稟議書とは高額備品を購入したり社内の意思決定をしたり、契約をしたりする際に買わされる書類のことです。
稟議書を交わす=上層部の総意を得られたということになります。稟議書は重要な役割を持っているものですが、反対に稟議が通るまでに時間がかかり手間も多いので面倒・できればしたくないと思っている方も多いでしょう。
しかしなぜ稟議書は廃止されないのでしょうか。そこでこの記事では稟議書の重要性や書き方、最短で承認を得るためのポイントを紹介します。
稟議書について詳しく知らない方は参考になるでしょう。
目次
稟議書とは?
稟議書とは上層部から承認を得るための書類です。
「高額備品を購入する」「クライアントとの契約を結ぶ」といった事項は個人の権限だけでは決定できません。そこで登場するのが最初に紹介した稟議書です。
稟議書は別名「起案書」「立案書」とも呼ばれます。稟議書の内容は提案することが書かれており、その後複数の上層部に回覧して承認を得ていく流れです。
しかし全ての会社が具体的に稟議書を作成するわけではなく、会社ごとによって異なります。通常であれば規定の中に「権限規定」として規定化、もしくは決済権限一覧表が会社ごとに定められており、その定めによって稟議書が必要かどうか決まります。
会社にワークフローシステムが導入されている場合は稟議書を作成すればその後は自動で承認権限者の元へデータがいくためあまり意識することがない方も多いでしょう。
稟議書=個人の権限では決められない物事を決定する際に必要な書類と覚えておきましょう。
稟議書は日本特有の企業文化
稟議書は備品の購入やクライアントとの契約を結ぶなどの際に利用されるため、どこの会社でも必要な書類だと思うでしょう。
しかし稟議書は日本企業特有のものであり、スピード重視である海外企業ではあまり使われません。
ですがよく使われる日本企業でも、稟議書は通るまで時間がかかるため面倒と思われているのも事実です。
稟議と決裁の違い
稟議に似たものとして挙げられるのが「決裁」です。決裁は最終的な判断を決裁者1人が下すものであり、一方の稟議とは関係者の承認を得るための手続きです。
一般的な流れは稟議書の申請→承認→決裁です。
しかし場合によっては途中で承認を挟まずに直接決裁をするというパターンもあります。
稟議のメリット・デメリット
稟議書は手続きまでに時間がかかるため、社員からは評判が良くないこともあります。では他のデメリットはあるのでしょうか?
ここでは稟議書のメリット・デメリットについて紹介します。
稟議のメリット
稟議のメリットはさまざまですが、具体的には以下の5つです。
- 内容を把握しやすい
- さまざまな人の意見を踏まえて決められる
- 関係部署が認識をした状態で進められる
- 会議の手間が省ける
それぞれについて詳しく見てみましょう。
内容を把握しやすい
稟議書には取引や案件に関する情報が簡潔に書かれています。
そのため内容が把握しやすく承認者はしっかりと判断が下せるようになるでしょう。
さまざまな人の意見を踏まえて決められる
稟議書はさまざまな人に回さられるため、回覧している家庭で問題点や改善案などそれぞれの人のさまざまな指摘・意見が得られます。
申請の内容はよりブラッシュアップされ、より有意義な意思決定ができるでしょう。
関係部署が認識をした状態で進められる
稟議は通るまでに時間がかかるものです。そのためスピード感を重視している案件ではあまり使われないでしょう。
しかしあらゆる部署を通して承認を得るため、承認が通れば関係部署が稟議を把握した状態で物事を進められます。
会議の手間が省ける
上層部の合意を得るために提案内容をプレゼンと会議を開く必要があるでしょう。
しかし会議は指定の場所に複数の関係者を集めるために、全員のスケジュールを配慮し会議室の確保をしなければなりません。
そこで稟議書を用意すれば関係者の総意を確認できるため、会議は不要となります。
稟議のデメリット
稟議のデメリットは以下の2つです。
・通るまで時間がかかる
・誰の責任になるのか曖昧になる
それぞれについて詳しく見てみましょう。
通るまで時間がかかる
冒頭でも述べたように稟議は通るまでに時間がかかります。稟議書作成の手間、それに伴う修正、承認者不在の際の停滞などによって承認作業が思うように進まないことがあります。
スピード感が重要な事項では適さず、工夫をする必要があるでしょう。
誰の責任になるのか曖昧になる
稟議は複数の関係者が承認が必要となります。そのため一人が責任を負うというよりも、みんなで決めたことという意識になり責任意識が薄くなりやすいです。
さらに承認者は比較的立場が上の方が多いため、責任の追及がしにくいといったケースもあります。
効率よく行いたいのならば稟議書の電子化
稟議書のデメリットは作成まで手間がかかったり、承認まで手間がかかったりすることです。しかし稟議書を電子化してしまえばテンプレートが決まっており、稟議書を印刷する必要もなくなります。
さらに稟議書も自動で承認者へ回覧されるため書類提出の必要もありません。承認の進歩は可視化されるので、どこまで稟議書が承認を得られているのかどこで停滞しているのか分かるようになります。
運用コストなどがかかるものの、稟議書のデメリットを解決できます。さらにペーパーレス化により管理が容易になりコストも削減されますので得られるメリットは大きいでしょう。
稟議書に関する業務を業務効率化をしたいのならば稟議書の電子化は非常に効果的です。
稟議書の書き方について
稟議書の書き方について難しいイメージを抱いている方も多いのではないでしょうか。しかしそれほど難しいことはありません。
稟議書を書く際は2つのポイントを抑えれば大丈夫です。
例文やフォーマットを活用する
稟議書には基本のもの、購買稟議書、広告出稿稟議書、採用稟議書などそれぞれの目的に適したものがあります。
しかし会社ごとによって定められている稟議書があればそちらを使用した方がいいでしょう。
承認者は使い慣れたフォーマットの方がスムーズに進められるはずです。
項目をしっかりと埋める
稟議書の埋めるべき項目は提案内容によってことなります。埋めるべき項目は全て一緒とはならず細かいことは異なりますが、
必要な情報はしっかりと書くようにしておきましょう。どの稟議書でも最低限必要になる項目は以下の4つです。
- タイトル
一体何の用件なのか内容をみただけでわかるようにしましょう。「〇〇の購入について」「〇〇」の予算についてなどひと目でみただけでわかるものが理想です。
- 目的
稟議の目的を明確にしましょう。「取引をするか決めるため」「効率化をするため」など簡潔にするようにしてください。長い分だと何を言いたいのか分からなくなってしまいます。
- 理由
なぜこの目的を達成する必要があるのか、メリットや得られる効果など承認者が納得する内容を書きましょう。また良い面だけではなく、予想される課題に対しての解決策があるとより承認を得やすくなります。
- 使用金額
予算を決めなければ物事は進みません。稟議書の段階では細かいことはわからないかもしれませんが、できるだけ具体的な予算であれば承認を得られやすいでしょう。
稟議書を書く際の抑えておきたいポイント
稟議書を書く際にここで紹介する3つのポイントを押さえておけば、分かりやすい稟議書が書けるでしょう。
稟議書を書く際の押さえておきたいポイントを紹介しますので是非参考にしてくださいね。
内容を簡潔にする
詳しく書いた方が伝わりやすいと思い、長文を書く方もいるでしょう。しかし長文になってしまっては結局何を伝えたいのかがわからなくなってしまいます。
稟議書では冗長表現は避けて、なるべく簡潔にまとめて伝えるようにしましょう。
重要な項目がいくつもある場合はリスト化をして見やすくするのも1つの手です。誰が見ても分かりやすい稟議書を作るように心がけましょう。
分かりやすい表現にする
稟議書は若いやすい表現を使いましょう。無意識で専門用語などを使ってしまうかもしれませんが、専門用語は他の方から見たら馴染みのない言葉かもしれません。
ですので専門用語は控えて誰が読んでも理解できる言葉にしておきましょう。
余分な情報は控える
承認を得るためにデータの提示をいくつもするほうが効果的と考える方もいるでしょう。しかしデータを全て稟議書に盛り込むと何が言いたいのかわからなくなってしまいます。
ですので、データは主役ではなく補強と理解して必要以上に記載しないようにしましょう。
稟議を実施するときは稟議規程を作成しよう
稟議制度で稟議規程を作成しておけば稟議をスムーズに進められます。稟議規程の必要性、記載する内容について紹介します。
稟議規程とは?
稟議規程とは稟議に関する決まり事です。稟議規程には職務権限規程等の中に含めるときと稟議規定のみを抜き出して決める2種類があります。
稟議規程を定めるのは難しい印象がありますが、定めることで意思決定の過程が明確になり業務が円滑になります。
稟議規程の内容
稟議規程の内容は「目的」「定義」「稟議をする上での決まり事」「決算基準」などについて記載をします。
「起案」を行った担当者、回覧する関係者「回議」など稟議の流れで必要となるルール、関係する人物は記載するようにしましょう。
稟議の申請タイミングについて理解しよう
稟議の申請タイミングを知ることで実際に稟議をする際にスムーズに取り組めるでしょう。ここでは売買に関する稟議全体フローについて紹介します。
1.見積もりの依頼
まずは稟議にかける商品、またはサービスの受注業者に見積もり依頼をしましょう。しかし業者によって見積もり金額は異なるので、複数の業者に依頼するのが一般的となっています。
もし見積もり金額が自社の予算の範囲外であれば改めて別の業者に依頼をします。
納得が行ければ見積書に同意し、サービスの詳細や単価、数量など必要な情報を記した稟議書を作成しましょう。
2.稟議にかける
稟議書を作成したら関係者に回覧して承認を求めましょう。もし書類作成の段階で不備があれば稟議書は通らない可能性があります。
ですので不備がないように作成をしましょう。さらにスムーズに進めたければ、稟議の内容をあらかじめ上司に説明したりと工夫があるとさらによくなります。
また購入の場合はコストパフォーマンスを重要視することもあるため、しっかりと説明力のある金額を記入しましょう。
あらかじめ上司に予算について確認するのも一つの手です。
3.発注をする
稟議が下りたあとは業者に発注書の提出です。
発注書には注文内容、合計金額、希望納期など重要な項目が多いので項目にミスがないようにしっかりと確認してください。
4.納品される
納品されたものに不備がないか確認をして同封の受領書に押印をして業者に返送しましょう。
5.請求処理の業務
業者から届いた請求書に基づいて請求処理を行いましょう。代金を支払い後、業者から受領書を受け取ります。
稟議に絡む書類は永久保存が必要となるものが多いので、処分はしないようにしてください。いつでも出せるようにしっかりと管理をしましょう。
稟議が承認されるまでの全体の流れ
稟議書を作成〜承認までの全体の流れについて紹介します。先ほど紹介したポイントを踏まえつつ紹介しますので、参考にしてください。
起案者が稟議を作成
起案者は稟議書を作成する必要があります。内容は「タイトル」「目的」「理由」「金額」などです。
長文になりすぎないように、専門用語を使わず簡潔にまとめるようにしましょう。また稟議は番号で管理していることが多いので、番号を取得して記載してください。
稟議書を役職の低い順に回覧
稟議書を回覧する際は起案者から始まりその後は上司、部長、役員、決裁者と役職の低い順から回覧します。
案件によって役職の範囲が変わるため、社内ルールに沿って行うようにしましょう。
差し戻しされた場合は再利用申請をする
稟議書の内容に不備があれば却下、取り消しをされることがあります。却下であれば承認者の処理が必要であり、取り消しの場合は起案者が処理をします。
取り消しされたとしても文章は削除されませんので、新規文章としてもう一度申請を行い、稟議に再度かけましょう。
なお再度申請をするとスケジュールが大幅にずれる可能性があるので、スケジュールには余裕を持った上で稟議を回しましょう。
承認
先ほども言ったように申請内容によって承認を得る役職は異なります。承認が通れば起案者は目的実現のために業務を行います。
稟議書を保管
決裁された稟議書は、一般的に管理する部門がありますのでそちらで管理します。なお稟議書の管理には種類別に分ける方法と電子化して保管する方法などがあります。
いずれも書類をすぐに探せる方法で保管をするのがおすすめです。
稟議書は保管することが定められている
稟議書は捨てないようにと言っていますが、なぜなら会社法第31条、特許法第67条などによって永久保存が義務付けられているからです。
期間は定められていないものの、しっかりと保存する必要があります。謝って捨てないようにしましょう。
稟議書の書き方を抑えよう
本記事を読んで稟議書の重要性や必要性が分かったでしょう。稟議書は承認を得るためにはポイントや書き方をマスターする必要があります。
誰が読んでもわかりやすく簡潔な稟議書を心がけましょう。稟議書の書き方をマスターすれば上層部の総意も得やすくなるはずです。