「BCP策定ってなに?」
「BCP策定作成の流れを知りたい!」
近年では感染症や自然災害などの影響によって、さまざまな事業者が影響を受けています。
その中でも特に苦労しているのが、医療現場や介護業界です。
これらの業務は、感染症や自然災害が発生した状況でも停止することができず、むしろこうした状況でも事業を継続し続けなければなりません。
そこで、このような状況にも対応できるように、介護事業者に対してはBCP策定が義務化されることとなりました。
今回は、そもそもBCPとは何かについて説明し、対策方法などについても詳しく紹介します。
目次
そもそもBCPとは?
BCPとは、事業継続計画のことを指します。
具体的には感染症の蔓延、自然災害など不足の事態が発生したとしても業務を中断させない、
または早期復旧をするための方針や体制などを示した計画のことです。
事前に計画を立てておくことによって、不足の事態にも対応しやすい状況を作ることが可能になります。
特に近年では新型コロナウイルスの影響もあり、BCPの重要性が注目されているのです。
BCMとの違いは?
BCPと近い関係にあるのがBCMとなり、これは事業を継続するための予算や資源の確保などを言います。
つまり、BCPを実現するためにどのような運用を行っていくのかがBCMとなり、2つの関係性はつながっていると言えるでしょう。
有事の際にも対応できるようにするためには、まず土台となるBCPが大切となるので、この部分の策定を最初に取り組むことが大切です。
防災計画との違いは?
防災計画は、主に自然災害などの非常事態が発生した場合に、利用者や職員の命を守るために計画するものです。
あくまでも命を守るための行動であるため、事業継続が目的であるBCPとは意味が異なります。
また、防災であることから、感染症などは当てはまりません。
防災計画も確かに大切ですが同じ意味ではないため、
防災計画がしっかりとしているから他の対策はしなくてもいいとならないように注意しましょう。
介護事業ではBCP策定が義務化に!
BCP策定はあくまでも任意ではと思われている事業者も多いかもしれません。
しかし、2024年から介護事業におけるBCP策定が本格的に義務化となります。
つまり、必ず事業継続のための計画を立てておくことが義務となるため、今のうちから対策をしなければなりません。
守らなかった場合の罰則とは?
厚生労働省が発表した「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」では、具体的に2024年から義務化が始まると記載されています。
そして、経過措置期間は3年間となっていますが、万が一この期間以降も対策をしなければどのような罰則を受けるのでしょうか。
現時点では具体的な罰則は決められておらず、今後のことは未定の状態となっています。
万が一罰則が設けられなかったとしても、BCP策定を行っていない事業者となれば利用者も不安抱えるでしょう。
安心してサービスを利用してもらうためにも、できる限り今のうちから対策しておくことが大切です。
介護事業に影響を与えることが予想される被害事例
介護事業では、主に災害時に業務への影響を受けることが多くなります。
ここでは具体的に影響を与える被害事例について紹介するので参考にしてみてください。
- 自然災害
- 感染症
- 戦争やテロ
- サプライチェーンの途絶
自然災害
身近なところで言えば台風や豪雨などの影響によって、停電が発生するケースがあります。
高齢者は自力で歩けない方も多いことから、停電が発生すると介護施設をいつものように利用することができなくなります。
例えば、エレベーターが動かせないなどの状況になれば、車椅子の利用者が移動できないなどのリスクもあります。
また、夏場であればエアコンがストップしてしまい、室内温度が上昇することで熱中症のリスクが発生することもあるのです。
これらの状況は比較的頻繁に発生する地域などもあるため、被害が出る前に対策しておくことが大切になります。
感染症
感染症はまさに今がその状態と言えるでしょう。
実際に介護施設では大規模なクラスターが発生するケースも多く見受けられ、ニュースでも度々話題となっていました。
また、新型コロナウイルスの場合は、高齢者の重症リスクが高くなることも報告されており、感染を防ぐための対策が必要不可欠となります。
感染症は蔓延するまでのスピードが早く、特に感染力が強いウイルスに関しては事前の対策が必要です。
こうした状況の中でも業務を継続するための計画は、今後のためにも具体的に決めておくことが大切でしょう。
戦争やテロ
経済状況の悪化などが理由で起こりやすいと言われているのが戦争やテロです。
日本では無縁の話のようにも思えますが、今後100%起こらないとは言い切れません。
実際に世界では現在でも戦争が起きており、このような状況でも医療現場や介護現場では患者や利用者を守るための業務を行っています。
このような事態でも介護士や利用者を守るためには、必ずBCPが必要です。
始まってしまってからでは遅いため、できる限り義務化を待たずに準備を進めたほうがいいでしょう。
サプライチェーンの途絶
自然災害や感染症、戦争やテロで発生しやすいと言われているのがサプライチェーンの途絶です。
例えば介護現場では、利用者に提供する食材の調達ができなくなる可能性もあります。
特に地方では食料調達まで時間がかかるケースもあるため、リスクが高い地域の施設に関してはサプライチェーンの途絶が起きないように対策を練る必要があるでしょう。
BCP策定のメリットは?
BCP策定のメリットは、大きく分けると4つあげることができます。
なぜ大切なのかを理解するためにもチェックしておきたいポイントなので、参考にしてみてください。
- 被害を最小限に抑えることができる
- 信用できる介護施設として認識してもらえる
- 補助金や助成金の対象になる
- ワクチン接種を優先的に受けられる
BCP策定のメリット1
被害を最小限に抑えることができる
緊急時に行うべき対策を計画し、職員に共有することができれば、介護施設や利用者、職員の被害を最小限に抑えられるでしょう。
理由としては、一人ひとりが緊急時にやるべきことが明確になるからです。
万が一のときでも何をやらなければならないのかを理解しているため、スムーズに行動を起こすことができるでしょう。
被害を最小限に抑えられれば事業の継続もしやすくなるため、必ず計画を立てておくことが大切です。
しかし、計画を立てるだけではスムーズな行動は難しいため、策定後は実践的な訓練なども取り入れたほうがいいでしょう。
BCP策定のメリット2
信用できる介護施設として認識してもらえる
介護事業は、安全配慮義務の責任を背負っている仕事です。
万が一緊急時の対策を何も取っていなかったとなると、事業者側の責任となります。
また、介護は利用者がいなければ事業を継続することができません。
利用者としても安全で快適に過ごせる施設を選びたいと思っているため、万が一の事態に備えていないとなると誰も好んで選ばないでしょう。
しかし、事前にBCPを策定し、対応する内容が具体的になっていれば利用者やその家族からしても安心です。
信用できる施設として認識してもらえるため、対策をすることはとても重要なことだとわかります。
BCP策定のメリット3
補助金や助成金の対象になる
補助金や助成金は、国が行っているものから各地方自治体が行っているものまであります。
BCPの義務化に向けて補助金や助成金を用意しているところも多いため、事業者としては負担なく物品や設備を導入できるといったメリットがあります。
実際に対策のために用意しなければならない物品や設備は多いため、コストの面で悩んでいる事業者も多いでしょう。
こういったケースでも補助金や助成金の利用で負担なく始められるのは大きなメリットです。
BCP策定のメリット4
ワクチン接種を優先的に受けられる
感染症対策の部分になりますが、BCP策定を行っていればワクチン接種を優先的に受けられるメリットもあります。
万が一策定を行っていないと、ワクチン接種は後回しとなる可能性が高いです。
特に新型コロナウイルスなど今までに人々が経験したことのない感染症は、現時点でワクチン接種が重要と言われています。
そのような中、なかなか摂取ができないとなれば、利用者からの不満も漏れることとなるでしょう。
最悪の場合は利用者が別の施設へ入居するなどの事態が発生する恐れもあるため、必ず事前に対策をしておく必要があるのです。
BCP策定のデメリットは?
- BCP策定にコストがかかる
- セキュリティにコストがかかる
BCP策定のデメリット1
BCP策定にコストがかかる
BCPを策定する場合、さまざまなコストがかかります。
例えば、人件費、コンサルティング費用、時間などが挙げられます。
また、BCP対策の内容次第ではさらにコストがかかる場合があります。
BCPを策定する過程で発生したコストを必要以上に削るのはよくありませんが、直接的な利益とは結びつきにくいコストなので、十分にBCPを検討しながら策定しましょう。
BCP策定のデメリット2
BCP通りに計画が進まない場合がある
BCPは災害後の復旧を迅速にするために重要なものです。
しかし、BCPは予想の範囲内の出来事には効果を発揮しますが、予想を遥かに上回っていたり、BCPにない事態が起こった場合は機能しません。
また、実現不可能な事態への対処法を予測していたり、条件に合っていないBCPが策定されていた場合も、BCP通りに計画が進まない原因となります。
定期的な見直しや修正を加え、より現実の状況に則したBCPを策定できるようにしましょう。
BCPの対策をしないリスクとは
義務化とは言え、罰則が設けられていないとなると対策をしなくてもいいと考える事業者も出てくるでしょう。
しかし、義務化が始まれば対策をしていない事業者に与えるリスクは大きいでしょう。
具体的にここでは事業者にとってリスクが大きくなる理由を紹介します。
- 利用者が減る
- 取引先との契約がストップする
- 介護報酬の減算
BCP対策をしないリスク1
利用者が減る
先程も少し紹介しましたが、安全が確保されていない、災害に備えた対策をしていない施設への入居は、多くの高齢者が拒否するでしょう。
なかなか利用者が増えない、むしろ減っていしまうことによって逆に事業を継続することができなくなる可能性もあります。
利用者が入居してくれることで利益が出る仕組みである業界なので、利用者が安全に生活できる環境を提供することは必要不可欠です。
利用者が減ってしまっては元も子もないなので、対策をしないほうがリスクと言えるでしょう。
BCP対策をしないリスク2
取引先との契約がストップする
義務となっている内容を守れていない事業者と契約をすることは、企業にとってもリスクがあると判断されてしまいます。
実際に利用者との契約だけではなく、介護の現場では幅広い企業が関わっています。
取引先の企業が契約を解除したり、契約をしてくれないとなってしまった場合は事業を継続していくことも難しくなります。
信用できる施設であることを証明するためにも、必ずルールは守ることが大切なのです。
BCP対策をしないリスク3
介護報酬の減算
厚生労働省の「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」では、介護報酬の引き上げが決定しています。
しかし、その中には感染対策への評価も含まれており、つまりBCPやBCMを実施していなければ報酬が引き上がることはありません。
介護の現場は、そもそも業務自体がハードであり、体力の消耗も激しくなります。
ハード業務でありながら報酬は低いとなると、職員の離職につながる可能性も高いでしょう。
実際に業務内容が同じなら給料を比較して就職先を決める方も多いです。
そのため、人材不足で手が回らないとならないためにも、必ず対策はしておいたほうがいいでしょう。
介護事業者のBCP対策の特徴とは
ここでは介護事業者におけるBCP対策の特徴について紹介します。
他業種との違いや基本的な考え方をここでは紹介するので、参考にしてみてください。
- 利用者が減る
- 取引先との契約がストップする
- 介護報酬の減算
介護施設と他業種の対策の違い
介護施設での業務と他業種との違いについて大きな違いとしてあげられるのが、一般的な事業に比べて事業を継続する責任が重いことです。
つまり、介護施設や職員がいなくなると日常生活を送れなくなる人たちが増えるとも言えるでしょう。
このような内容を踏まえて介護施設と他業種の違いは、下記の内容が大きく異なります。
- 介護事業におけるBCP対策は「命の危険に直接的に関わる部分」であること
- 利用者やその家族が日常生活を送るうえで欠かせない業務であること
上記の2点は他業種にはない部分となり、これらの責任の問題も考えながら計画を立てなければなりません。
BCP対策の基本的な考え方としては、下記で紹介します。
BCP対策の基本的な考え方【サービスを中断させない】
介護事業では、自然災害や感染症などの問題が発生しても、サービスを中断させないための対策を考える必要があります。
緊急時でも対応するためには、まず資源を守らなければなりません。
具体的に介護サービスに必要とされている資源は下記のとおりです。
- 職員
- 建物
- 資材
- 電気やガス、水道などのライフライン
上記の資源をいかにして守るかが対策のカギとなるため、しっかりと定めておくことが大切でしょう。
BCP対策の基本的な考え方【中断した業務は速やかに復旧させる】
緊急時では、必ずしも介護サービスを継続できるとは限りません。
中断せざるを得ないケースも出てきますが、このような事態をすぐに解消するための対策について考えておく必要があります。
すぐに復旧させるためには、まず資源を補うことが大切でしょう。
例えば、人手不足であれば外部の職員を手配するよう依頼しておくことや、停電のリスクに備えて非常電源を使用するなど、具体的に決めておく必要があります。
それでも通常業務を進めることができない状況下では、最も優先すべきことに取り組むなど対応できることから始められるように計画を立てましょう。
緊急時は必ずしも計画どおりとは行きませんが、事前に決めておくことでスムーズな対応にもつながるので、細かく記載しておくことが大切です。
BCPを作成に大切な5つのポイント
BCPを実際に作成するとなると、何から始めるべきかよくわからない方も多いでしょう。
ここでは作成するにあたって、特に考えておきたい5つのポイントについて紹介します。
- 役割分担と情報共有
- 感染症では感染者が出た場合の対応
- 職員を確保する
- 優先すべき業務を決めておく
- 有事に備えた研修や訓練の実施
BCP作成ポイント1
役割分担と情報共有
特に災害が発生したケースでは、役割分担と情報共有が大切と言われています。
この2つが決まっていないと緊急事態でスムーズに対応することはできません。
まず重要となるのが、誰が何をするのかを具体的に決めておくことです。
役割分担を正確に決めていれば、万が一のときでもスムーズな対応が可能になります。
また、被害を最小限に抑えるためには、情報共有も大切です。
誰に何を共有する必要があるのか明確にしておくことで、スムーズに伝達することができるでしょう。
役割分担と情報共有は初期段階で特に大切な業務なので、細かくBCPを作成し、職員への共有を忘れないようにしましょう。
BCP作成ポイント2
感染症では感染者が出た場合の対応
感染症のケースでは、万が一利用者が感染した場合の対応方法についても考えなければなりません。
介護現場では、基本的に感染者が出てもサービスを停止することはできず、業務を行う必要があります。
従業員を感染させないための対策や、利用者の体調管理などサービスを安全に継続するための方法を事前に考えましょう。
感染症では対策が命となり、しっかりとできていればクラスターの発生率も低く抑えることが可能になります。
BCP作成ポイント3
職員を確保する
介護の現場では、そもそも職員不足が課題となっています。
緊急時はその場にいる職員全員が動ければ問題ないかもしれませんが、自然災害ではケガをして動けなくなるケースもあります。
人手不足が簡単に起きやすい現場でもあるため、あらかじめ確保するための方法を検討しましょう。
例えば同じ系列の施設から人員を確保することや、事前に他の法人と連携しておくことも大切です。
人手不足となってから考えていては遅いことなので、BCP作成時には職員の確保の部分も盛り込みましょう。
BCP作成ポイント4
優先すべき業務を決めておく
職員の手配を迅速に行うことができ、通常の業務を行うことができれば問題ありませんが、緊急時は思い通りに行かないことも多いです。
このようなケースにも備えられるように、優先すべき業務は決めておきましょう。
例えば、雑務は後回しにして利用者の体調管理に徹するなど、やるべきことと後でもできる業務を決めておくことが大切です。
最優先業務を決めておくことで、職員の負担も軽減できますし、最悪の事態も回避することが可能になります。
BCP作成ポイント5
有事に備えた研修や訓練の実施
BCPを策定し、細かな内容まで決めていたとしてもそれを実践できなければ意味がありません。
職員へ共有することはもちろんのこと、緊急時に備えた研修や訓練は必要不可欠でしょう。
研修や訓練を実施することによって、頭ではなく感覚的に覚えられるようになります。
よりスムーズに対応できる可能性が高まるため、ただ単に書類を読むのではなく、実戦形式の訓練や研修が大切でしょう。
日頃から研修や訓練を行っている施設では、BCP策定時に今の内容で問題ないか確認し、問題があれば見直すことも重要です。
自然災害や感染症でBCPを作成する流れ
BCP策定において、検討すべき事項は幅広くあげられます。
その中でも介護事業において直接的に関係する内容としては、自然災害や感染症です。
ここでは2つの項目に関して、BCPを作成する際の流れを具体的に紹介します。
自然災害に対応するBCP作成の流れ
厚生労働省の公式サイトには、「自然災害発生時の業務継続ガイドライン」があります。
基本的にはこれらの流れに沿って作成すれば問題ありません。
いくつか項目がありますが、その中でも重要になるのが下記の5項目です。
- 総論
- 平常時の対応
- 緊急時の対応
- 他施設との連携
- 地域との連携
上記の項目に分類され、それぞれの項目で何をすべきか検討する必要があります。
総論
総論は、簡単にまとめると自然災害が発生する前に検討すべき項目です。
例えば自然災害が発生した際に起こりうるリスクや、優先業務の検討、研修や訓練の見直しなどがあげられます。
平常時の対応
平常時の対応は、主に自然災害で起こりうるライフラインの故障、衛生面の対応、必需品の備蓄などの問題に対し、対策を考えることです。
例えば停電に備えた非常電源の導入など、あらゆる対策を考えることが必要になります。
緊急時の対応
緊急時の対応としては、主に対応体制や対応拠点、安否確認、職員参集基準などを決めます。
また、継続して業務を行うための復旧対応などについても考えます。
そのほかにも平常時と緊急時の対応は異なるため、どの状況で緊急時の対応を行うのか決めておくことも大切でしょう。
他施設・地域との連携
自然災害時には、予期せぬ出来事が頻発します。
必ず人と人との手助けが必要になるため、日頃から他施設や地域との連携を取っておくことが大切です。
連携対応としては、入所者や利用者情報の整理をしたり、共同訓練などを実施して連携を行いましょう。
感染症に対するBCP作成の流れ
現時点でも介護施設で感染症によるクラスターが発生しており、最も重要になるのがBCPです。
厚生労働省には「新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」もあるため、
感染症の対策はガイドラインに沿って作成することが大切になります。
感染症のケースでは、主に下記の手順でBCPを作成するといいでしょう。
- 平常時の対応
- 感染疑い者の発生
- 初動対応
- 感染拡大防止体制の確立
平常時の対応
平常時の対応では、体制構築や整備、感染防止に向けた取り組み、防護具や消毒液など備蓄品の確保を優先的に行います。
主に施設から感染者が出る前の段階で準備しておく必要があるため、感染リスクに備えてしっかりと準備することが大切です。
感染疑い者の発生
ここでは主に、感染疑いを早期に発見するための対応となります。
具体的には利用者や職員の体調確認となりますが、下記の症状が出た場合に初動対応を行うなど事前に決めておきます。
- 息苦しさ
- 倦怠感
- 発熱している
- 咳などの風邪の症状が見られる
- いつもより元気がない・様子が違う
- 職員の健康状態確認
上記の項目のように、事前にチェックすべき項目を作成しておくことで、感染疑い者を早期に発見できます。
早期発見はクラスター防止にもつながる可能性があるため、事前に準備しておくことが大切です。
初動対応
利用者や職員の体調に異常が見られた場合、初動対応として関係者への連絡を行います。
具体的には管理者、医療機関、事業所内、家族への報告をしましょう。
また、医療機関や保健所によるPCR検査なども初動対応として含まれます。
初動対応が遅れることは感染拡大のリスクも高まってしまうため、具体的に何を行うか決めておくことが大切です。
感染拡大防止体制の確立
感染拡大防止体制の確立では、主に下記の内容を作成しましょう。
- 保健所との連携
- 濃厚接触者への対応
- 職員の確保
- 防護具・消毒液等の確保
- 情報共有
- 業務内容の調整
- 長時間労働・メンタルケアへの対応
- 情報発信
上記の内容について細かく決める必要があります。
また、介護施設には入所系、通所系、訪問系の3つで対応すべき内容が変わることもあります。
それぞれの業務の特徴も考えながらBCP策定を行うことが大切です。
参考:介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修
介護施設によるBCP策定の事例
ここでは、実際に介護施設で行われたBCP策定の事例を紹介します。
どのような対策を実施しているのか具体例を交えながら見ていきましょう。
東日本大震災の教訓を活かしたBCPを策定
東日本大震災では、エコノミークラス症候群や避難所での生活による体調不良の悪化などが原因で、災害関連死として認定されたケースが多々あります。
これらの教訓を活かして災害時でも活用できる簡易ベッドの確保や、分散避難などの取り組みを行っている施設も増えています。
コロナ対策の事例
東日本大震災を経験した施設では、コロナ対策としてもその経験を有効活用しています。
例えば、簡易ベッドや間仕切りを用意することは、床ずれ防止やプライバシー保護としても役立ちます。
また、入院先の病院が見つからないケースや、濃厚接触者の避難所がないケースでは、旅館やホテルと独自で連携し、スペースを確保してもらえるよう交渉している介護施設も存在しています。
特にコロナ対策は現在も必要不可欠となるため、多くの施設で早急に対応が進められています。
BCP義務化に向けた対策は?
BCP策定義務化に向けた対策は、専門家の活用やツールやシステムなどの活用がおすすめです。
BCP策定に強いコンサルタントについて知りたい方は、下記でも詳しく紹介しているので併せてご覧ください。
また、ここでは策定に向けた具体的な対策方法を紹介するので参考にしてみてください。
- 外部コンサルタントへの依頼を検討する
- 行政書士に依頼する
- BCP対策におすすめの製品やシステムの活用
外部コンサルタントへの依頼を検討する
BCPの策定には、ガイドラインを参考にしながら作成することも可能です。
しかし、手間がかかりますし、知識がなければ正確で的確なBCP策定を行うことは難しいでしょう。
コンサルタントなら、策定に強い会社なども多く存在しており、任せることで代行してもらうことが可能です。
介護業界は人手不足が大きな問題となっており、書類の作成に時間をかけられる人員を確保していない場合も多いでしょう。
義務化に向けても時間がないため、手間をかけたくないなら外部コンサルタントへの依頼を検討しましょう。
行政書士に依頼する
行政書士によっては対応の可否が異なりますが、依頼を受け付けているところでは対応してくれるでしょう。
費用は相場で30万円〜50万円ほどと言われており、最大の特徴は法務に強いことです。
実際にBCP策定が正確に行われておらず、法定で争うといった場面も見受けられます。
そのため、裁判に発展しないためにも法務に強い行政書士への依頼はおすすめと言えます。
しかし、コンサルタントとは異なり、システム面は弱い傾向にありますので、
システム化も目指すならコンサルタントへの依頼がおすすめでしょう。
BCP対策におすすめの製品やシステムの活用
自然災害や感染症などあらゆる非常事態に対応するためには、目的に合わせて製品やシステムの導入を検討しましょう。
介護業界ではさまざまな対策が行われていますが、その中でも導入されているのが下記の3つです。
- 安否確認システム
- 非常用電源
- データバックアップサービス
安否確認システム
安否確認システムは、災害時に職員の安否を確認できるシステムです。
非常事態発生時は、特に人手不足の介護業界では応援などが必要になります。
また、職員の安全を第一に考えることも大切なので、スムーズに確認できる安否確認システムの導入は必須でしょう。
実際に介護業界以外でも導入している企業が多いので、万が一に備えて導入することをおすすめします。
非常用電源
非常用電源を導入することによって、災害時に起こる停電などのリスクに備えることができます。
日本の気候は夏は暑く、冬は寒いといった特徴があり、どちらも冷暖房機器は必要不可欠です。
もし停電してしまったらこれらの設備はすべて使用することができず、利用者の体調が悪化するリスクも考えられます。
このような場面で非常用電源があれば電力を供給することが可能なので、重要な役割を担ってくれます。
できれば導入しておきたい設備となるため、特に介護施設では導入について検討してみてください。
データバックアップサービス
データバックアップサービスは、外部のクラウドサービスへデータを保管するシステムです。
自然災害などで万が一すべてのPCが破損してもデータが消えないメリットがあるため、重要なデータを守るために便利なサービスです。
バックアップも自動で行ってくれるメリットもあるため、できれば導入を検討したほうがいいでしょう。
まとめ
今回は介護業界におけるBCP策定について紹介しました。
特に介護の現場では2024年から義務化が始まるため、今のうちから対策をしておかなければなりません。
日本では感染症や自然災害における被害が多いため、このような状況でも業務を継続するためにはBCPが必要不可欠です。
対策方法もいくつかあるので、紹介した内容も参考にしながら策定してみてください。