ファクタリングは、売上金を早期に回収したい時や金融機関とは異なる資金調達の方法として注目されています。
使い方さえ間違えなければ、安全かつスピーディーに売掛金の現金化が可能です。
この記事では、ファクタリングの意味や仕組み、メリット・デメリットについて解説します。
目次
ファクタリングとは
ファクタリング(factoring)とは、売掛金をファクタリング業者などの第三者に売却し、支払い期日よりも早くに現金化できる方法です。
わかりやすく言えば、売掛金を現金化する仕組みとなります。
売掛金とは、商品やサービスを提供したあとに未回収の代金を請求する権利のことです。
売掛金が未回収になるケースは企業間取引(BtoB)で発生することが多いため、スピーディに売掛金する方法としてファクタリングが利用されています。
お金を早期に手に入れるという意味では、「資金調達」の意味合いで使われていることが多く、健全な黒字経営を行うためにも、中小企業や個人事業主でもよく利用されています。
中小企業や個人事業主、フリーランスなどは、規模を問わず自由に仕事ができることがメリットです。
一方、事業が拡大していくにつれて、より多くの資金が必要になったり、お金をなかなか支払ってくれないクライアントや取引先に出会ったりすることがあります。
売掛金として売上代金を回収している場合は、入金が半月や一か月先になることもあるでしょう。
ファクタリングを利用すると、売掛債権が回収不能になったり、不良債権化したりするリスクを減らすことができます。
ファクタリングの意味
ファクタリングは、欧米発の仕組みで、すでに日本にも導入されています。
そして、借入ではなくあくまでも「資金調達」の手段として活用されています。
ファクタリング業者は、期日前の売掛債権から手数料を差し引いた売却代金を支払って買い取るサービスを実施しています。
これにより、売掛金の入金遅れや貸し倒れなどを事前に防ぎ、「資金繰り」を安定化させる大きなメリットがあります。
違法にあたる?
金融庁では、ファクタリングに関する注意喚起がされているため、違法にあたるのではないかと不安に思われている方も多いでしょう。
結論から言うと、ファクタリングは合法なサービスであるため、違法行為にはあたりません。
しかし、近年では新型コロナウイルスの影響によって資金繰りに困る企業も増えているため、
弱みにつけ込んで偽装ファクタリングと呼ばれるやり方が横行しています。
中には借金の契約を結ばせようとするやり方もあるため、このような業者には注意しなければなりません。
融資やローンとの違い
融資やローンは、主に借り入れとなります。
つまり資金調達のために借金をすることとなりますが、ファクタリングは借金ではないことを頭に入れておきましょう。
資産(売掛債権)を保証してもらったり、買い取ってもらう行為となるため、返済の必要はないのです。
また、融資やローンとは異なり保証人や担保なども必要ないため、同じではありません。
売掛金や売掛債権の活用
売掛債権を現金化するにあたり、すぐにお金が入ってくるわけではありませんが、2~3か月後には必ず入金されることがわかっています。
2~3か月も資金を寝かせているようでは、その間次の事業への展開もできませんし、投資にも使えません。
不良債権になりにくい「売上債権」をすぐに活用するためには、売掛金や受取手形などの売上債権を現金化する方法がおすすめです。
売掛金であっても一定の手数料を差し引けば現金と同じ金銭的価値があると法律でも認めているため、ファクタリングが成り立ちます。
売掛債権担保融資(ABL)との違い
売掛債権を担保に融資を行う「売掛債権担保融資(ABL)」は、ファクタリングの仕組みを使っているわけではなく、貸金業に該当する資金調達方法です。
ファクタリングとは仕組みが異なる点に注意してください。
オンラインで申し込みできるサービス事例
中小企業や個人事業主が利用する会計ソフトで有名な「freee」では、オンラインで資金調達のサポートを行っています。
会計ソフトを利用している中で、一般的な金融機関からの借り入れ以外にもファクタリングやABLなどの様々な資金調達手段に関する情報を提供し、比較検討しやすいようになっています。
もちろん、オンラインで即日申し込み、即日融資も可能です。
ファクタリング業者利用の流れ
売掛金が発生するような取引を行っている場合に、ファクタリングが利用できる可能性があります。
ファクタリング業者から必要書類を取り寄せて、利用の申し込みを行います。
もちろん、すでに貸し倒れになっている売掛債権は除きます。
ファクタリング業者の審査では、相手先の信用力や信頼性などを重点的にみています。
申し込みの際には、本人確認書類、売掛金に関する請求書や契約書、決算書、納税証明書などが必要です。
審査に合格すれば、書面で契約を交わし、手数料を差し引いた金額が入金されます。
ファクタリングの種類
ファクタリング会社には、大きく分けると買取型と保証型の2種類が存在しています。
ファクタリングを利用する際のポイントの一つが「買取型」と「保証型」の違いを知ることです。
買取型
買取型は、売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらい、手数料などが差し引かれた現金を受け取ることができます。
企業間取引では、主に納品した後に代金を支払ってもらう仕組みが一般的で、代金を受け取るまでには約1ヶ月から2ヶ月、長くて3ヶ月程度はかかります。
買取型はそこまで待てない企業が活用するケースが多くなっていますが、買取型を選べば通常よりも早く代金を受け取ることができます。
特に材料費や人件費など、資金繰りに困っているときに活用すると便利です。
保証型
保証型は、企業が所有する売掛債権に保険をかけることで、貸し倒れリスクを回避できる方法です。
例えば取引先が倒産してしまったときや、支払いに遅延が発生しているなどのケースに備えて活用されることが増えています。
特に新規で取引を行う企業は、相手の実態があまり把握できないこともあります。
そんなときに保証型を活用すればリスク回避ができるため、万が一問題が発生しても比較的安全に代金を回収することが可能です。
保証型は、買取型と比べて資金調達よりも保険という意味合いが強いため、売掛債権を売却する必要がないのも特徴の一つと言えるでしょう。
買取型ファクタリングの仕組み
最初にファクタリングには、「買取型」と「保証型」の2種類が存在するとご説明しました。
次は、一般的な「買取型」のファクタリングにおいて、「2社間」と「3社間」のファクタリングがあるという点に注目し、どのような違いがあるのかについて解説していきます。
手数料が必要
ファクタリングは無料ではなく所定の手数料がかかります。
あくまでも「売掛先」の信用力が高いか低いかが判断されており、安全性が高い売掛債権は手数料が安くなる仕組みです。
手数料がいくらなのか、何%あるのか、他社とも比較して有利な条件を提示するファクタリング業者を選んでください。
ちなみに2社間ファクタリングの手数料は10~30%、3社間では1~10%が目安となっています。
問題となるのは、取引先を含めた3社間ファクタリングの場合です。
取引先との関係が悪化することもありますので、手数料が安くても利用には慎重になってください。
2社間ファクタリング
債権者と債務者(ファクタリング業者)の2社間限定で完結できるファクタリングのことです。
債務者である取引先や第三者に知られることがなく、スピーディに資金調達ができます。
手数料は少し高くなりますが、一般的なファクタリングの手法です。
3社間ファクタリング
こちらは、債権者と取引先である債務者とファクタリング業者の3社が取引に加わります。
取引先の信用度が高いと手数料も安くなり、買取代金が高くなります。
取引先の信用度が低い場合でも倒産や債務不履行のリスクを回避できます。
その理由は、支払いができなかった場合の回収や取り立てなどの業務が全てファクタリング業者に引き継がれるようになっているからです。
取引先の承認が得られれば現金化も3営業日には可能となっており、3社間ファクタリングを利用したほうがよいケースもあります。
ファクタリングのメリット
ファクタリングのメリットは以下の4つです。
- 業績は関係なく資金を調達できる
- 資金調達の早さ
- 取引先の倒産に備えたリスク回避ができる
- 保証人や担保が必要ない
業績は関係なく資金を調達できる
売掛債権を活用して資金調達をする方法となるため、業績が関係することはありません。
例えば融資の場合は、自社の業績が悪いケースでは審査を通過することはほとんどないと言われています。
理由としては融資したお金が返ってくる可能性が低くなり、リスクが高いと判断されるからです。
ファクタリング会社の活用であれば、取引先の業績さえ問題なければ資金調達が可能なため、
手っ取り早く資金を調達できる点は大きなメリットと言えるでしょう。
資金調達の早さ
資金を調達するスピードが早いのも魅力的な部分の一つです。
融資を行う場合は、審査だけでも数週間以上係るケースが多く、通過したとしても振り込まれるまで時間がかかります。
しかし、ファクタリングであれば、サービスを行う会社によっても異なりますが最短即日で資金調達ができるケースもあるのです。
どこよりも早く現金を回収できるというのは大きなメリットとなるため、近年では活用されることが増えています。
取引先の倒産に備えたリスク回避ができる
基本的に取引先企業が倒産してしまった場合は、現金を回収することができません。
企業にとっては大きな損失となることもありますが、事前にファクタリングを活用していれば、倒産してしまっても現金を回収できます。
例えば保証型などは、主に保険をかけられるような仕組みとなるため、取引先の倒産に備えることが可能です。
うまく活用すれば回収不能になってしまったとなることがないため、安心して取引を行うことができます。
保証人や担保が必要ない
資金調達と言えば、保証人や担保が必要になることが多いでしょう。
特に企業が融資を利用する際には必要となりますが、ファクタリングは借り入れではないため保証人や担保は不要です。
そもそも目的が異なるため、借り入れを必ず回収したい融資と比べると比較的手軽に利用することが可能になります。
ただし、売掛債権がないと申し込むことはできないので注意しましょう。
ファクタリングのデメリット
手数料が発生する
資金調達を行う場合は、どんな方法でも基本的に手数料や利息が発生してしまいます。
ファクタリング会社もサービスを続けるためには利益を得る必要があるため、手数料の部分に関してはしょうがないとも言えそうです。
理解しておきたいポイントとしては、実際よりも受け取れる額が少なることを把握しておきましょう。
また、手数料はどのサービスを利用するかによって変わることもあります。
相場よりも高く設定していないかなど事前に確認しておくことが大切でしょう。
取引先の経営状況によっては回収できないことも
ファクタリング会社を必ずしも利用できるとは限らず、取引先によっては拒否されるケースもあるので注意しましょう。
例えば利用する前の段階で取引先が倒産してしまったなどの状況になると、基本的には活用することができません。
このような状態にならないためにも、取引先の調査は自社でもある程度行ったほうがいいでしょう。
例えば実態がわからない会社との契約は見送るなど、事前にリスク回避をしておくことで回収不能になることはありません。
違法なファクタリングには注意が必要
中小企業や個人事業主などが売掛金の回収や資金調達をスピーディに行うには、ファクタリングの活用が不可欠です。
ファクタリングのメリットやデメリットについてはこれまで解説してきましたが、利用するにあたり、安全性や違法性などの法的な問題についてもしっかりと理解しておくべきです。
違法の恐れがあるファクタリング
ファクタリングを行うには、法律に基づいた取引を行う必要がありますが、
ファクタリングではない会社が貸付と偽ってファクタリング業務を行っていることがありますので、引っかからないようにしてください。
ファクタリングは、ファクタリング業者に債権譲渡されるのではなく、「売買契約」(民法第555条)が適用される取引です。
3社間の場合は、取引先の承諾を得た債権の譲渡です。
民法第466条(債権の譲渡性)と民法第467条(指名債権の譲渡の対抗要件)を法的な根拠としています。
3社間のケースでは債権が譲渡されますが、売掛先への通知や承諾が必要になるため、
上記の2つの項目が法的根拠となり、譲受人がファクタリング業者であるとはっきりします。
悪質なファクタリング業者に要注意
仕組みがわかりにくい性質の取引であることから、手数料という名の高金利の利息を取ったり、
貸金業に該当する恐れがある取引を行っていたりする悪質な業者が存在します。
例えば、労働者の給料を支給日前に現金化する「給与ファクタリング」は貸金業に該当するため、
貸金業未登録のヤミ金融業者に引っかからないようにしてください。
また、ファクタリングは貸金業とは異なります。
必ず「売買契約」や「債権譲渡契約」であることを確認してください。貸金業ではないので、貸付や利息を取ることはできません。
実質、高金利での資金の貸し出しになっていないかを確認し、売掛債権が担保になっていないか、などもチェックしてください。
このような貸金業に該当する取引にご注意ください。
ヤミ金融業者と取引しないこと
貸金業に登録していない業者が、貸付と同様の取引を行っている場合は、ヤミ金融業者の可能性が高く、取引しないようにしましょう。
例えば、先ほどご説明した「給与ファクタリング」や貸付と同じような「事業者向けファクタリング」を利用すると、手数料が高額で逆に資金繰りが悪化し、自己破産や経営破綻に追い込まれる可能性があるからです。
また、期日に支払いされなかった場合に、売掛債権の売主が債権を買い戻したり、資金の支払いをしなければならなかったりする場合も回収リスクがファクタリング業者にはないため、貸金業と同様の契約を結んでいることになりますので注意が必要です。
貸金業者検索方法
貸金業登録業者であるかどうかは簡単に調べることができます。
データベースを利用するなら、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」を利用してください。
また、財務局や都道府県でも最新情報を提供していますので、電話で問い合わせてください。
トラブル時の相談窓口のご紹介
ファクタリングやお金のトラブルが発生した時は、各種相談窓口を利用してください。
・金融庁 金融サービス利用者相談室
・金融庁 多重債務相談窓口
・日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター
ファクタリングを利用する機会が増えてきた理由
中小企業や個人事業主の資金調達方法は、役員からの借り入れ、助成金や補助金の利用など以外では、民間金融機関からの借り入れが最もメジャーです。
民間金融機関からの借り入れのうち、ファクタリングを利用する割合も3割近くになってきており、ファクタリングを新しい資金調達方法として採用する中小企業や個人事業主が意外にも多いことを示しています。
電子債権なら資金化がスピーディで需要増が見込まれる
ファクタリングを利用する機会が増えてきた主な理由としては、
電子債権の登場により「債権の流動化」が進んできているためです。
2008年12月に「電子記録債権法」が施行され、中小企業の資金調達がやりやすくなってきています。
従来の指名債権や手形には、債務者の存在、書類の保管、事務手続きなどが煩雑でコストも高く、流動性も低いことがネックとなっていました。
電子債権に切り替えて、こうした多くの欠点をなくしたため、
ファクタリングが一般企業や個人でも利用しやすくなってきています。
借り入れに代わる資金調達手法として、電子債権の資金化がスピーディに行われるようになれば、
ファクタリングの重要性や需要も大幅に増えるものと考えられます。
中小企業や個人事業主ならスピーディな資金調達が可能
債権の電子化によってファクタリングがスピーディにできるようになった理由は、
債権譲渡の旨を債務者へ通知する対抗要件が、電子記録債権なら「電子記録が対抗要件」になり譲渡ができるからです。
これにより、債務者へ通知することなく電子記録を書き換えて迅速に手続きを進めることができます。
近い将来は、迅速で機動的な資金調達には、ファクタリングが最も適しているという結論になるのかもしれません。
まとめ
電子化が進み、手続きが簡単になってきたファクタリングは、個人事業主や中小企業のスピーディな資金調達手段として高い利用価値があると考えられます。
ファクタリングを利用するにあたり、すでに数多くの代行会社が登場しています。
利用の際には、ファクタリング業者の審査も行われますが、利用する側も様々な特徴のある業者の中から、資金調達や利用目的に応じた優良業者を選ぶようにしましょう。
ネットで完結できる仕組みを活用するほうが安全にファクタリングを利用できます。
事業規模や事業形態、業界などに細かく対応できるファクタリング代行業者を利用して、経営者の頭を悩ませる資金繰りや資金調達のややこしい問題を解決できるようにしておきましょう。