
法人の電力契約は、大きく「低圧」「高圧」「特別高圧」の3つの区分に分かれています。
自社がどの区分に当てはまるかによって、選ぶべき電力会社も最適なコスト削減のアプローチも大きく変わるのが特徴です。
本記事では、専門用語に不慣れな方でも短時間で自社の契約区分が判定できるよう、低圧・高圧・特別高圧の違いや簡単な見分け方をわかりやすく解説します。
- 低圧・高圧・特別高圧の違い
- 自社の契約区分を確認する方法
- 契約区分ごとの料金・設備・管理負担の違い
- 電気代を見直す際の考え方
- 低圧・高圧それぞれに適した比較方法
「すでに自社の区分はわかっているので、とにかく早く安くなる電力会社を比較したい」という方は、以下のページから自社に最適な新電力会社の比較が可能です。
目次
低圧・高圧・特別高圧の違いとは?法人の電力契約区分を解説

法人の電力契約は、受電電圧や契約電力の大きさによって、低圧・高圧・特別高圧に分かれます。
【一覧表】3区分の違いがひと目でわかる比較表
まずは、3つの契約区分がどのような基準で分けられているのか、全体像を把握しましょう。
区分 | 主な電圧基準 | 契約規模の目安 | 対象になりやすい施設 | 主な特徴 |
低圧 | 交流600V以下 | 50kW未満 | 小規模店舗、事務所など | 設備負担が比較的少なく、切り替えもしやすい |
高圧 | 交流600V超〜7,000V以下 | 50kW以上〜2,000kW未満 | 中規模ビル、工場、病院など | 受電設備が必要になり、保安管理も重要 |
特別高圧 | 7,000V超 | 2,000kW以上 | 大規模工場、大型商業施設など | 大口需要向けで、専用設備や高度な保安管理が必要 |
参考:e-Gov法令検索「電気設備に関する技術基準を定める省令」
電圧・契約電力でどう区分される?契約電力と電圧区分の違い
電力契約区分を理解するうえで「電圧(V:ボルト)」と「契約電力(kW:キロワット)」という2つの軸を押さえることが重要です。
- 受電電圧(V)とは
電力会社から供給される電気の電圧のことです。低圧は一般に100Vまたは200V、高圧は6,000V級(6.6kV)、特別高圧は7,000Vを超える電圧で供給されます。なお、特別高圧では実務上、20kV級や66kV級など、施設規模に応じた電圧での受電が一般的です。電圧が高いほど送電時のエネルギーロスが小さく、大量の電力を効率よく届けられるという特性があります。
- 契約電力(kW)とは
需要家(契約者)が電力会社と取り決める「最大使用電力の上限値」のことです。単位はkWで、実際に使った電力量を示すkWhとは異なります。施設内で同時に使用する電気機器の最大容量が50kW未満であれば低圧、50kW以上であれば高圧として扱われるのが一般的です。さらに契約電力が2,000kW以上となる大規模施設では、特別高圧での契約が検討されます。
- 50kW未満→低圧契約が基本
- 50kW以上、2,000kW未満→高圧契約
- 2,000kW以上→特別高圧契約
ただし、電圧区分と契約電力の区分は完全に連動しているわけではなく、電力会社の供給規程や施設の立地条件によって例外的な扱いとなるケースもあります。契約区分に迷う場合は、電力会社や専門業者に確認するのが確実です。
自社の施設はどれ?電気の高圧・低圧の見分け方と確認方法

「自社は高圧と低圧、どちらで契約しているのか?」
電気料金の見直しを担当する際に、まず確認しておきたいポイントです。特別高圧は対象施設が限られるため、本章では主に「低圧と高圧の見分け方」について紹介します。
施設規模・用途から判断する目安
自社が低圧契約か高圧契約か、施設の規模や用途から大まかに判断できます。以下のチェックリストを参考にしてください。
□ 延べ床面積が300〜500㎡以下の小規模施設
□ 従業員数が数名〜十数名程度
□ 使用する主な機器がエアコン・照明・パソコン程度
□ 電気代の月額が3〜5万円以下
□ 延べ床面積が500㎡を超えるオフィス・店舗・工場
□ 大型エアコン・業務用厨房・生産設備などを多数稼働
□ 電気代の月額が10万円を超えている
□ 建物内に電気設備室や機械室がある
ただし、これらは判断材料の一つです。同じ飲食店でも店舗規模や厨房設備によって負荷は変わりますし、テナント入居か自社所有かによっても契約の見え方は異なります。
対象になりやすい施設の違い
ここでは、一覧表の内容を補足する形で、各区分に該当しやすい施設の例を紹介します。自社施設がどの区分に近いかの目安としてご活用ください。
低圧(50kW未満)が多い施設
- 個人事業主や中小企業の小規模オフィス
- コンビニエンスストアや小規模飲食店
- 一般住宅・賃貸アパート(個別契約)
- 小規模な美容室・クリニック
高圧(50kW以上〜2,000kW未満)が多い施設
- 中規模〜大規模のオフィスビル、テナントビル
- スーパーマーケット・ホームセンター
- 大型空調・冷凍設備を導入している施設
- 24時間稼働の物流倉庫
- 病院・介護施設・ホテル
- 大学・学校法人のキャンパス
特別高圧(2,000kW以上)が多い施設
- 大規模製造工場(鉄鋼・化学・食品など)
- データセンター・サーバー施設
- 大型ショッピングモール・複合商業施設
- 鉄道・大規模交通インフラ
同じ「工場」や「オフィス」でも、施設の規模や稼働する機器の数によって契約区分は変わります。例外はありますが、施設規模が大きくなり、空調・動力・生産設備などの負荷が増えるほど、高圧や特別高圧に該当しやすくなります。
電気料金の請求書・契約種別で確認する
最も手軽で確実なのが、電気料金の請求書(検針票)や契約書類を確認する方法です。
確認箇所 | 低圧の場合の表記例 | 高圧の場合の表記例 |
契約種別 | 低圧電力、従量電灯B/Cなど | 高圧電力、業務用電力など |
供給電圧 | 100V/200V | 6,000V(6kV) |
契約電力 | ◯kVA(アンペア契約の場合も) | ◯kW |
検針・請求単位 | 月単位(kWh) | 月単位(kWh+kW) |
請求書の「ご契約メニュー」や「供給電圧」の欄を見ると、低圧・高圧の区分が明記されていることがほとんどです。電子請求の場合は、電力会社のWeb会員サービスからも確認できます。
なお、東京電力・関西電力などの大手電力会社のWebサイトでは、契約種別の一覧が公開されているため、自社の契約名称と照らし合わせることもできます。
キュービクルなど設備の有無で確認する
もう一つの確認方法が、キュービクルなどの受電設備を目視する方法です。
高圧で受電する施設では、受け取った高圧電力を施設内で使える電圧に変えるための受変電設備が必要となり、キュービクルはその代表的な設備です。多くの場合、「危険・高電圧」といったステッカーが貼られた、銀色やベージュ色の大きな金属製の箱の形状をしています。
建物の屋上や駐車場の隅にこのキュービクルが設置されていれば「高圧電力」の契約です。ただしテナント物件では、建物全体は高圧受電でも、入居企業側は個別に低圧相当の形で利用している場合もあります。
そのため、設備だけで即断するのではなく、請求書・契約種別・設備の3点をあわせて確認しましょう。
参考:公益社団法人日本電気技術者協会「高圧自家用受電設備の保護について」
▶キュービクル
低圧・高圧・特別高圧で変わる実務上の違い

区分が違うと、受電に必要な設備、料金の計算方法、日常的な保安・管理体制まで、実務に直結する要素が大きく異なります。これらを理解しておくことで、契約区分を確認してから見積もりや比較に進むべき理由が明確になります。
受電方式と必要設備の違い
契約区分によって、電力会社から電気を受け取る仕組み(受電方式)と、そのために自社が用意すべき設備が変わります。
低圧では、比較的シンプルな形で電力を利用するケースが多く、事業者側で大規模な受変電設備を持たないことが一般的です。
一方、高圧や特別高圧では、そのまま施設内で使うのではなく受電設備を通して適切な電圧に変換して使うことになります。
区分 | 受電電圧 | 自社に必要な主な設備 | 法人実務への影響 |
低圧 | 100V・200V | 分電盤のみ(標準装備) | 設備負担が小さく、切り替えも比較的進めやすい |
高圧 | 6,000V | キュービクルなどの高圧受変電設備 | 設備費・保守費・管理負担が発生しやすい |
特別高圧 | 7,000V以上 | 大型変電設備・専用受電室など、より本格的な受変電設備 | 大規模施設向けで、設備・運用ともに本格対応が必要 |
テナントとしてオフィスビルや商業施設に入居している場合、キュービクルはビルオーナー側が所有・管理している場合がほとんどです。その場合、テナント企業は設備の管理義務を負わずに、ビル全体の高圧受電による料金メリットを受けられる場合があります。
参考:電力・ガス取引監視等委員会「局地的電力需要増加と送配電ネットワークに関する研究会資料」
電気料金の考え方や単価の違い
契約区分によって、電気料金の単価水準と料金体系の構造が異なります。高圧は低圧より電力量単価が有利になりやすい傾向があります。
料金の構成要素 | 低圧 | 高圧 | 特別高圧 |
基本料金 | アンペア数や契約容量に基づく定額 | 契約電力(kW)に基づく定額 | 契約電力(kW)に基づく定額 |
料金の見方 | 料金表やプラン差を比較しやすい | 単価だけでなく契約条件も重要 | 個別性が高い |
見直し時のポイント | 切り替えのハードルが比較的低い | 複数社で見積もり比較したほうが差が見えやすい | 個別見積もりが前提になりやすい |
高圧契約においては、基本料金のベースとなる「契約電力」の決まり方にも注意が必要です。多くの場合、当月を含む過去12ヶ月の最大需要電力(デマンド値)をもとに契約電力が設定される仕組みになっています。そのため、一時的な使用電力の増加が、翌月以降の基本料金に影響する場合があります。
保安・点検・管理負担の違い
電気設備を自社で保有する高圧・特別高圧契約では、電気保安に関する法令上の義務が発生します。低圧契約との管理負担の差は、事前に確認しておきたいポイントです。
管理項目 | 低圧 | 高圧 | 特別高圧 |
電気主任技術者 | 不要 | 必要(外部委託可) | 必要(規模により選任義務) |
定期点検 | 義務なし(任意) | 月次・年次点検が義務 | 月次・年次点検が義務 |
設備の届出 | 原則不要 | 必要 | 必要 |
管理コストの目安 | 原則不要 | 外部委託費などが発生(年間数十万円程度) | 設備規模に応じて高額になりやすい(年間数百万円〜) |
実務では、保安や点検の一部を外部の専門会社に委託して運用するケースも一般的です。月次・年次の点検スケジュールから書類手続きまでプロに任せられるため、社内に電気の専門家がいなくても適切な管理体制を維持できます。
【区分別】自社の契約に合わせて電気代を安くする方法

低圧・高圧・特別高圧の違いと自社の契約区分を把握したら、次に検討したいのが電気代の見直し方法です。
ここでは低圧・高圧それぞれの具体的なアプローチと、区分変更時に注意すべき損益分岐の考え方を解説します。
低圧(50kW未満)の場合:手軽な電力会社切り替え
低圧契約の施設では、新電力への切り替えがコスト削減の有力な選択肢になります。
- 工事や設備変更なしで切り替えられる場合が多い
- 料金プランを比較することで、削減余地を見つけやすい
- 解約手数料のないプランも多く、気軽に試しやすい
特に小規模店舗や事務所では、設備を変更しなくても契約条件を見直すだけで改善余地が見つかることがあります。電力量料金の単価だけで比較すると、基本料金の差を見落とすことがあります。月間の電気代総額をシミュレーションしたうえで比較することが重要です。契約中の料金プランや使用状況に合わせて、最も安くなる新電力会社を比較してみましょう。
高圧(50kW以上)の場合:複数社での一括見積もり
高圧の電力調達は施設ごとに個別の見積もり・交渉が基本となります。
電力会社各社は、施設の使用状況(年間使用電力量・デマンド値・使用時間帯など)をもとにカスタマイズされた料金を提示するため、複数社から見積もりを取って比較することが不可欠です。
- 電力量単価だけで判断しない
- 基本料金を含めた総額・条件で比較する
- 契約期間・違約金有無を確認する
- 市場連動型のリスクとメリットを確認する
- 切り替え後も定期的に料金を見直す
株式会社アイステーションは、法人向けの電力一括見積もりサービスを提供しています。複数社へ個別に問い合わせる必要がなく、一度の入力で複数社の見積もりを比較できます。電力コストの削減を検討している場合は、まずこうしたサービスを利用して相場感を把握するところから始めましょう。
【注意】事業拡大で「低圧から高圧」へ変わる場合の損益分岐
事業拡大や施設の増設に伴い、電力使用量が増えて低圧から高圧への切り替えが必要になる場合があります。このとき、単純に「高圧は単価が安いからお得」と判断するのは早計です。切り替えにかかるコストと、削減できる料金のバランス(損益分岐)を慎重に検討する必要があります。
- キュービクルの設置費用(機器代+工事費:数百万円規模)
- 電気保安管理の外部委託費用(年間数十万円程度)
- 切り替え手続きにかかる社内工数
損益分岐の考え方
損益分岐を確認するには、初期投資の回収期間を試算します。
年間削減額=(現在の低圧単価−高圧単価)×年間使用電力量(kWh)
回収期間(年)=初期投資額÷年間削減額
たとえば、年間削減額が80万円でキュービクル設置に400万円かかる場合、回収期間は5年となります。施設の使用予定期間や事業計画と照らし合わせて、切り替えの判断を行いましょう。
低圧から高圧への切り替えを検討する目安
状況 | 判断の目安 |
月間電気代が継続的に15万円を超えている | 高圧切り替えの費用対効果が出やすい |
施設の長期利用(5年以上)が確定している | 初期投資の回収が見込める |
設備増設・増床で契約電力が50kWを超える見込み | 切り替えを前提に計画を立てると合理的 |
テナントビルへの入居を検討中 | ビル側の高圧設備を利用できる場合がある |
参考:環境省「排出削減ポテンシャルを最大限引き出すための方策検討会」
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低圧・高圧・特別高圧に関するよくある質問

法人の電力契約や設備の区分について、担当者の方からよく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。
キュービクルがあれば必ず高圧ですか?
稼働しているキュービクルがある場合は、基本的には高圧以上と考えてよいでしょう。ただし、テナント物件では建物全体の受電区分と入居者側の契約の見え方が異なることもあるため、請求書や契約種別もあわせて確認するのが確実です。
高圧から低圧に変更できることはありますか?
使用電力が減り、契約電力が50kW未満に収まる場合は、高圧から低圧へ変更できる可能性があります。たとえば、大型設備を撤去した場合や、施設規模を縮小した場合などです。ただし、キュービクルの撤去や配線工事が必要になることもあるため、事前に費用対効果を確認しましょう。
高圧契約でも電力会社の切り替えはできますか?
高圧契約でも、電力会社の切り替えは可能です。ただし、低圧のように料金表だけで簡単に比較できるケースは少なく、施設の使用電力量、契約電力、最大需要電力、使用時間帯などをもとに個別見積もりになるのが一般的です。そのため、高圧契約を見直す場合は1社だけで判断せず複数社から見積もりを取り、基本料金・電力量料金・契約条件を含めた総額で比較することが重要です。
テナント入居の場合、自社で電力会社を選べますか?
テナント入居の場合、自社で電力会社を選べるかどうかは建物の契約形態によって異なります。ビル全体で一括して電力契約を結び、各テナントに電気料金を請求している場合、入居企業が個別に電力会社を変更するのは難しい場合がほとんどです。一方で、テナントごとに個別契約になっている場合は、自社で電力会社を選べる可能性があります。賃貸借契約書や管理会社からの請求書を確認し、不明な場合はビルオーナーや管理会社に確認しましょう。
自社の契約区分を確認して、最適なコスト削減を始めよう
低圧・高圧・特別高圧の違いは、料金だけでなく、必要設備や管理負担にも関わります。まずは請求書の契約種別や供給電圧を確認し、自社がどの区分で契約しているかを把握することが重要です。
自社の契約が「低圧」か「高圧」かによって、選ぶべき電力会社や効果的なコスト削減の方法は異なります。
- 低圧なら、料金プランや電力会社の比較を進める
- 高圧なら、複数社から見積もりを取り、条件を比較する
- 事業拡大中なら、高圧化の損益分岐まで含めて判断する
事業拡大や設備増設を予定している場合は、契約区分が変わる可能性もあります。電気代の削減額だけでなく、設備費や保安管理費まで含めて判断することが大切です。
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