自然災害や感染症、訴訟の提起なども含め、さまざまなリスクをはらむ現代において、事業を安全に営むためにはリスクマネジメントが欠かせません。
本記事では、知っておきたいリスクマネジメントの考え方や企業に関わるリスク、リスクマネジメントを構築するためのプロセスなどを解説します。
これからリスクマネジメントやBCPに取り組む方は、参考にしてください。
目次
リスクマネジメントとは
リスクマネジメントとは、事業において想定されるリスクを把握し、その影響を事前に回避・もしくは低減するための対策を講じることです。
自然災害だけでなく人為的なミスや訴訟の提起など、企業におけるリスクはさまざまです。
リスクマネジメントは事業の存続や経営目標の達成のために不可欠な取り組みであり、リスクマネジメントの重要性は年々高まっています。
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リスクマネジメントは2種類に分類できる
リスクマネジメントは、大きく2つに分類できます。
損失のみの「純粋リスク」と、損失を受けることもあれば利益をもたらすこともある「投機的リスク」の2種類です。
マイナスのみの純粋リスク
マイナスのみの純粋リスクは、偶発的な事故や人為的なミスにより発生します。
具体的には以下のものが挙げられます。
- 自然災害
- 事故や詐欺
- 経営者・従業員の死亡
- 法的賠償責任・製造物責任
純粋リスクに関しては、損害保険でカバーされるものが多くなっています。
プラスにもなる投機的リスク
プラスにもマイナスにもなり得る投機的リスクは、政治的・経済的変動といった環境の変化に伴うリスクです。
具体的には、以下のものが挙げられます。
- 景気、為替、金利の変動
- 政治的情勢の変動
- 消費者の嗜好の変化
- 税制や条例などの法的規制の変更
純粋リスクのほうが、概念がわかりやすく対策を始めやすいことから、まずは純粋リスクから対処し、リスクマネジメントの成熟度に合わせて範囲を拡げるとよいでしょう。
リスクマネジメントのプロセス
リスクマネジメントを実施するための、4つの手順を紹介します。
プロセスは以下のとおりです。
- リスクの特定
- リスクの分析・評価
- リスクの対応と実施
- 対策の改善
1.リスクの特定
まずは企業を取り巻く環境や、事業内容にどのようなリスクがあるのか把握します。
重視すべき点は、管理部門だけで考えるのではなく、すべての部署の社員に協力をあおぎ、社内を網羅する形でリスクを洗い出すこと。
そして、最初の時点では起きる可能性が低いリスクや影響の小さいリスクも含め、考えられるものをすべて列挙することです。
有限会社責任監査法人トーマツでは、リスクマネジメントにおける調査結果のなかで、企業が注目しているリスクのランキングを公表しています。
2022年に公開されたランキングでは、上位3つは以下のものでした。
- 1位…異常気象、大規模な自然災害
- 2位…人材流出、人材獲得の困難による人材不足
- 3位…サイバー攻撃・ウイルス感染等による情報漏えい
※参照元 デロイト トーマツ グループ:『企業のリスクマネジメントおよびクライシスマネジメント 実態調査 2021年版』
こちらのレポートでは、他にもさまざまなリスクが列挙されています。
リスクの洗い出しの際には、こういった専門家が公表している情報も参考にするとよいでしょう。
2.リスクの分析・評価
リスクをもれなく列挙したら、それぞれ分析・評価をして、影響度と発生頻度を定めましょう。
縦軸を「発生確率」、横軸を「影響度」としたマトリクス表に各リスクを並べていくことで、リスクの重要度が可視化でき、正しい優先順位をつけられます。
ただし、リスクの影響度は小さいものの、発生確率が高いリスクには注意が必要です。
軽微な事故や災害も、処理には時間や人手がかかり、都度人件費が流出するからです。
また、影響の大きさは金銭的な基準だけでは算定できません。
従業員の生命・安全に関わるケースや、企業のイメージを損ねる場合もあるので、慎重に判断しましょう。
すべてのリスクに等しく対策を練られればよいですが、経営資源は限られているので非現実的です。
重大なリスクに適切に対応するには、事前の評価・分析による優先順位づけが必要です。
3.リスクの対策と実施
優先順位が高いと判断したリスクへの、具体的な対策を検討しましょう。
リスク対策は「リスクコントロール」と「リスクファイナンシング」の2つに分けられます。
これらを組み合わせることで、より効果的なリスク対応が図れます。
- 具体例)リスクをはらむ事業からの撤退や、事故の発生頻度を下げるための業務マニュアルの策定など
- 具体例)損失補填のための損害保険への加入、自社が所属する企業グループ内での損失負担など
リスクへの対策が決まれば、着手できるところから実施しましょう。
実施するなかで問題点が発生すれば、都度改善も必要です。
4.対策の改善
リスクマネジメントに取り組み、リスク対策マニュアルを作成しただけではまだまだ不十分です。
企業を取り巻く環境やリスクは、年月が経つにつれて変化します。
策定したリスク対策マニュアルが風化しないように、継続的な検証・改善を忘れないようにしましょう。
また、マニュアルで定めたリスクマネジメント活動が、十分に実施されていることの定期的な確認も必要です。
リスクマネジメントと危機管理(クライシスマネジメント)の違い
リスクマネジメントと混同されがちな言葉に、危機管理(クライシスマネジメント)があります。
リスクマネジメントは、危機の回避・被害軽減を目的とした事前の予防策であるのに対し、危機管理(クライシスマネジメント)は危機が起きた後の対処に重点を置いています。
事業を危機から守るためには、リスクマネジメント・危機管理(クライシスマネジメント)の両面からアプローチすることを意識しましょう。
介護・福祉業界ではますますリスクマネジメントが重要視されている
介護・福祉施設において、リスクマネジメントの重要性はますます増しています。
理由としては、施設内の介護事故は利用者の生命の安全に関わったり、利用者の家族・地域の住民からの信頼を大きく損ね、訴訟に発展したりするケースもあるからです。
介護事故を防ぐためにも、上記のようなプロセスでリスクマネジメントを構築しましょう。
- 利用者や施設内の情報を収集する
- 起こりうる事故(リスク)をもれなく把握する
- リスクへの対応策や、対策するための仕組みを作る
- 仕組みが機能しているか定期的に見直し・改善を行う
さまざまなリスクをはらむ現代では、どのような業界でもリスクマネジメントは不可欠です。
プロセスに沿って、事業を守るためのマネジメントを徹底するように心がけましょう。
BCP対策でリスクマネジメントをさらに強化
BCPを策定することで、企業のリスクマネジメントはより強化されます。
BCPは不測の事態が発生した際にも、事業の継続・早期の復旧をするために策定する計画のことです。
緊急事態の発生時にBCPの計画を遂行できれば、緊急時の被害や事業停止期間を抑えられます。
さらには、従業員や従業員の家族を守り、取引先からの信頼を得ることにもつながります。
リスクマネジメントをより強固なものにするためにも、BCPの策定を検討しましょう。
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まとめ
リスクマネジメントは現代において、事業を安全に継続していくためには不可欠な取り組みです。
ぜひこの記事を参考に、自社のリスクについてあらためて考え、見直すきっかけにしてください。