社員が所有する知識やスキルは企業にとって重要な資産です。
そのノウハウがなければ、企業が高いバリューのサービスを顧客に提供することができません。
また、その知識が後輩に引き継がれることで、企業は長期間高品質のサービスを提供し続けることができるわけです。
このように社員が持つ知識やスキルはナレッジと表現されます。
ナレッジはknowledgeからきた和製英語で、個人が持つ知識や経験、ノウハウなどを集めて体系化した有益な情報のことです。
そして、ナレッジの共有を加速させるために、企業の中にはナレッジマネジメントツールを導入するところが多いです。
実際にどのようなツールなのか知りたいという方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ナレッジマネジメントツールの基本概要や機能、種類、導入メリットを解説しますので、興味のある方はぜひ参考にしてください。
目次
ナレッジマネジメントツールとは?わかりやすく解説
『ナレッジマネジメントツール』とは、
それぞれの社員が持つスキルや経験、知識、ノウハウを社内で共有しやすいようにサポートをしてくれるシステムのことです。
例えば、システムを導入することで、社内wikiとして簡単に情報配信することができたり、FAQ 管理が容易になったりします。
また、社内SNSを利用できる製品もあり、社内交流の活性化も期待することができるでしょう。
ちなみに、ナレッジマネジメントについての概要から学びたいという方は、下記の記事を参考にするのがおすすめです。
製品の中には、数多くの機能が搭載されており、業務におけるさまざまな支援をしてもらえます。
例えば、ナレッジを保存・管理できるだけなく、営業支援やマーケティングサポートが含まれるものもあるのです。
ツールひとつでさまざまな支援を得られるため、多くの企業が導入を積極的に進めています。
また、新型コロナウイルス感染症拡大によってさらに導入が加速しました。
緊急事態宣言の発令によって、“テレワーク7割”が推奨されることになり、社員が自宅から働くことができる環境を作る必要が出てきたのです。
まず、リモートワークで働くためには、社内で仕事をするように、社員同士が円滑にコミュニケーションを取れる状況を提供しなければなりません。
ナレッジマネジメントツールの中にはクラウドサービスもあります。
また、チャット機能などが搭載されているため、それぞれの社員が離れた場所でもコミュニケーションのやり取りがしやすいです。
そのため、テレワーク環境構築に欠かせないシステムのひとつになりました。
ナレッジマネジメントツールの代表的な機能6選
数多くの製品に搭載されている機能は下記の6つです。
- ファイル共有機能
- マニュアル作成機能
- レポート機能
- 検索及びマイニング機能
- メッセージ及びチャット機能
- ヘルプデスク機能
それぞれの機能について詳しく解説していきます。
ファイル共有機能
1つ目はファイル共有機能です。
社内にあるファイルを共有する機能で、クラウドストレージなどが用いられます。
具体的には、マニュアルや社内規定、提案書などを共有することが多いです。
もちろん、ファイルをインポートすることもできます。
ファイル共有に特化したものもありますが、基本的にはナレッジ共有に必要な機能のひとつとして搭載されているケースが一般的です。
マニュアル作成機能
2つ目がマニュアル作成機能です。
製品の中には、高機能エディタやテンプレートが搭載されており、Webに関する知識がない人でもナレッジを簡単に作成することができます。
また、バラバラなフォーマットを標準化してくれたり、吹き出しや矢印など記事の装飾も簡単に扱えたりするので非常に便利です。
レポート機能
3つ目はレポート機能です。
レポート機能とは、製品の利用状況を集計し可視化してくれる機能を意味します。
これを利用すれば、人気のナレッジページをランキング形式で表示してくれたり、貢献度の高い社員を集計したりすることが可能です。
レポート機能があることで利用状況がわかるため、どのぐらいの社員に使ってもらえているのかをチェックすることができます。
状況を定量的に把握することができるので非常に便利です。
検索・マイニング機能
検索・マイニング機能は、データベースの中に保存されているファイルを検索できる機能のことです。
例えば、ファイル名から検索することはもちろんのこと、特定のキーワードが含まれる文章を検索して見つけ出すこともできます。
業務中わからないことに直面したときに検索機能を使えば、対処法が見つかる可能性もあるため、非常に便利です。
メッセージ・チャット機能
代表的な機能としてメッセージ・チャット機能が挙げられます。
その名の通り、社員同士でメッセージをやり取りすることができる機能です。
チャット機能が搭載されているものは、チャットアプリ「LINE」のように気軽にメッセージを交わすことができます。
また、ナレッジに対して社員がコメントをして交流できるタイプの製品も少なくありません。
ナレッジ共有には、必須の機能ではありませんが、リモートワークの推進や社内コミュニケーション活性化を目的に導入を考えている企業の中には、必要性を感じる担当者も多いです。
ヘルプデスク機能
ヘルプデスク機能とは、社員同士が持つ仕事上の悩みや課題を相談することができる機能のことです。
例えば、社内で起きたトラブルや顧客とのトラブルを解決するために使われます。
トラブル対応やクレームの対応の仕方などを聞くことができたり、資料で確認したりすることが可能です。
ナレッジマネジメントツールの種類を把握しよう!
ナレッジマネジメントツールは大まかにわけて4つの種類が存在します。
種類によって搭載される機能が異なるので、企業は目的に合わせて適切な種類を選択しなければなりません。
あらかじめ種類を知ることで、自社の製品選びに役立つので、ぜひ参考にしてください。
ちなみに、下記の記事ではナレッジマネジメントツールを厳選してご紹介しています。
先におすすめの製品を知りたいという方は、ぜひアクセスしてください。
業務プロセス型
業務プロセス型は、業務に関する知識を得られるだけでなく、業務フローの進め方に関するナレッジも獲得できるナレッジマネジメントツールです。
顧客へのクレーム対応で満足度の高い回答を共有することができるなどオペレーター業務に活用できるツールになるため、コールセンターなどで広く導入されています。
単にノウハウやスキルを蓄積・共有できるだけでなく、顧客から高度な質問への回答を要求された場合、専門オペレーターへ瞬時に引き継げる機能などがある製品も少なくありません。
顧客満足度向上を期待できるナレッジマネジメントツールの導入を考えている方におすすめの種類です。
ヘルプデスク型
ヘルプデスク型はナレッジマネジメントツールの一般的な種類です。
文章や社内ドキュメントをデータベースに保存し、社員がほしい情報を検索してアクセスできる環境を構築してくれます。
これにより、専門知識のある社員の社内問い合わせ業務の負担を軽減することができるため、コア業務に集中させられるという点がメリットです。
ヘルプデスク型は、Q&A形式で質問と回答を記載して保存するFAQ構築ツールなどがあります。
また、デジタルデータを横断検索できる企業内検索システムも有名です。
ヘルプデスク型を導入すれば、高度の技術を持つ社員の知識が広く公開されるため、属人化を防ぐことができます。
また、課題を解決しやすい環境を提供できたり、社員教育にも役立ったりするのでおすすめです。
ベストプラクティス共有型
ベストプラクティス共有型とは、社員の言語されていない暗黙知を形式知化する高度なシステムです。
暗黙知を形式知化するSECIモデルについて詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。
例えば、企業の中に成績優秀なトップ営業マンがいるとします。
トップ営業マンは、ほかの社員に比べて成績が良い理由が必ずあるでしょう。
例えば、「ヒアリングの際に顧客目線に立って話している」、「話の切り口がうまい」などです。
しかし、これらのヒアリング方法は言語化されていないので、ほかの社員は真似ることができません。
ベストプラクティス共有型のナレッジマネジメントツールを導入することで、このような言語化されていない暗黙知を誰でも真似できるようにマニュアル化してくれます。
これにより、多くの社員はトップ営業マンが行っている手法で営業をすることができるので、成約率のアップを期待することができるでしょう。
ベストプラクティス共有型は社員同士の成績の差に開きがあることで悩みを抱えている企業や社内全体にある隠されたナレッジを共有したいと思われる担当者におすすめです。
経営資産・戦略策定型
経営資産・戦略策定型とは、社員やそれぞれの部署が保有するナレッジを分析して経営戦略に活かせるようにサポートしてくれるナレッジマネジメントツールです。
基本的にナレッジを蓄積・共有する目的ではないので、その点でほかの種類とは大きく異なります。
ヘルプデスク型などに比べて大量のデータ分析が必要になるため、データウェアハウスを用いるのが一般的です。
経営戦略の策定や将来的な意思決定のためにナレッジマネジメントツールを導入したい企業に適しているといえるでしょう。
ナレッジマネジメントツールを導入する5つのメリット
ナレッジマネジメントツールを導入するメリットは5つあります。
どのようなメリットがあるのか知ることで、企業が得られる効果やどのような魅力を獲得できるのか把握することができます。
興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
業務の属人化を防ぎ、社員のスキルアップが狙える
1つ目のメリットは、業務の属人化を防ぐことができる点です。
ナレッジマネジメントツールは、社員が持つ知識やノウハウの共有を加速してくれます。
これにより、特定の社員だけができる業務を少なくすることが可能です。
例えば、社員AがクライアントBを長年サポートしており、社員Aだけが知っているクライアント情報を共有することで、万が一社員Aが病気や怪我で出社できなくなってもほかの社員がスムーズに引き継ぎクライアントBを万全にサポートすることができます。
また、業務の属人化だけでなく、社員教育の促進も大きなメリットです。
ナレッジマネジメントツールによって知りたい情報を簡単に検索できる環境を構築することができます。
これにより、わからないことに直面したら検索をして知りたい情報をスムーズに入手することができるので非常に便利です。
生産性が向上する
2つ目のメリットは、生産性の向上を期待することができる点です。
ナレッジマネジメントツールを導入することで知りたいことを検索できるようになります。
知らないこと、解決方法がわからないことに直面するたびに先輩社員に聞きに行く手間を削減できるので、生産性の向上を期待することができるでしょう。
また、専門知識を持つ社員は、教える時間を短縮できるので、今までよりもコア業務に集中しやすくなる点もメリットです。
それぞれの社員の専門分野を把握できる
3つ目の導入メリットは、それぞれの社員が得意とする専門分野を知ることができる点です。
ナレッジマネジメントツールは、社内wikiとして知識を公開したり、それぞれの社員のプロフィールを気軽に見ることができたりします。
社内wikiやプロフィールを読むことで、何に詳しいのかを把握できるため、「Excelのことは先輩Aさん」、「プログラミングは先輩Bさん」というように、話題に対して聞くべき人を明確に定めることが可能です。
知りたいことを詳しい人にピンポイントで聞くことができるので、大きなメリットとなります。
顧客への対応力強化
4つ目のメリットは、顧客への対応力強化を期待できることです。
ナレッジマネジメントツールは、顧客満足度の高い回答などを共有することができるため、ほかのオペレーターが同じように受け答えをすることで顧客が満足しやすい回答を提供することができます。
これにより、顧客満足度を向上させてサービスの充実度を高められる可能性があるでしょう。
データ連携が可能
5つ目のメリットは、データ連携をすることができる点です。
多くのナレッジマネジメントツールは、API対応が可能になっており、ほかのツールと連携することができます。
例えば、チャットツールと連携して使用するということが可能です。
これにより、システムを統合することができるので、データの管理がしやすくなる点もメリットになるでしょう。
ナレッジマネジメントツールの注意点とは?
ナレッジマネジメントツールにはたくさんの利点がありますが、逆に注意すべき点も存在します。
早速、注意点について詳しく解説しますので、運用を成功させたい人はぜひ参考にしてください。
導入コストがかかる
1つ目の注意点は、導入コストがかかるという点です。
製品によってかかる費用は大きく異なりますが、ビジネスで使用する場合、ほとんどのケースで費用がかかります。
そのため、まずは社内で話し合い、どのぐらいの予算をかけられるのか相談した上で製品を選ぶようにしましょう。
共有を促進するための工夫が必要
2つ目は、情報共有を促進する工夫が必要であるという点です。
長年の経験によって習得した知識や経験を持っている社員は、簡単にノウハウをほかの社員に共有したがらないことも珍しくありません。
そのため、情報共有を積極的にする仕組みを作るのが重要です。
例えば、公開した情報に対して「いいね」などのリアクションができる機能があれば、モチベーションにつながるかもしれません。
また、人事評価を見直し、ナレッジ共有することが評価につながるようにするのもひとつの手です。
目的を明確する必要がある
3つ目の注意点は、目的を明確にして効果が得られるように最善を尽くす必要があるという点です。
目的を明確にすることで、導入すべきナレッジマネジメントツールの種類がわかります。
例えば、暗黙知を形式知化したい企業はベストプラクティス共有型、社員教育の負担を減らしたい人はヘルプデスク型というように目的によって選択する種類が大きく異なるでしょう。
導入後に後悔しないためにも目的を明確にした上で製品を選択するようにしてください。
まとめ
今回は、ナレッジマネジメントツールの基本概要や種類、導入メリットについて詳しく解説しました。
ナレッジマネジメントツールは社員が持つ知識やノウハウの共有をサポートしてくれるシステムのことです。
実際に企業が導入することで、業務の属人化防止や業務効率化などさまざまなメリットを獲得することができます。
業務の属人化が起きている、社員教育がうまく行き届かないというような悩みをお持ちの方は、この機会にナレッジマネジメントツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。