BCP策定で苦労していると、「BCPってどのくらいの企業が策定しているのだろう?」「BCPって本当に必要なのかな?」という考えがよぎることがありますよね。
確かに日本企業のBCP策定率は、決して高いとは言えません。
しかしだからといって、BCP策定が必要ないわけではありません。
では、なぜBCPの策定率が上がらないのか?
BCP策定をしないとどのような問題があるのか?
この記事では、これらの疑問にお答えします。
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目次
企業のBCP策定率は?
では、企業のBCP策定率を業種別、企業規模別に見ていきましょう。
業種別
金融・保険業(約・%) | 情報通信業(約・%) | 建設業(約・%) | 製造業(約・%) | 卸売業(約・%) | 運輸業・郵便業(約・%) | サービス業(約・%) | 不動産業・物品賃貸業(約・%) | 小売業(約・%) | 宿泊業・飲食サービス業(約・%) | |
平成19年度 | 42 | 24 | 10 | 11 | 12 | 9 | 9 | 3 | 4 | 0 |
平成21年度 | 34 | 23 | 8 | 15 | 13 | 22 | 13 | 9 | 8 | 0 |
平成23年度 | 77 | 49 | 44 | 29 | 25 | 28 | 25 | 21 | 13 | 13 |
平成25年度 | 70 | 35 | 30 | 31 | 28 | 27 | 25 | 14 | 13 | 11 |
平成27年度 | 88 | 59 | 50 | 48 | 48 | 40 | 35 | 33 | 28 | 10 |
平成29年度 | 68 | 57 | 42 | 45 | 37 | 50 | 38 | 26 | 18 | 15 |
令和元年度 | 69 | 58 | 56 | 45 | 42 | 39 | 48 | 33 | 29 | 11 |
全体的には、平成23年度に策定率が大幅に上昇し、平成27年度にピークを迎えている傾向があります。
ただし一部令元年度にピークを迎えている業種もあるようです。
業種別に見ると、顧客の重要な情報を保有している金融業や、災害によるリスクが大きい建設業などはBCP策定率が高い傾向があります。
ただしBCP策定率が低い業界は、非常事態を軽視しても問題がないというわけではありません。
たとえば宿泊業・飲食サービス業では、顧客がサービスを利用している時に災害による大きなダメージを受ける可能性があるため、やはりBCP策定は重要です。
企業規模別
【大企業】
策定済(%) | 策定中(%) | 策定予定(%) | 策定予定なし(%) | BCPの意味を知らない(%) | その他・無回答(%) | |
平成19年度 | 18.9 | 16.4 | 29.1 | 12.7 | 22.7 | 0.3 |
平成21年度 | 27.6 | 30.8 | 16.9 | 11.1 | 12.0 | 1.5 |
平成23年度 | 45.8 | 26.5 | 21.3 | 5.7 | 0.3 | 0.4 |
平成25年度 | 53.6 | 19.9 | 15.0 | 8.3 | 2.2 | 1.0 |
平成27年度 | 60.4 | 15.0 | 16.4 | 5.1 | 0.8 | 2.3 |
平成29年度 | 64.0 | 17.4 | 12.2 | 4.3 | 0.9 | 1.2 |
令和元年度 | 68.4 | 15.0 | 12.5 | 2.5 | 0.9 | 0.6 |
平成19年度には20%を割っていた策定率が、12年で70%近くまで上昇してきました。
またBCPの意味を知らなかった大企業が、平成19年には20%以上あったのに対し、平成23年度以降は大幅に減少しています。
大企業の全体的な傾向としては、順調にBCPが普及しているため、非常事態に対する危機意識が高いと考えられます。
【中堅企業】
策定済(%) | 策定中(%) | 策定予定(%) | 策定予定なし(%) | BCPの意味を知らない(%) | その他・無回答(%) | |
平成19年度 | 12.4 | 3.4 | 12.8 | 8.8 | 61.2 | 1.3 |
平成21年度 | 12.6 | 14.6 | 15.0 | 10.3 | 45.3 | 2.2 |
平成23年度 | 20.8 | 14.9 | 30.7 | 19.7 | 13.3 | 0.7 |
平成25年度 | 25.3 | 12.0 | 18.1 | 24.8 | 17.3 | 2.6 |
平成27年度 | 29.9 | 12.1 | 30.2 | 18.3 | 7.0 | 2.5 |
平成29年度 | 31.8 | 14.7 | 27.7 | 17.9 | 6.4 | 1.5 |
令和元年度 | 34.4 | 18.5 | 22.3 | 13.0 | 8.7 | 3.1 |
中堅企業もBCP策定率は上昇傾向にありますが、大企業と比べるとまだまだ策定率が低いです。
ただしBCPの意味を知らない企業は、大幅に減少しています。
事業によってはBCPの義務化がされてきていることもあり、今後の策定率上昇が期待されます。
【中小企業】
策定済(%) | 策定中(%) | 策定予定(%) | 策定予定なし(%) | その他(%) | |
令和元年度 | 15.0 | 7.3 | 23.2 | 45.3 | 9.1 |
令和2年度 | 16.6 | 9.7 | 26.6 | 39.4 | 7.7 |
令和3年度 | 17.6 | 7.9 | 24.1 | 42.5 | 8.0 |
中小企業に関しては、依然として策定率が低い状況です。
策定予定の企業まで含めても、約50%と決して高いとは言えない数字です。
大企業、中堅企業の策定率を踏まえると、企業規模が小さくなるにつれて策定率も低下する傾向があることがわかります。
BCP策定率が上がらない理由
確かにBCP策定率は上昇傾向にありますが、まだまだ充分に普及しているとは言えない状況です。
特に中堅企業に関しては、非常事態に対する危機意識がそれほど高くないのだと考えられます。
しかしBCP策定率が上がらないことには、理由があります。
主な理由として上げられるのは、次の表のとおりです。
全体(%) | 大企業(%) | 中小企業(%) | |
策定に必要なスキル・ノウハウがない | 41.9 | 43.0 | 41.8 |
策定する人材を確保できない | 29.3 | 31.7 | 29.0 |
書類作りで終わってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい | 27.4 | 32.7 | 26.8 |
策定する時間を確保できない | 24.0 | 25.6 | 23.8 |
必要性を感じない | 23.4 | 19.7 | 23.8 |
自社のみ策定しても効果が期待できない | 23.0 | 21.6 | 23.2 |
リスクの具体的な想定が難しい | 18.2 | 15.7 | 18.4 |
策定する費用を確保できない | 11.4 | 8.0 | 11.8 |
ガイドライン等に自組織の業種に即した例示がない | 5.7 | 7.1 | 5.5 |
策定に際して公的機関の相談窓口がわからない | 3.6 | 2.3 | 3.8 |
策定に際してコンサルティング企業等の相談窓口がわからない | 2.7 | 2.7 | 2.7 |
その他 | 3.9 | 4.6 | 3.8 |
理由として一番大きいのが、BCP策定に関するスキルやノウハウがないことです。
この記事をご覧の方の中にも、このような悩みを抱えている方がいるかもしれません。
そこで、ぜひこちらの記事を参照してみてください。
また中小企業に関しては、大手企業と比べてBCPの重要性を理解していないことが原因として目立ちます。
ただしBCPを策定しないことによるデメリットがあるため、重要性については理解が必要です。
BCPを策定しないことによるデメリット
BCPを策定しないと、非常事態時に事業を継続することが難しくなります。
たとえば、事業継続に必要な人員の確保ができなかったり、業務に必要なシステムが使えなくなったりするなどの問題が起こる可能性があります。
特に経済基盤が脆弱な中小企業に関しては、少しの間事業が停滞してしまうだけで廃業に追い込まれてしまうかもしれません。
策定済のBCPに入っている項目
策定済のBCPに入っている項目は、下記の表のとおりです。
全体(%) | 大企業(%) | 中小企業(%) | |
従業員の安否確認手段の整備 | 68.5 | 78.1 | 65.7 |
情報システムのバックアップ | 55.4 | 66.2 | 52.2 |
緊急時の指揮・命令系統の構築 | 46.9 | 59.0 | 43.3 |
災害保険の加入 | 39.2 | 38.3 | 39.5 |
事務所の安全性確保 | 38.8 | 48.7 | 35.9 |
調達先・仕入先の分散 | 35.1 | 31.5 | 36.2 |
多様な働き方の制度化 | 29.3 | 39.2 | 26.3 |
生産・物流拠点の分散 | 20.5 | 23.3 | 19.7 |
代替生産先・仕入先・業務委託先・販売場所の確保 | 19.2 | 16.8 | 19.9 |
事業中断時の資金計画策定 | 18.5 | 15.0 | 19.5 |
業務の復旧訓練 | 14.6 | 19.8 | 13.1 |
予備在庫の確保 | 13.5 | 12.0 | 13.9 |
物流手段の複数化 | 13.3 | 13.1 | 13.4 |
生産・物流拠点の集約 | 3.5 | 4.4 | 3.2 |
企業の規模によらず、従業員の安否確認手段の整備、情報システムのバックアップは高い優先順位でおこなわれています。
事業所の安全性確保、多様な働き方の制度化については、中小企業が大企業よりも大きく劣っています。
大企業よりも人員の少ない中小企業では、テレワークやフレックスタイム制の導入が厳しいのかもしれません。
BCP策定後の実施内容
BCP策定後の主な実施内容は、下記のとおりです。
- 備蓄品の購入・買増し
- 訓練の開始
- 安否確認や相互連絡のための電子システム導入
- 社員とその家族の安全確保
- 緊急時の避難に係る安全確保の手順、避難方法、避難経路の明確化
- 非常用発電機の購入
- 防災用無線機や災害時優先電話の導入
- 災害対応担当責任者の決定
- 災害対応チーム創設
- 所有資産の耐震・免震工事・耐震工事
- 防災関連セミナーの定期受講、防災関連資格取得の推奨又は社員への補助制度の創設
- 本社機能・営業所などの代替施設の確保または準備
- 代替仕入先の確保、代替販売先の開拓・情報収集
ぜひBCP策定後の参考にしてみてください。
BCP策定を簡単におこなうにはテンプレートの活用がおすすめ
BCP策定には、手間がかかるというイメージが強いです。
実際にBCP策定率が上がらない理由として、BCP策定に割く時間が足りなかったり、人員が不足していたりということが挙げられています。
しかし官公庁は、BCP策定を簡単におこなうためのテンプレートを用意してくれています。
詳細とおすすめのテンプレートにつきましては、下記の記事で紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。
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まとめ
BCP策定率は現状決して高くないとはいえ、上昇傾向にあります。
各企業がBCPの重要性に気づいてきている証でしょう。
いつ起こるかわからない非常事態に備えて、BCP策定の実施を推奨します。