近年よく耳にする「オムニチャネル」。
わかりやすく説明すると、オムニチャネルは「さまざまな販売経路」のことです。
この記事では、オムニチャネルの意味、注目される背景、マルチチャネルなどとの違いや、
オムニチャネル戦略の実例を10個ご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
オムニチャネルとは「さまざまな販売経路」
オムニチャネルとは、簡単に言えば、お客様がいつでもどこでも効率的に商品を買えるようにする戦略のことです。
Omniはラテン語で「あらゆる」「全て」などを表し、「Channel」は英語で経路を表します。
本来はチャンネルと読みますが、IT業界やマーケティング業界ではチャネルと呼ばれています。
お客様がいつでもどこでも効率的に商品を買えるようにするには、専用アプリを作ったり、ECサイトを作ったりなど工夫が必要です。
そしてそれぞれが連携し、お客さまに一つの企業として認識してもらうこともオムニチャネルに欠かせない要素です。
オムニチャネルが注目される鍵はスマートフォン
オムニチャネルが注目されている理由として、スマートフォンの普及でお客様の商品の買い方が変わったことが挙げられます。
インターネット上でさまざまな商品が手に入る近年。スマートフォン一つで複数の商品を比較したり、口コミを探したりすることも簡単になりました。
例えば実店舗で欲しい商品を見つけたとしてもその場では買わず、インターネット上で比較してから購入するというお客様もいます。このような行動を「ショールーミング」といいます。
ある企業の調査では、「消費について、あなたにあてはまるものを教えてください」という質問に対して、「買う前にインターネット上の口コミを調べる」と答えた人が42.7%いることが分かりました。
(※1)これは前回の調査時よりも7.1ポイント上昇しています。このように商品を購入する前にインターネット上で検討し、実店舗に買いに行くことを「ウェブルーミング」といいます。
実店舗は商品を購入する場所ではなく、商品を手に取り、体験する場所になりつつあるといえるでしょう。
前述したとおり、従来のように実店舗や広告を使ってお客様の購買意識を高める方法では、商品販売の機会を逃してしまう可能性もあります。
実店舗やECサイトを使ってさまざまな販売経路を確保し、自社商品をオンラインでもオフラインでも同じように購入できるようアプローチをかけられれば、販売の機会を逃すことも減るでしょう。
そのためオムニチャネルが注目されているのです。
※1 引用:博報堂生活総合研究所「生活定点」調査 「消費について、あなたにあてはまるものを教えてください。」入手日:2022年1月18日
調査概要:1992年から隔年で実施している生活者の意識調査
調査母数:-
調査年月日:2020年
マルチチャネル、クロスチャネル、O2Oとの違い
オムニチャネルと似た言葉に「マルチチャネル」「クロスチャネル」「O2O」という言葉があります。
それぞれの言葉の意味を詳しく見てみましょう。
マルチチャネル
マルチチャネルとは商品の販売機会を増やすことを目的に、複数のチャネルを作成することです。
ただし全てのチャネルを統一しているオムニチャネルとは異なり、
それぞれのチャンネルは一つとして独立しており、それぞれで売上アップになることを目標としています。
オムニチャネルは全体の売上、マルチチャネルはあくまで1つのチャネルとして売上を伸ばすもの、です。
クロスチャンネル
クロスチャンネルとは各チャネルを連携させることです。
各チャネルのつながりをより強化し、総合的にアプローチをしていきます。
各チャネルを連携させるのはマルチチャネルより誕生したものであるため、クロスチャンネルとマルチチャネルは関係があります。
O2O
O2Oとは「Online to Offline」の略で、オフラインからオンラインに誘導するための手法です。
例としてECサイトを使うユーザーに情報を発信し、実店舗での購入を促します。
オフラインとオンラインのチャネルを区別せずに、療法をを使用し売上アップ・リピート率向上を目指します。
マルチチャネル、クロスチャネル、O2Oの違い
マルチチャネルとオムニチャネルとの違いは、独立しているかどうかです。
オムニチャネルはすべてのチャネルが連携しているのに比べ、マルチチャネルはそれぞれのチャネルが独立しています。
クロスチャネルとオムニチャネルの違いは、お客様の体験です。
クロスチャネルではデータは関連づいていますが、お客様から見れば別々のサイトのように見えます。
マルチチャネルでは実店舗もECサイトもすべてが連携しているため、お客様はいつでもどこでも同じ体験ができます。
O2Oとオムニチャネルの違いは、オンラインの区別があるかどうかです。O2Oがオフラインとオンラインをつなげるのに対し、
マルチチャネルは、お客様がオフライン、オンラインのどちらでも同じ体験ができるようすべてを連携させることを指します。
オムニチャネルのメリット
オムニチャネルには以下の3つのメリットがあります。
- 顧客体験の向上
- 顧客の分析のしやすさが向上
- 機会損失の減少
それぞれの詳しいメリットを見てみましょう。
顧客体験・顧客満足度の向上
オムニチャネル化をすれば、オンライン・オフラインからの購入ができるため、顧客からは利便性がとても高いです。
利便性の高さから顧客体験が向上し、顧客満足度も相関的に上がりやすいため、自社の製品・サービスへのイメージも好印象となります。
顧客の分析のしやすさが向上
オムニチャネルは、オンライン・オフラインの両方で顧客の行動に関するデータを集められます。
オンライン・オフラインを総合的にしっかりと分析すれば顧客への理解が深まり、今何を求めているのかがより理解が深まり、マーケティングをしやすくなります。
機会損失の減少
オムニチャネル化では、顧客のデータを全て管理できるようになります。
それぞれのチャネルに最適なアプローチをかけ、売上げアップ・リピート率アップが期待できます。
オムニチャネルの注意点
オムニチャネルはとても利便性が高いため、売上アップ・リピート率向上には欠かせないものですが、いくつか注意点があります。
具体的には以下の3つです。
- 効果が出るまでには時間がかかる
- 初期投資はコストが発生する
- 目的を明確化する
効果が出るまでには時間がかかる
オムニチャネル化は莫大な効果が見込めますが、それは前提として顧客満足度を高め、企業やブランドに対するロイヤリティアップが条件です。
そのためオムニチャネル化をすればすぐに売れるというわけではありません。
複数のチャネルを運用するにはコストもリソースも時間がかかるため、予算・リソースに余裕がなければ行うのは難しいでしょう。
初期投資はコストが発生する
オムニチャネル化で新しくチャネルを作成する場合は、まとまった初期費用が必要です。
また、独立したチャネルの連携には新しいシステムの開発、データベースの管理などのコストも発生します。
初期投資はコストが発生するため、余裕を持った予算が必要です。
ロードマップをしっかりと作成する
オムニチャネル化するといっても、企業の状況によってするべき内容は大きく異なります。
そのため最初にECサイトなのか、アプリなのか、なんのチャネルが必要7日を最初に見極める必要があります。
その後はどのような顧客体験を提供するのかを検討し、それをもとにデータ連携・システム統合、効果検証をしていきます。
なお、効果検証で想定外の結果になることもあるため、その際は柔軟に対応できる姿勢を整えておきましょう。
スムーズにオムニチャネル化を進めるポイント
オムニチャネル化をするにはいくつかのポイントが有り、これらのポイントを抑えるだけでもスムーズさが変わってくるでしょう。
円滑にすすめるポイントとして以下のことを意識しましょう。
- ブランドイメージの統一
- それぞれのチャネルを全社的に取り組む
- チャネルごとに役割を明確
- 計画を立てること
- 会社全体で取り組むこと
- PDCAを繰り返していくこと
- ツールの活用
ブランドイメージの統一
顧客がどのチャネルにアクセスしてもスムーズに利用できるため、ブランドイメージを統一する必要があります。
チャネルごとによってブランドイメージが異なると、使い方に困る可能性が高くなるため、なるべく統一させましょう。
それぞれのチャネルを全社的に取り組む
各チャネルは別々の部署、担当者が管理している場合が多いです。
だからこそそれぞれの部署のコミュニケーションをしっかりと取り、全社的に取り組む必要があります。
どれか1つだけのチャネルが活発的に行動指定は、オムニチャネル化の意味がありません。
チャネルごとに役割を明確
全てのチャネルは全社的に取り組む必要があるものの、全て同じ内容にしては顧客を奪い合う形になってしまいます。
オムニチャネル化は顧客を奪い合うのではなく、全体の売上を向上するためのものと認識しましょう。
各チャネルの役割を明確にし、それぞれの特徴を明確にさせてください。
計画を立てること
オムニチャネルを成功させる一つ目のコツは、具体的な計画を立てることです。オムニチャネルは会社全体で取り組む必要があるもの。
担当者を決めて、ゴール達成までの戦略を立てましょう。まずはオムニチャネルで得たいものはなにかを考えます。
目指すべきところを決めたら、具体的な戦略と達成までの期間も決めておきましょう。
会社全体で取り組むこと
オムニチャネルを成功させるコツ二つ目は、会社全体で一丸となって取り組むことです。
オムニチャネルは前述したマルチチャネルと違い、お客様がオフラインでもオンラインでも同じ体験ができるよう戦略を組む必要があります。
そのためには各部署の協力と連携が必要不可欠です。チャネルの認識がずれていたり、部署ごとにバラバラの行動をしていたりすると運用が滞ってしまう可能性があります。
定期的にウェブ会議を開くなどして、会社全体の意識をまとめましょう。
PDCAを繰り返していくこと
オムニチャネルを成功させる三つ目のコツは、PDCAを繰り返すことです。
PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(検証)、Action(行動)の四つ。
オムニチャネル戦略の計画を立て、実行し集めたデータをもとに検証し、よりよい顧客体験のために再度行動します。
PDCAサイクルを回していけば、オムニチャンネルを活かし続けられるでしょう。
ツールの活用
チャネルの統合をし、データ分析をする際にはツール活用をしましょう。
ツールを選ぶポイントとして、他のツールと連携させやすいものを選ぶとスムーズに使えます。
自社の状況に合わせてツールを選択しましょう。
オムニチャネルの成功事例10選
ここからはオムニチャネルの成功事例を10選ご紹介します。
事例①株式会社良品計画
株式会社良品計画は、無印良品のスマートフォン向けアプリ「MUJI Passport」をリリースしています。
アプリの主な機能は、商品や店舗の検索、ネットショッピング、ネット注文受け取りサービス、商品レビュー投稿などです。
他にも日替わり弁当や地域の旬の食材などを届ける「MUJI delivery」や宿泊施設「MUJI HOTEL」とも連携しています。
アプリをダウンロードし、無印良品のサービスを利用することで貯まる「MUJI マイル」も特徴的。
貯まったマイルは買い物で使える「MUJI ショッピングポイント」に変えられます。
無印良品を利用するお客様をターゲットに、デリバリーサービスや宿泊サービスと連携しつつ、アプリ一つでさまざまな買い物が楽しめるオムニチャネルです。
事例②イオン株式会社
イオン株式会社は、スマートフォンアプリ「撮って!インフォ」でマルチチャネル戦略に乗り出しました。
実店舗でアプリを使えば、商品の詳しい情報が読み込める仕組みになっています。
例えばこのアプリを野菜のポップにかざすと、その野菜を使ったレシピ情報が表示されます。
表示されたレシピなどの情報は、アプリ内に保存しておけるのも特徴です。
他にもイオン内にある自動販売機でドリンクを購入した後にこのアプリをかざすと、クーポンが発行される機能もあります。
アプリ内ではネットショッピングも楽しめるなど、実店舗とインターネットをうまく利用したオムニチャネルになっています。
事例③株式会社 東急百貨店
株式会社 東急百貨店は、スマートフォンアプリ「東急百貨」をリリースしています。
アプリ内では実店舗のマップ見られたり、商品の購入ができたりする仕組みになっています。
またSNSと連携してクーポンを配布しているのも特徴の一つです。
従来のダイレクトメッセージや折込チラシでのクーポン配布よりも、SNSと連携したマルチチャネル戦略でより効果的にお客様にアピールしている事例といえるでしょう。
事例④カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が運営するTSUTAYAでは、「Airbook」サービスをリリースしています。
これは実店舗でTカードを提示し対象書籍を購入することで、自動的にデジタル版の書籍が無料で手に入るというもの。
凸版印刷グループの「BookLive!」にサービス登録すれば、お客様は書籍を持ち運ぶことなく、いつでもどこでも購入した書籍を読めます。
実店舗での購買とインターネットサービスを利用したオムニチャネルのよい事例です。
事例⑤株式会社エービーシー・マート
株式会社エービーシー・マートが提供するのは、iPadを使ったサービス「iChock(アイチョック)」。
実店舗に来店したお客様に対し、通販在庫を利用してお客様の自宅に商品を届けるという仕組みです。
お客様は送料無料で受け取れるのも特徴の一つ。
実店舗で商品が見つからないことが原因で商品購買のチャンスを逃してしまわないよう戦略立てられています。
事例⑥株式会社セブン&アイ・ホールディングス
株式会社セブン&アイ・ホールディングスが提供するのは、インターネットで買い物が楽しめる「オムニ7」。
サイト内ではセブン&アイグループである、イトーヨーカドーやロフト、アカチャンホンポなどの商品が購入できます。
さらに「omiモール」では、セブン&アイグループ以外の商品も購入できます。
インターネットでの買い物をはじめ、実店舗の買い物でも貯まる「マイル」は、お客様の好きなタイミングで好きな商品と交換できるのも特徴です。
オフラインとオンラインの両方でシームレスな顧客体験を提供しているといえるでしょう。
事例⑦株式会社 資生堂
資生堂が提供するのは、化粧品や美容についてのウェブサイト「watashi+」。
ウェブサイト内では、オンラインショップでの買い物、実店舗検索、商品検索ができます。
また「肌に効くお料理レシピ」や、インターネット上で資生堂のメイクアイテムが試せる「バーチャルメイク」なども配信しています。
さらにウェブサイトでは商品やメイクの方法について、ビューティーコンサルタントに相談できるのも特徴。
オンラインでも実店舗のようにメイクアイテムのタッチアップができるのは、シームレスなオムニチャネル戦略だといえるでしょう。
事例⑧株式会社 赤ちゃん本舗
ベビー向けの商品を販売しているアカチャンホンポ。実店舗にタブレットを設置し、商品をお客様の自宅に配送するサービスをしています。
車を持っていないお客様やベビーカーなど大きな買い物をしたいお客様も、荷物を運んだり車に詰め込めるか考えたりせず買い物を楽しめるのが特徴です。
店舗に在庫がない場合でもタブレットから在庫を確認できるため、商品購買の機会を失うリスクを回避しているよい事例といえるでしょう。
事例⑨株式会社ユニクロ
アパレルを中心に事業を展開するユニクロ。
「あなた専用のお買いものアシスタント」をコンセプトに、「UNIQLO IQ」をリリースしました。
アプリ内では、コーディネートや商品の選び方を相談できます。
IQで解決できなかったことに関しては、専任のオペレーターが対応してくれるのも魅力の一つでしょう。
さらにLINEと連携させることで、お気に入りのコーディネートや商品を登録することもできます。
雑誌に掲載された商品を検索できるシステムもあり、お客様がチャネルの違いを感じることなくユニクロを楽しめるようになっています。
事例⑩オリックス野球クラブ株式会社
「オリックス・バファローズ」は、コアなファンを可視化するためにオムニチャネル戦略を立てました。
従来もスタンプカードやイベント企画などを行なってきたオリックス・バファローズ。
コアなファンの行動を把握し、新たなファンを獲得するためにCRM(顧客関係管理)を導入しました。
CRMの導入によって、これまで入場の際スタンプにカードを押していたシステムが、入場ゲートにカードをかざすだけでポイントが貯まるシステムに変わりました。
ポイントは売店での利用やグッズ購入でも貯まる仕組みです。
このシステムを導入したおかげで、コアなファンはチケットだけでなく、売店やグッズも購入しており、人を誘って球場に来ていることが分かりました。
マルチチャネル戦略で既存顧客のニーズを洗い出し、PDCAに役立つ情報を手に入れた事例といえるでしょう。
オムニチャネルで快適な顧客体験を
オムニチャネルとは、わかりやすくいえばさまざまな販売経路を持つことです。
もう少し詳しく言えば、お客様がオンラインでもオフラインでも関係なく自社の商品を購入できるよう、実店舗にとどまらずSNSやアプリを活用して販売購入を促す戦略のことをいいます。
スマートフォンの普及で商品の比較が簡単になった現代だからこそ、さまざまな入り口を設け、自社の商品をアピールできるともいえるでしょう。
オムニチャネル戦略を立てるときは、目標を決めて計画を立てましょう。
会社全体で一丸となって取り組み、PDCAサイクルを回していけばよりよい顧客体験が実現できるはずです。
今回ご紹介した10個の事例を参考に、効果的な戦略を立てていきましょう。