに対する感謝の気持ちを示し、思いに寄り添っていきましょう。
理想的なクレーム対応に共通する要素
次に、理想的なクレーム対応に共通する要素を紹介します。
クレーム対応スキルを上げるためにも、ぜひチェックしてみてください。
クレームの原因となった事象を正確に理解している
なぜクレームが起こったか、どんなことを不満に思いクレームにつながったのか、正確に把握することが不可欠です。
状況を理解しないまま謝罪をしてしまうと、「とりあえずの謝罪」であるかのように感じられ、不誠実な印象を受けるでしょう。
謝っておけばいいという態度が透けて見えることで、かえってクレームの火種は大きくなってしまいます。
商品サービス改善のヒントを探るためにも、まずは何が原因でクレームとなっているのか、聞き取りをすることが大切です。
相手の気持ちに最大限寄り添っている
クレームは、購入(利用)前に抱いた期待とのギャップが生じることで発生します。
例えば、自分にとって高額だと思われる額を出して購入した商品に、傷・汚れ・整備不良が起きていたらがっかりするでしょう。
反対に、相場より何倍も低い金額で購入した商品であれば、多少品質に問題があっても諦められるものです。
このように、「がっかりする気持ち」は期待とのギャップにより生じることを理解しておきましょう。
自社にどんな期待をしてくれて、それをどう裏切ってしまったのか知り、相手の気持ちに寄り添うことが肝心です。
特に、プレゼントしたい相手がいた、取引先に迷惑をかけてしまったなど、第三者に影響が出た場合はクレームの比率も高くなるため要注意です。
話を聞き終わった後で自社なりの提案をしている
ユーザーからの話を全て聞き終わった後で、自社なりの提案をすることが大切です。
クレームを伝えるユーザーは、「伝えたら何か対応してくれるかも」という期待を持って連絡してくるものです。
一度大きな不満を抱いたにも関わらず、更に期待して連絡をしているわけですから、ここで再度裏切るわけにはいかないと捉えておきましょう。
まずは相手の話をしっかり聞き、気持ちに寄り添って誠実な謝罪をしたうえで、自社でできる最大限の提案をおこないます。
結果的に提案が受け入れられなくても、提案してくれたということ自体が満足につながるケースもありますので、諦めずアプローチしていきましょう。
大きなクレームをチーム内できちんと共有している
会社の今後を左右すると思われる重大なクレームが発生した場合、速やかにチーム内で共有する必要があります。
直属の上司はもちろん、場合によっては更に上の役職であるグループリーダーや役員にまで速やかに報告し、何よりも優先して対応すべき事象もあるのです。
特に、人命や健康に関わるような事件・事故、リコールが必要と思われる欠陥が疑われる場合は要注意です。
常日頃から報告・連絡・相談体制を万全に整え、カスタマーサポート人員の一存でクレームを手元で止めることのないよう、トレーニングしていきましょう。
クレーム対応に必要なスキル
次に、クレーム対応に必要なスキルをピックアップします。
個人のスキルアップを図るためにも、研修等でチーム全体のスキルアップを図るためにも、お役立てください。
傾聴スキル
第一に、根気よく相手の話に耳を傾ける傾聴力が必要です。
時には理不尽に感じることや話の矛盾を指摘したくなることもありますが、グッとこらえて話を最後まで聞きとおしましょう。
ユーザーが話している内容に相槌をうち、ときにはオウム返しなどをしながら理解している姿勢を示すことも重要です。
まずは「この人であれば自分の話をしっかり聞いてくれる」と思わせられるような信頼関係を、短時間ではありますが築き上げていきましょう。
判断スキル
クレームの重要度を分類し、その場でスピーディーかつ正確に判断するスキルも重要です。
万が一重大なトラブルに発展すると予想されるクレームであれば、即時責任者の指示を仰ぐなど、速やかな対応が求められるでしょう。
それ以外のクレームに対しても、話を聞いてほしいだけなのか、金銭で解決したいのか、ありとあらゆる手を使って納期に間に合うよう手配してほしいのか、ユーザーニーズを的確に判断する必要があります。
ニーズと提案が合致していれば、期待通りのカスタマーサポートがしやすくなり、企業としての信頼度も向上します。
交渉スキル
クレーム対応していると、ユーザーのニーズと自社側で最大限実行できる提案との間にギャップが生じることが多いことに気がつきます。
なんとか力になりたいと考えていても、「無理なものは無理!」というシーンも出てくるでしょう。
そんなときは、互いに最善の着地点が見つかるよう交渉し、どうにか一番納得してもらえる手法を考案する必要があります。
100点の解答でなくとも80点90点を目指す取り組みをおこない、譲歩できるポイントを探るのが効果的です。
感情的になっている相手に交渉するのは逆効果であることも想定し、しっかり相手の話を聞いて勢いが収まってからおこなうなど、テクニックも求められるでしょう。
ストレス耐性
クレームには真正面から誠心誠意対応するのが理想ですが、真面目な性格が仇となり、メンタルヘルスを病んでしまうカスタマーサポート人員も少なくありません。
なかにはカスタマーサポート人員の人格を否定したり常に怒鳴りながら見下すような発言を続けてきたりする「クレーマー」も存在します。
鬱になったりトラウマになったりして仕事に支障が出ては、本人はもちろん会社に取っても大きな損失となるでしょう。
しかし、大原則としてクレームはあくまでも「会社に対するクレーム」であり、個人に対するクレームではないことを知っておく必要があります。
クレームを伝えることで気持ちを整理したい人や改善案を探りたい人と、単なるクレーマーは分けて考えるのがよいでしょう。
どうしても我慢ならないときは他の担当者と変わりながら上手く回し、無理をしない働き方をするのがポイントです。
人に好かれる話し方
声のトーン・話すスピード・抑揚・声量・会話の癖を見直し、人に好かれる話し方をすると効果的です。
特にお互いの顔が見えない状態でクレーム対応をするシーンでは、話し方や言葉ひとつで相手からの印象は大きく変わってしまいます。
落ち着いたしっかりした人という信頼あふれる印象を与えられるよう、少し声のトーンは低めに、ほんの少しゆっくりと話すのがよいでしょう。
細かな口癖も修正し、会社の顔として恥ずかしくない対応ができるよう意識しておくとさらに改善されます。
【例文集】実際のクレームを参考に対応を考えよう
最後に、例文を参考に実際にあったクレーム対応を見てみましょう。
言い回しや対応方法を学び、現場で役立てていくことがおすすめです。
意見してくれたことに感謝を伝える言い回し
- 今回ご指摘いただいた件は、社内でさらに検討し、今後に役立てて参ります。
- 貴重なご指摘をいただき、誠に感謝申し上げます。
- 改めてお詫びを申し上げるとともに、貴重なご意見に感謝いたします。
- 貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。
今後もサポートが続行することを伝える言い回し
- また何かお気づきのことがございましたら、いつでもご連絡ください。
- 再度お困りごとがございましたら、担当〇〇までご連絡ください。
- 原因が判明次第、社内での情報共有を徹底し再発防止に努めてまいります。
- 今後ともご愛顧のほど心よりお願い申し上げます。
具体的な提案を伝える言い回し
- 新品の同商品と交換させていただきたく思いますが、いかがでしょうか。
- 誠に申し訳ありませんが、まずは商品代金を返金させていただきたいと考えております。
- 弊社といたしましては、改めて商品をお届けに伺いたいと存じます。
気持ちに寄り添った一言を伝える言い回し
- この度は弊社の商品に関して、ご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ございません。
- お客様にご不安な思いをさせてしまいまして、誠に申し訳ございません。
- 本件のためにお時間を取らせてしまい、誠に申し訳ございません。
- ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません。
- ご不便な思いをさせてしまい、お詫び申し上げます。
- 数ある商品の中から弊社の商品を選んでいただいたにもかかわらず、ご期待に沿えなかったことに心よりお詫び申し上げます。
まとめ
「クレーム対応」と聞くと、気が重く非常に面倒な業務であると感じる人は少なくありません。
しかし、クレーム対応が適切におこなわれることによるメリットも多く、企業イメージを守るための最終砦として大きな役割を果たしています。
まずは、今回紹介したクレーム対応時のポイントをもとに、現在の体制を振り返ってみましょう。
例文も参考しながら改善していけば、クレーム対応が怖いものではないと分かります。