「マーケティングが大切なのはわかっているけど、同じような用語がたくさんあってわかりにくい」
「マーケティングの一体どこから手をつけたらいいかわからない」
今回は、マーケティング戦略の中で重要な役割をもつマーケティングミックス4P について優しく解説し、そのような声にお応えします。
どんなに素晴らしい商材を作っても、売り方を間違えると全く売れません。
顧客まで届かないのです。
マーケティングミックスを提唱したのは、ハーバードビジネススクールの教授であるニール・ボーデン氏です。
ボーデン氏は、製品のパッケージや値段、ブランディング、市場、広告の量や質などが重要だと述べています。
マーケティングミックスとは、ビジネスに関わる様々なツールを組み合わせて具体的な戦略を練り、商品を選んでもらいやすい環境を作ることです。
様々な複数の要素をミックスして考えていくことから「マーケティングミックス」と呼ばれ、マーケティング全体の流れの中では「実行戦略」とも言われています。
マーケティングミックス4Pを正しく理解して、自社製品とライバル企業の製品との差別化をはかりましょう。
目次
マーケティングミックス4Pとは
ニール・ボーデン氏の提唱から10年後に発明されたのが、エドモンド・ジェローム・マッカーシー氏による「4P分析」です。
最近では、マーケティングミックスと言えば、「4P分析」のことを指すことが多いようですね。
「4P分析」とは、以下の4つの言葉の頭文字を取ったものです。
価格(Price)
プロモーション(Promotion)
流通(Place)
この4つの観点から、自社の製品やサービスが顧客のニーズに添った魅力ある製品となっているのかを考えます。
この4つの構成要素を埋めるだけで、マーケティングミックスが自然に出来上がっているという優秀なツールです。
それぞれ詳しく解説します。
製品(Product)
マーケティングミックスの中でも特に重要な要素が製品戦略です。
顧客の購買意欲を高めるためには、自社の商品・サービスの価値を高め、ブランド化していく必要があります。
そのために、製品の特徴やコンセプトを明確にし、製品のパッケージ、顧客への保証、サポート体制、またそれを行うための技術や方法を具体的に設計していきます。
価格(Price)
商品やサービスの価格設定を行います。
まず、生産コストとの兼ね合いを考え、損益分岐点を把握。
そして、設定した価格が、消費者にとって適正価格か、また競合他社の価格と比較して妥当かリサーチします。
また、競合他社と差別化するために、製品やサービスに付加価値をつけ価格設定するなどし、競争力を落とさず価格を維持することも大事です。
価格が高いことが「価値が高い」と感じさせる効果もあるので、高級な商品・またはサービスであるということもブランド化に繋がります。
プロモーション(Promotion)
「プロモーション」は顧客に対し、製品の広告・宣伝などを行うことで顧客認知度を高める戦略のことです。
SNS、新聞、雑誌、テレビなど、各メディアを通じた宣伝、また、イベント、店頭POP、ダイレクトメール、直接販売する営業もプロモーション戦略となります。
最近は、ネットでのコンテンツマーケティングも盛んに行われるようになりました。
プロモーションは、企業から一方的に行うのではなく、顧客の反応を見ながら、コミュニケーションを取ることが大切になります。
コミュニケーションを通じて、顧客の購買意欲に訴え、計画外の購入に結びつけます。
これら4Pの視点から、マーケティング戦略が顧客のニーズに合っているのか、メッセージが顧客の心に伝わっているかを考えていきます。
4Pの戦略を顧客視点で見た4Cというフレームワークもあり、近年は4Cから4Pに戦略を落とし込むことが主流となっています。
顧客視点で考えることで、顧客の気持ちに寄り添い、的確にニーズに応えることができます。
流通(Place)
「流通戦略」も大事な構成要素の一つで「チャネル戦略」とも呼ばれています。
製品を顧客のところまで届けるためには、顧客にとっての利便性を考えた場所で製品を売らなくてはいけません。
顧客に必要なサービスを適切な場所で提供できるように考えていきます。
直売、通販、ネットなど販売エリアを選び、最適なチャネルを選ぶことが大切です。
マーケティングミックス4Pをマーケティングの流れの中で活用する
マーケティングミックスは、マーケティング戦略の中でも、具体的な実行戦略を決める重要な役割を持っています。
マーケティング戦略の構築を行うための一連の流れをまとめました。
- マーケティングリサーチ(環境分析)
- セグメンテーション(市場細分化)
- ターゲティング(市場の決定)
- ポジショニング(ブランド化)
- マーケティングミックス(実行戦略)
- 実行と分析
1.マーケティングリサーチ(環境分析)
まずは、市場調査をして、市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の観点から環境分析を行い、自社の製品やサービスが勝負できる市場を探し出します。
これらの頭文字を取って「3C分析」とも呼ばれています。
主観的にならないよう、データや情報から冷静に市場を見つめることが大事です。
2.セグメンテーション(市場細分化)
マーケティングリサーチで探し出した市場の中で、同じニーズのセグメント(単位)の顧客に細かく分けていきます。
「20代〜30代の女性」のような大まかな単位ではなく「20代〜30代の丸の内勤務のOL」のようになるべく具体的に細分します。
3.ターゲティング(市場の決定)
セグメンテーションで細分した単位の中から、自社製品を展開するために最小の資源で最大の利益をもたらす市場を選びます。
このターゲティングの選択により、費用対効果がかなり変わってくるので、慎重に選びましょう。
4.ポジショニング(ブランド化)
ターゲティングした市場の中で、自社の得意な領域を見極め、製品の強みとなる部分を作り出します。
自社製品の強みをブランド化することで、市場内のライバル企業を抑え差別化することができます。
セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の頭文字を取ってSTP分析と呼ばれ、多くの企業がマーケティングの基本戦略としています。
5.マーケティングミックス(実行戦略)
STP分析を実際に戦略に落とし込み、ターゲットに具体的にどのようにアプローチしていくか決めます。
そして、前述の4P、製品、価格、プロモーション、流通をミックスして、最良の組み合わせを作っていきます。
6.実行と分析
4Pを言語化して戦略を実行します。
実行後は分析し、問題があればマーケティング戦略を見直します。
ここでも、これまでのマーケティング戦略を間違っていないものだと主観が入る可能性があるため、客観的な視点から、冷静に分析する必要があります。
マーケティングミックス4Pの具体的な活用事例
マーケティングミックスとは、逆に言えば、製品やサービスの特徴を表しているとも言えます。
販売する側が考えた顧客のニーズを想定した特徴と、顧客のニーズがマッチすると上手くいくということです。
顧客には潜在的なニーズもあるので、徹底的に顧客のニーズを深く調査して分析し、マーケティングミックス4Pを使って、戦略を練ると良いでしょう。
それでは、実際にマーケティングミックスを使って成功した企業の事例をご紹介します。
ライザップ
引用元:https://www.rizap.jp/
製品(Product) | パーソナルトレーニング、食事コントロール |
価格(Price) | 298,000円〜 高めの価格設定で絶対に効果があるイメージ戦略 |
プロモーション(Promotion) | 特徴的な曲と共に強烈なイメージの残るテレビCM |
流通(Place) | 店舗、SNS |
ライザップは「結果にコミットする」という強烈なキャッチフレーズと共にサービスを展開しました。
結果を約束することで、高めの価格設定にもかかわらず、成功した企業の事例です。
製品(Product)
サービスの特徴は、マンツーマンのトレーナーがつき、ダイエット成功のためにパーソナルトレーニングを行うことです。
従来のフィットネスクラブは、トレーニングできる環境と、周辺設備やアメニティを貸し出すというものでした。
しかし、ライザップはダイエットを成功させることに特化し、個別にトレーニングメニューを決め、食事コントロールまでをサービス内容にしました。
価格(Price)
最安でも298,000円と高額なサービス料金を設定しています。
この価格は他のパーソナルトレーニングジムと比べても、高めの設定となっています。
「高額」だからこそ、最も良い結果が得られるという顧客のモチベーションにも繋がっています。
プロモーション(Promotion)
テレビCMなどで、太めの有名人を利用して、劇的に痩せた結果を見せることで、強烈なインパクトを与えています。
ビフォーアフターの体型を比べることで、顧客に対し、絶対に痩せられるという強い信頼感を与えることに成功しました。
流通(Place)
顧客に各店舗に来てもらい、フィットネスを行います。
また、SNSを利用して、食事管理や自宅トレーニングなど、パーソナルトレーナーからアドバイスをもらうことができます。
スタジオアリス
引用元:https://www.studio-alice.co.jp/company/
製品(Product) | 子供に特化した写真撮影、体験型写真館 |
価格(Price) | 3,000円+商品代(プリント、アルバム代など) |
プロモーション(Promotion) | 育児雑誌「ひよこクラブ」に年間を通じて掲載 |
流通(Place) | 店舗、アプリ |
スタジオアリスは、元々、現像や焼き付け、引き伸ばしをする他と同じようなサービスをする普通の写真館でした。
しかし、1992年に「子供」に特化した写真スタジオにしたことで、競合他社と差別化をはかって成功しました。
今では合計510店舗を誇る子供専門の写真館の最大手企業となっています。
製品(Product)
従来の写真館での畏まった家族写真の撮影イメージから、記念日に気軽に撮影できる子供写真スタジオにイメージを一新。
子供の成長を写真に残したいという親のニーズを叶えました。
さまざまな衣装を何着でも無料で借りることができ「記念写真」を購入するまで家族で楽しむことができます。
価格(Price)
衣装を何着来ても、何ポーズでも可能。
ヘアセットまでついて定額3,000円というリーズナブルな価格設定で、小さい子を持つ若い世代の家族が気軽に撮影することができます。
プロモーション(Promotion)
育児雑誌に年間を通して掲載。
さらに、クーポンなどを配布して、ママたちの口コミを誘発するような施策を行なっています。
流通(Place)
小さい子供が集まる大型商業施設内に出店し、わざわざ出向かなくても気軽に来店できるような場所に展開しています。
トイザらスとも連携し、流通経路を上手く確保しています。
マーケティングミックス4PとSTP戦略との整合性が重要
マーケティング戦略は、フレームワーク「STP」戦略を経て、マーケティングミックス4P戦略を策定します。
STPで基本的な方向は決まっていますが、そこに具体的な肉付けをしていくイメージです。
マーケティングミックスの戦略とSTP戦略の内容が相違していると、顧客のニーズに合わない、製品の魅力が伝わらない、価格が高すぎる、販売ルートが顧客にマッチしないなどの問題が発生してしまいます。
そのため、マーケティングミックスを策定するときは、STP戦略との整合性が重要なポイントとなります。
まとめ
マーケティングミックス4Pとは「製品」「価格」「プロモーション」「流通」の4つの観点から、顧客にとって魅力的だと思わせる製品を作り上げることです。
この4つの構成要素を埋めていくことで、簡単に具体的なマーケティング戦略を策定することができます。
そのように作られた戦略は、自社製品を成功に導くことができるはずです。
ただし、市場は常に変化するもの。
マーケティング戦略実行後には、必ず分析を行い、移り変わりの激しい市場に上手くマッチするよう常にブラッシュアップする必要があります。
市場で長く生き残る秘訣は、マーケティングを使って自社製品を「必要としている人」に上手く提供することです。