「仮想デスクトップを使えば仕事がやりやすくなる」
「テレワーク時代に仮想デスクトップは必須」
という感想を持つ人は多く、生産性向上・業務効率改善のために欠かせないと感じることは多いでしょう。
しかし、仮想デスクトップという単語は知っていても、メリット・デメリットを正しくイメージできていない人もいるのではないでしょうか。
今回は、仮想デスクトップについて詳しく紹介します。導入時の注意点にも触れますので、参考にしてください。
VDI(仮想デスクトップ)とは
VDIとは、”Virtual Desktop Infrastructure”の略です。
仮想デスクトップとは、文字通り「仮想のデスクトップ」による作業環境を指します。
Windows10以前は1つのパソコンに対して1つだけデスクトップが実装されていましたが、
今では複数のデスクトップを使い分けられるようになりました。
仕事用・プライベート用・家族用など用途ごとに分けるほか、
仕事のフェーズや内容ごとに分けて使うことも可能です。
また、ネットワーク経由で特定のデスクトップにアクセスできることも特徴です。
そのため、出先から自宅パソコンのデスクトップを閲覧したり、
複数のチームメンバーが同じデスクトップを共有したりできるのです。
2021年10月5日にリリースされたWindows11にも、仮想デスクトップ機能は継続して引き継がれています。
アップデートされて更に使いやすくなっていますので、今後更に活用していく人が増えるでしょう。
VDIのメリット
まずは、VDI(仮想デスクトップ)のメリットを紹介します。
使い道以外のメリットまで幅広く知っておけば、VDI(仮想デスクトップ)導入を検討するときに役立つでしょう。
不正アクセスに強くなる
システム管理者が一括でセキュリティ設定できるため、不正アクセスに強くなります。
一括管理できることがVDI(仮想デスクトップ)の魅力であり、一部のパソコンにだけウイルスブロックソフトがインストールされていなかったり、設定を間違えたりするトラブルも防ぎやすくなるでしょう。
また、中央管理されているサーバーに不正アクセスするのはハードルが高いという意味でも、不正アクセス防止効果が期待できます。
災害発生時のリスクヘッジができる
万が一、地震・火事・台風などの水害でパソコンが破損しても、データ紛失を防止できることがメリットです。
クラウドやデータセンターにデスクトップの情報が残っているため、ネットワーク環境さえ復帰すれば、他のパソコンからアクセスできます。
また、空き巣による盗難・電車内への置き忘れ・水濡れでの破損など、人的エラーが原因でのデータ紛失にも対処できます。
遠隔でデスクトップを削除したりデータを別の場所に移したりすれば、保存された情報が見られることもありません。
社内情報共有がしやすくなる
ネットワーク経由でVDI(仮想デスクトップ)に接続することで、いつでもどこでも特定のデスクトップを閲覧できます。
そのため、テレワーク中の社員がオフィスにあるパソコンのデスクトップにアクセスしたり、チームメンバーが同じデスクトップ環境で作業したりすることが可能です。
「今すぐ必要な情報が、公休社員のデスクトップにしか保存されていない」
「離れた場所で働く社員に都度ファイル送信するのが面倒」
という悩みを解消できるため、テレワーク時代に必須のツールだと言われています。
VDIのデメリット
反対に、VDI(仮想デスクトップ)のデメリットも知っておきましょう。
導入後にミスマッチを感じて運用に困ってしまわないよう、あらかじめ知っておくことが大切です。
ネットワーク環境が悪いと処理能力が下がる
ネットワーク経由でVDI(仮想デスクトップ)に接続する場合、処理能力はネットワーク環境に依存します。
そのため、速度の遅いネットワークに接続している場合や、電波が届きにくい場所でWi-Fiを使っている場合には、仮想デスクトップが重く感じられることがあるでしょう。
処理や保存の度に手を止めねばならず、業務ストレスが上がるリスクがあります。
リソースが不足していると処理能力が下がる
サーバー側のリソースが不足している場合も、同様に処理能力が下がってしまいます。
同時に何千人もの社員が膨大なデータ処理をおこなう場合、それなりのサーバー投資が必要です。
また、ビックデータ分析や動画の編集・作成など、大量のデータ加工をおこなう会社も十分配慮しておく必要があるでしょう。
障害に弱い
サーバーに障害が起きた場合、誰もVDI(仮想デスクトップ)にアクセスできなくなってしまいます。
一部のローカル環境にのみ頼って仕事をするしかなくなり、業務効率を大きく下げる原因となってしまうでしょう。
当然ながら、VDI(仮想デスクトップ)への依存度が高ければ高いほど、業務が完全停止するリスクが高まります。
リスク分散の必要性も考え、バランスよく導入していくことがポイントとなるでしょう。
【タイプ別】VDIの導入方法
ここでは、VDI(仮想デスクトップ)の導入方法をタイプ別に紹介します。
大きく4つのタイプに分けられるため、ひとつずつ特徴を抑えていきましょう。
1.VDI方式
VDI方式は、サーバー上に個別のVDI(仮想デスクトップ)を作成する方法です。
1つのパソコンに対して1つの仮想デスクトップを原則としており、VDI(仮想デスクトップ)導入前と変わらぬ使用感が得られます。
Windows10などユーザーOSでも使用できるため便利ですが、その分コストは高くなりがちです。
2.SBC方式
SBC方式は、サーバー上のOSやソフトを複数パソコンの仮想デスクトップ上で共有する方法です。
VDI方式より使えるアプリケーションの幅に限りがありますが、特定のアプリケーションしか使わないのであれば、SBC方式で十分でしょう。
その分コストを抑えやすく、無理なくランニングさせることが可能です。
3.HDI方式
HDI方式は、ユーザーひとりにひとつのサーバーを構築し、割り当てる方法です。
特定用途に特化することでコストパフォーマンスを最適化したい場合に最適であり、自分専用のサーバーがあるため高い機能性を体感できます。
他のユーザーが大量の情報処理をおこなっていても自分の環境に影響しないため、最も作業効率のよい方式だと言えるでしょう。
4.DaaS方式
DaaS方式は、クラウド上に個別のVDI(仮想デスクトップ)を作成する方法です。
自社でサーバー保有する必要がなく、外部のクラウドサービスを利用できるため、導入コストを抑えられます。
メンテナンスなども丸任せしやすく、保守・運用に手間がかかりません。
その分、自社の希望とズレたタイミングでメンテナンスがおこなわれるなど、自社専有型でないからこそのデメリットも生じます。
VDI導入時の注意点
最後に、VDI(仮想デスクトップ)導入時の注意点を紹介します。
VDI(仮想デスクトップ)自体は優れた機能ですが、十分に使いこなせるか、保守・点検・運用のルールや管理法をどう決めるかまで目を配らせ、期待通りの効果を得ていきましょう。
社員に対するITリテラシー教育を十分におこなう
そもそも仮想デスクトップが何なのか、どんなシーンで使うのが最適か、導入によって得られるメリットは何か、きちんと社員教育をしておきましょう。また、セキュリティ対策などITリテラシーに関する内容も指導しておく必要があります。
「よく分からないけど何か新しいことが始まったらしい」という程度の認知しか得られない場合、機能を使いこなせず、非効率的な働き方が継続してしまう恐れがあるでしょう。
運用ルールを決めたり、問い合わせ担当者を置いたり、細かな点に配慮することも欠かせません。
スモールステップで導入を広げる
VDI(仮想デスクトップ)は、なるべくスモールステップで導入することをおすすめします。
まずは情報システム部だけ、総務部だけ、人事部だけ…というように、バックオフィス業務を中心に導入の幅を限定した状態で始めてみましょう。
全社同時に導入した場合、現場に混乱が生じたとき、管理する側の負担が増大します。
万が一障害が起きたときには全業務がストップすることになりかねないため、慎重に進めるのがよいでしょう。
社員規模や業務フェーズに合わせて都度メンテナンスをする
VDI(仮想デスクトップ)をどう使うかは、企業ごとに異なります。
同じ企業でも、部署・役職・業務内容によって最適な運用法は変わるため、都度メンテナンスするのがよいでしょう。
特に、社員規模が増えてサーバーに負担がかかりそうなときや、業務フェーズや部署編成が変わって運用ルールに変更が必要なときには注意が必要です。
実際にVDI(仮想デスクトップ)を使っている社員に定期的なヒアリングを実施し、使いやすいポイント、使いにくいポイントをフィードバックしてもらうのがおすすめです。
導入から運用・管理まで手掛けられるツールを使う
導入はもちろん、運用・管理まで手掛けられるツールを使えば、システム管理者への過度な負担を避けられます。
特にサーバーダウンなど業務停止に直結するためのトラブルだけは避けなければならず、既にある優れたプラットフォームを活用するのもひとつの手段だと言えるでしょう。
なかにはコンピュータセキュリティの国際規格である「コモンクライテリア認定」を取得しているくらいセキュリティ基準が高いツールもあるため、比較・検討しながら選定しましょう。
まとめ
VDI(仮想デスクトップ)を導入することで、作業環境がよくなり、業務の効率化・生産性向上が期待できます。
「マルチタスクがしやすくなった」「社内情報共有ができるようになった」と感じてもらえれば、従業員満足度も上がるでしょう。
まずは今回紹介したVDIのメリット・デメリットや注意点をしっかり押さえ、理解を進めていくことがおすすめです。