企業が効率的に利益を獲得するためには、生産性を向上させることが重要です。
特に、労働生産性は従業員1人に対して生み出される生産量や付加価値を意味し、
それが向上すればするほど少ない労働力で得られる産出量は多くなります。
また、事業活動にはスピーディな経営判断と意思決定が重要です。
現代社会を取り巻く環境は日々刻々と変化しており、
市場の需要や顧客のニーズに合ったサービスの提供やそれに対応できる経営体制の構築は企業経営において大切な要素といえるでしょう。
生産性の向上やスピーディな経営判断を行うため、企業の中にはERPの導入を検討する担当者も少なくありません。
しかし、ERPとCRMを混合してしまい違いを把握しきれていない方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ERPとCRMの違いについて詳しく解説しますので、興味のある方はぜひ参考にしてください。
目次
ERPとCRMの概要をチェックしよう!
両者は3文字のアルファベットで表現されるため、意味が混ざってしまうという方も少なくありません。
まず概要を説明しますので、両者の違いを明確にしましょう。
ERPとは?
ERPは、Enterprise Resources Planningの略称で企業資源計画を意味します。
企業の根幹である『ヒト』『モノ』『カネ』『情報』を一元管理・最適化して効率的な経営体制構築を目指す考え方や概念のことです。
従来はビジネス用語として使われていましたが、現在は統合基幹業務システムを指します。
さらに詳しく内容を知りたい方は、下記の記事を参考にするのがおすすめです。
CRMとは?
CRMとは、Customer Relationship Managementの略称で顧客関係管理を意味します。
主に、顧客情報を一元管理することを表すマーケティング用語です。
顧客と良好な関係を築き、自社商品のリピーターやファンを増やして利益を向上する経営手法や概念を指します。
しかし、現在は顧客管理システムを指し示すことが多いです。
ERPとCRM、それぞれの役割を知る
両者の違いを明確にするため、それぞれの役割についてチェックしていきましょう。
ERPの役割
ERPの主な役割は、財務や企画、マーケティングなど経営における基幹業務を1つにまとめて管理することです。
例えば、全体最適化型は生産ルートや受注体制、在庫管理などあらゆるプロセスを管理することが役割です。
また、コンポーネント型は『営業』、『販売戦略』、『品質管理』など
経営に必要な基幹業務をコンポーネントという小さい単位にわけて、統合管理する役割を担います。
CRMの役割
CRMの役割は、顧客情報の収集や管理です。
例えば、取引履歴や対応履歴を収集し、管理することはCRMが担当します。
また、顧客情報を分析したり、その結果をもとに適切なアプローチをしたりすることも役割の中に含まれるでしょう。
主に顧客管理が中心で経営の財務などまで及ばないケースが多いです。
ERPとCRMの目的について
次に、ERPとCRMの目的について詳しく解説します。
ERPの目的
主な目的は、大まかにわけて4つ挙げることができます。
それぞれの目的について詳しくご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
データの活用
現代社会はシステム開発からデータ活用にシフトしつつあります。
データは資産であり、それを活用することで企業は利益を生み出すことも可能です。
しかし、データを活用することは簡単ではありません。
なぜなら、収集・分析しなければ活かすことはできないからです。
これを容易するためにERPが導入されています。
それぞれの部署に散在しているデータを1つに集約し、一元管理をすることができるため、データ活用できる環境を構築することができるのです。
情報収集の負担が少なく、一元管理・分析も容易なため、それを目的に導入される企業は少なくありません。
情報処理システムの統合
情報処理システム統合も目的のひとつです。
ERPには、複数のシステムをひとつに統合する役割も存在します。
社内に複数のシステムが点在している場合、運用の負担は大きくなるでしょう。
例えば、定期的にメンテナンスを行う必要があります。
また、それぞれでコストがかかるため、合計すると莫大な出費になるというケースも珍しくないでしょう。
このような課題を解決するために、導入されるケースが多いです。
システムを一括管理できるようになるため、運用の負担やコストを削減することができます。
会計情報の一元化
会計情報を一元管理することも目的のひとつです。
部署によって会計処理がそれぞれで管理されると決算時に再入力や修正作業が必要になります。
これらを一元管理することもERPの大きな目的です。
会計処理や販売管理、人事管理などの情報を一元管理することができるので、利便性が高くなります。
ガバナンスの強化
4つ目の目的は、ガバナンスの強化です。
それぞれの社員が端末を持ち、資料作成やクライアントのやり取りを行っています。
ERPを導入していない企業では、情報が社員ごとに分散されてしまうため、社員を細かく監視することができません。
そのため、社内データを無断で持ち出してしまうなどの情報不正利用リスクが非常に高くなります。
ERPを導入すれば、情報を一元管理することができるため、管理者は情報を監視しやすいです。
これにより、情報漏えいリスクを低下させることができるので、セキュリティ強化を目的に導入する企業は少なくないでしょう。
CRMの目的
CRMの目的は具体的に4つあります。
顧客情報の可視化
1つ目の目的は顧客情報の可視化です。
CRMを導入すれば、グラフなど視覚的にわかりやすいように表示してくれるため、顧客情報を的確に把握することができます。
また、情報が1箇所に集中するため、効率化を図ることも可能です。
顧客情報の共有
2つ目の目的は、顧客情報を共有するためです。
CRMを導入することで、顧客情報をリアルタイムで共有することができます。
マーケティング部門、カスタマーサポート部門、営業部門が扱うデータをそれぞれで共有することで確実性の高いマーケティングや顧客満足度の高いサポート、効率的な営業活動を実現することが可能です。
結果的に企業は利益につなげられたり、ファンやお得意様を増やせたりするので非常にメリットがあるでしょう。
営業マンの負担削減
営業マンの負担を削減する目的でCRMを導入する企業も多いです。
マーケティング部門のデータをスムーズに扱えるようになるため、見込みのない顧客に対するアプローチが減ります。
これにより、自社商品に対して興味のないところに足を運ぶ確率が格段に少なくなるでしょう。
無駄足を減らせるため、営業マンの負担を抑えることができたり、交通費を削減できたりします。
優良顧客を生み出すため
4つ目の目的は優良顧客を生み出すためです。
CRMを導入することで、顧客とのコミュニケーションを活性化させられます。
普段から会話をして良好な関係を維持することができれば、既存顧客が優良顧客になってくれる可能性は高いでしょう。
現在は、既存顧客を大切にしてLTVの最大化を目指す企業も多いのではないでしょうか。
特に、サブスクリプションモデルにおいては、サービスを継続して使い続けてもらうことが非常に重要です。
万が一、解約されてしまうと利益の低下に直結してしまうため、適切なタイミングでアプローチすることが求められます。
既存顧客をフォローし続けることはとても大切なので、それを目的にCRMを導入する企業は非常に多いです。
ERPとCRMの大きな3つの違い
ここまで、両者の概要や役割、目的について詳しく解説しました。
ERPは統合基幹業務システム、CRMは販売管理システムを意味し、両者は大きく異なるものです。
特に、下記の3つにおいては、大きな違いがあります。
- 役割や目的
- 扱う情報
- 業務範囲
それぞれの違いについて詳しくご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
役割や目的
1つ目の違いは役割や目的です。
ERPは、『カネ』『ヒト』『モノ』『情報』の動きを一元管理することが役割になります。
一方、CRMは顧客情報をデータベースで管理し、顧客満足度の向上を図るシステムです。
そもそも両者の役割は大きく異なるので、別々にわける必要があります。
しかし、ERPとCRMの両方を導入する企業も多いため、
意味はわけて考える必要がありますが、共存することができないという意味ではありませんので、注意しましょう。
扱う情報
2つ目の違いは扱う情報です。
ERPは、財務や予算、生産、在庫営業など経営に関わるさまざまな情報を管理します。
一方、CRMは顧客情報に関するデータがメインです。
前者は幅広い情報を管理するシステムなのに対してCRMは顧客情報という比較的狭い範囲のデータを扱います。
業務範囲
3つ目は業務範囲です。
ERPは、バックオフィス業務を管理するシステムになります。
一方、CRMはフロントオフィス業務を管理するのが一般的です。
このように守備範囲にも違いがあるので、覚えておくようにしましょう。
ERPとCRM、どちらを選べばいいのか?
ERPには、顧客管理機能や営業支援機能などCRMにも搭載されている機能があるため、
企業の中にはどちらを選択すればいいのかわからない方も少なくありません。
企業の目的に応じて選ぶべきシステムをご紹介しますので、
どちらがいいのかわからない担当者は、ぜひ参考にしてください。
『顧客情報に特化するorしない』で選ぶ
顧客情報に特化するか否かで選択するのがおすすめです。
ERPは、たしかに顧客管理機能や営業支援管理など、CRMでよく見られる機能が複数搭載されていますが、
あくまでも統合基幹を一元管理する目的であり、詳細な顧客情報は管理しないケースが多くなります。
そのため、顧客満足度を向上させるためや営業負担の削減を達成する目的でシステム運用を検討している方は、CRMのほうがおすすめです。
CRMは顧客情報に特化したシステムでそれに関する情報の一元管理やリアルタイム共有を実現できます。
その情報をもとに顧客満足度向上や売上アップを目指したい企業にとってCRMを選択するのが好ましいといえます。
『ビッグデータを扱いたいor必要ない』で選ぶ
データを活かし経営戦略などにつなげていきたいという方はERPがおすすめです。
ビッグデータなどを扱い、利益につなげていくためには、情報を効率よく収集して分析できる環境が必要になります。
このような環境を構築するためには、ERPの存在が欠かせません。
ERPは企業の中にある散在されたデータを1つにまとめて一元管理できるようにサポートしてくれるシステムです。
広範囲の情報を扱いやすく、経営状態においても俯瞰的に把握・分析することができます。
顧客データに限らず、企業が保有するデータを1箇所に集めて管理したいという方はERPを選択するのがおすすめです。
『経営を重視するorしない』で判断する
経営に重点を置いたシステムの運用を検討している企業は、ERPが好ましいです。
ERPは基幹業務を統合することが目的になるため、経営状態の見える化を実現することができます。
これによってスピーディな経営判断や意思決定を促進することができるため、経営に対して万全なサポートを受けられるでしょう。
意思決定や経営判断を加速させたい、柔軟に対応できる経営体制を構築したいという企業はERPの導入をおすすめします。
『社内全体のセキュリティ向上or顧客情報漏洩の防止』で選択する
社内全体のセキュリティ強化を図りたい企業はERP、顧客情報に限定したセキュリティ強化はCRMがおすすめです。
ERPを導入すれば、情報を1箇所にまとめることができるので、隅々まで監視が行き届きやすくなります。
そのため、社内全体に対して広範囲のセキュリティ強化を期待できます。
一方、CRMは顧客情報の管理に限定されるのが一般的です。
しかし、セキュリティ強化を目的にする企業は両者を同時に導入することも選択肢に入ってくるでしょう。
両者は連携することができる機能もあるため、同時に導入すれば基幹業務と顧客管理を一元化し、さらにセキュリティ向上も期待することができます。
まとめ
今回は、ERPとCRMの違いについて詳しく解説しました。
ERPは統合基幹業務システム、CRMは顧客管理システムを意味し、両者は業務範囲や役割で大きな違いがあります。
そのため、両者をわけて考えるのが好ましいです。
違いを把握してどちらが自社にふさわしいシステムなのか理解できたという担当者もいるのではないでしょうか。
もし、ERPの導入を検討しているなら下記の記事がおすすめです。
おすすめのERP製品を比較しながら詳しく解説していますので、興味のある方はぜひ参考にしてください。