従業員がモチベーションを維持しながら働くためには、適切な評価ができるかがポイントです。
成果を上げた従業員が、それに似合った評価を受けて給与や賞与などの処遇面で優遇されなければ、従業員が不公平を感じるものです。
人事評価を行う方法はいくつか存在しますが、その中でも360度評価という方法に注目が集まっています。
では、360度評価とは一体どのような評価方法なのでしょうか?
この記事では、360度評価の意味や目的などについて徹底解説していきます。
目次
360度評価とは一体どのようなもの?
まずはじめに、360度評価の概要について説明します。
360度評価とは、従業員に対して通常評価を行う上司だけでなく、同僚や部下といった様々な立場の人物が、多角的に評価する制度のことです。
通常、人事評価では被評価者のことをよく理解していて、実務上でも密接な関係となる上司が評価するのが一般的ですが、どうしても上司の主観や個人的な感情などによって、評価が甘辛になるケースが散見されます。
ファジーな評価を受けてしまうと、「頑張っても評価されない」と感じて徐々にモチベーションが低下するものです。
よって、評価される側としてはより公平な評価をしてもらうことを要求しています。
そこで、従来の上司からだけに評価を受ける制度ではなく、公平で客観的な評価によって納得しやすいアウトプットが出るのが360度評価です。
働き方改革を背景に注目を集めはじめており、多くの企業でも導入が進んでいます。
360度評価は、企業内の従業員だけでなく取引先や顧客の声も評価として抽出することがある点も特徴的です。
日本における導入率
働き方改革によって注目度が増している360度評価ですが、日本では実際にどの程度導入が進んでいるのでしょうか?
労政時報が行った調査結果によると、2013年のデータで従業員1,000人以上の企業において16.2%程度でした。
まだまだ普及が進んでいなかったのが実情ですが、2016年秋に発表された日本経済新聞社が約1,600社の企業に対して実施した調査によれば、360度評価の導入率は46.1%でした。
約半数の企業が導入を進めたことになりますが、360度評価は大企業の関心が高い傾向にあり、導入実績も増加傾向にあるのです。
また、今後も大企業だけでなく中小企業でも増えていくものとみられています。
360度評価が注目されている理由
360度評価が高い注目を集めている背景には、組織が抱える問題に起因しています。
今まで当たり前のように用いられてきた終身雇用や年功序列制度が崩壊したことによって、企業は今までの制度をそのまま適用するのが難しくなっています。
具体的には、コスト削減のために管理職の数を減らしたり、IT化を推進することで対面でのコミュニケーションを取る機会も減っているのが実情です。
特に、新型コロナウイルスの影響もあり、テレワークが推進されたことも大きな要因です。
上司1人当たりの部下の人数は増加している一方で、部下と対面して直接的にコミュニケーションを取る時間が大幅に減少しています。
さらに、組織のフラット化が進んでおり上司と部下という縦のつながりが薄くなり、逆に同僚や部下、他部門といった部門横断的な仕事の進め方が求められています。
他にも、成果主義の浸透によって、フェアな人事評価制度が注目されて、360度評価の存在価値が高まっているのが実情です。
360度評価を導入する目的
360度評価を導入する目的としては、主に2つ存在します。
それぞれの目的に応じて、どのように360度評価を行うべきかが変わってきます。
まずは目的を明確にして、目的を満たせるように360度評価を取り入れましょう。
従業員のモチベーションアップ
企業活動が活発化するためには、人材育成や社員のモチベーションアップが欠かせません。
従業員からすれば、自分自身が上司からどのように評価されているのかがとても気になるものです。
同僚や部下からもどのような人間だと思われているのかも気になりますよね。
360度評価を導入することで、多方面から評価されることによって、自分自身がどのような評価をされているのかが認識可能です。
同時に、公平な評価によって「努力すれば評価される」という意識が高まり、モチベーションアップが期待できます。
他にも、スムーズな人間関係によって組織運営を意識した人材育成が可能となります。
公平な評価を実施するため
上司が部下を評価することを単独評価と呼びますが、上司の部下に対する個人的感情に従った評価のぶれや不公平は、どうしてもつきまといます。
その点で、360度評価は評価時に発生しがちな単独評価のデメリットを補正できます。
立場の違う複数の評価者が評価を実施することによって、評価対象者に関する評価の公平性や客観性が実現可能です。
360度評価で得られた結果は、処遇へと反映させるのが一般的であり、従業員からすれば「成果を上げれば対価が得られる」ということへの担保となります。
360度評価のメリットとデメリット
360度評価によって、企業側に様々なメリットをもたらします。
一方で、安易に導入することで企業側に不利益になるケースもあるので、事前にしっかりデメリットを認識して導入することが重要です。
ここでは、360度評価のメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。
360度評価のメリット
360度評価を導入することによるメリットとしては、先に取り上げたように客観的な評価が可能となるという点などがあります。
具体的なメリットについて解説します。
客観的な評価が可能となる
360度評価では、複数で特定の従業員を評価する制度であり、評価結果がよりフェアなものとなります。
従業員側としても不公平な評価は下されないことを担保された制度でもあり、不公平な評価によるモチベーション低下を防止できます。
従業員の長所と短所を見抜ける
360度評価の特徴として、本人も自分自身に対する評価を行うという点があります。
基本的に、同じ項目に対して自分自身への評価と他者からの評価を比較することが可能で、今まで気づかなかった自分の強みや弱みを明確にできるのです。
改善点がある場合は、それを自覚して強みに変えるような活動につなげることも可能です。
他人から成長を促されるよりも、自発的に自己啓発を行った方がより真剣になって取り組む傾向があり、その方向に自然と誘導することができる点もメリットとなります。
信頼できる評価を得ることができる
360度評価で得られた評価結果は、評価された従業員としては納得しやすいものです。
単一評価では納得できないと感じる評価をされた場合、評価対象者が不満を抱いて公平に評価されていないという思いが強まります。
一方で、360度評価は客観性が担保されるために、周囲からどのように評価されているのかという形で、評価結果について比較的納得した形で受け入れられてもらえます。
人間関係を容易に把握できる
企業側としては、社会門だともなりかねないハラスメントには特に注視しなければなりません。
コンプライアンス順守を問われる中で、企業内でパワーハラスメントやいじめなどがあってはならず、もし把握した場合は早急な原因究明と対策が必要です。
これを放置していると、やがて大きなトラブルに発展し、それが明るみになって多くの代償を支払わなければならなくなります。
人事担当としては、従業員同士の関係性を常に監視する必要がありますが、そこで一つの情報となりえるのが360度評価です。
360度評価において複数の要員が評価した際、明らかに一人だけが正当性の低い評価を付けた場合、人間関係がうまくいっていない可能性が高くパワハラやいじめなどが起きている可能性も否定できません。
360度評価をうまく活用すれば、このようなトラブルを可視化できるという点もメリットとなっています。
管理職の育成につなげることができる
360度評価は、何も労働者だけに対して実施するものではなく、管理職に対しても実施します。
普段は部下を評価する上司が、部下からの評価を受けることで、自分の行動を客観的に分析できます。
今までに気づくことがなかった自分への信頼の度合いや、部下が溜めている不満が明らかになり、より良い関係となるきっかけ作りとなるのです。
また、上司に対して部下の方から評価を行えることにより、今までは一方的に評価されてきたものが双方向での評価となって企業や上司に対しての信頼性を高める効果も期待できます。
360度評価のデメリット
360度評価の主なデメリットには、次のような点があります。
馴れ合いの評価になりがち
360度評価では、従業員同士による評価を実施することになります。
特に、同じ部署の従業員同士で360度評価を行うケースでは、どうしてもなれ合いが生じがちです。
具体的には、お互いの評価を高めるために談合したり、普段から好意にしている同僚や同期に対して甘く評価するなど、実態とかけ離れた評価となってしまう可能性があるのです。
逆に、人間関係が良くない従業員に対して、不当に低い評価を行うことも想定されます。
人事部門として、評価を行う前に適切な評価方法を従業員に周知した上で実施することが重要です。
主観的な評価になりやすい
従業員側が評価をするとなった場合、いざ評価を行うと主観が入りがちです。
従業員が感情のままに評価を実施しては、公平な評価とは言えません。
人を評価するというのは意外と難しく、初めての方が下準備もなく行えるようなものではありません。
360度評価の導入を行う際には、全従業員に具体的な方法や目的を伝えて、必要に応じて初期教育を行うなどの対応が必要です。
常に評価を意識した行動となりがち
部下が上司を評価するために、上司としては部下からの評価が常に気になりがちです。
これによって、部下に対して厳しい指導が行えなくなり、組織力の低下へとつながる場合があります。
よって、部下が上司を評価する場合は評価項目について吟味して限定すること、部下とのコミュニケーションを常に取り、厳しい指導となった場合にも相手に指導内容が正しく伝わるように取り組むといった工夫が必要です。
工数と時間が発生する
360度評価を真剣に取り組むと、全従業員の負担が増加します。
従来は上司がメインで担当していた業務を、全従業員が行うことになるため、評価にかかる工数と時間が会社全体で増加するのです。
さらに、評価内容を確認する人事担当者に対しても、負荷が高まります。
360度評価を導入する場合、容易に管理できるツールを同時に活用するなどの工夫が必要です。
360度評価の導入の流れ
360度評価を実際に導入するまでの流れをステップ毎に詳しく解説します。
評価軸を決定する
導入初期の段階で、評価軸を決めます。
評価軸は、評価対象と評価結果をどのようにして運用するのかで大きく異なります。
チームや部署の単位で項目を変化させるケースでは、業務に直結した評価軸とします。
逆に、全社的に同一項目で実施するケースでは、部署に依存するようなものは設定不可能であり、全員が持つべき行動基指針などを評価軸としてください。
評価項目を決定する
業務に直結した評価軸を設計する場合、評価項目も詳細に設計可能です。
例えば、エンジニアに対する評価項目としては、項目が多くなりがちです。
あまりに評価項目が多岐にわたると、評価者に大きな負担がかかることもあり、如何に項目を絞れるかが重要となります。
全社員向けの評価軸では、全員が持つべき行動指針や企業文化自体が評価項目として設定可能であり、いたってシンプルです。
評価項目設定時に注意したいのが、自由記入欄の有無をしっかりと検討すべき点です。
自由記入欄は、記入した個人が特定されやすいという難点があります。
また、マイナスなフィードバックの場合は強い言葉になる傾向があるために、無理に自由記入欄を設定しないというのもよいでしょう。
評価基準の決定
評価基準には、主に以下3つがあります。
- 加点方式
- 加点減点方式
- ポイント分散方式
加点方式は、各項目に1−5段階などの任意の数字を入力して加点していく方式です。
もし入力できない項目があれば、ルールを明確にしましょう。
加点減点方式は、各々の項目にプラスとマイナスで任意の数字を入力します。
加点減点方式でも、最低数と最高数をあらかじめ決めておきましょう。
ただ、被評価者からすれば減点はストレスを強く感じるために、慎重に行ってください。
減点をする場合にはその具体的な理由と改善点を示した方がベターです。
ポイント分散方式とは、一人当たりの持ちポイントを決定しておき、各項目に割り当てて行う方法です。
プラスとマイナスの両方にポイントを割り当てる方法も存在しますが、減点方式と同様にマイナスポイントの採用はよく考えた上で導入しましょう。
実施手段の決定
実際に360度評価を行う上で、主にシステムを使用して行います。
小規模で行う際には、フォームやスプレッドシートを用いて対応できますが、個人情報にもつながる内容が含まれるため、権限設定には細心の注意が必要です。
評価対象者の決定
評価対象者としては、ランダム型と指名型があります。
ランダムの場合は、ランダム対象とする範囲を選択します。
ここでポイントとなるのが、直属の上司を含めるかどうかです。
範囲を広げすぎると、普段関わりが無く評価できないというケースが発生します。
指名型の場合は、被評価者が評価者を指名する形で評価を進めるのが特徴です。
評価者は多ければ多いほど、評価の平均値がフラットとなりがちですので、10人程度に抑えるとよいでしょう。
また、指名制では特定個人に評価依頼が集中するケースがあり、ある程度調整が必要になります。
説明会の実施
360度評価をなぜ導入するのか、どのようなメリットがあるのかなどを、全社向けに説明会を実施します。
そして、説明会後や説明中に質問受付窓口を設定して、疑問に答えることが重要です。
ポイントとしては、なぜ実施するのかと得られるメリットを丁寧に説明することです。
会社で決めた施策だとしても、実行メンバーからするとそこにやるべき理由と得られるメリットがなければモチベーションを上げて取り組むのは難しいです。
あくまでも、会社や上司のためではなくメンバー全員にメリットがあるということを周知して、取り組んでもらう必要があります。
360度評価を効果的に運用するポイント
360度評価を導入すると、様々な諸問題によって、結果的には制度自体が形骸化したり、廃れてしまうことも多いです。
そこで、効果的に運用するポイントを理解して、実践することが重要です。
360度評価を効果的に運用するポイントについて、詳しく解説します。
全ての従業員を対象として行う
360度評価の対象は、使用者・労働者含めて全従業員とするのが一般的です。
特定の従業員だけが評価したりされたりするのは、公平性や客観性に欠けてしまいます。
360度評価を導入するのであれば、全従業員をターゲットとして評価を行いましょう。
平均化した数値を評価得点として採用する
実際に360度評価を実施した結果について分析すると、評価結果に大きなばらつきが出ることが多いです。
また、被評価者と評価者との関係性によって、評価が大きく変化するケースも往々にしてあります。
より公平な評価を行うことが360度評価の大前提であり、最終評価を決定する際には平均値を評価得点とするのが一般的です。
フィードバックは定期的に行う
ただ評価をするだけでは、意味がありません。360度評価を実施した上で、次の行動につながるように評価の結果を本人に伝えることが重要です。
単なる結果の伝達だけでなく、評価対象者自らが改善点を見出すように仕向けるようにしましょう。
他者からの評価を受けることによって、従業員のモチベーションの向上が期待できます。
どのように評価が反映されるかを明示する
評価を行う目的については、事前に従業員に周知する必要があります。
なぜ評価される櫃夜があるのか、そして評価を行わなければならないのかが曖昧なままでは、適切な評価を実施できません。
また、評価結果をフィードバックされても、どのようにして受け止めるべきかもわからないものです。
よって、360度評価を実施する前段階で、全従業員に対して評価の目的と反映先を示しておく必要があります。
匿名性を担保する
360評価において、評価する側としては適切な評価をしたくても評価した内容が被評価者にフィードバックされた際に、誰が評価した結果であるかが知られるのは嫌なものです。
特に、仲が良い関係性であっても公平に評価した場合、その結果によっては相手との関係性が悪化する可能性もあります。
評価の内容が偏らないため、評価対象者が評価に対して不信感を抱かないようにするため、評価内容や点数については絶対に周囲に漏れないように慎重に取り扱ってください。
また、フィードバックを実施する際には、誰からの評価により採点されたのかがわからないよう慎重に運用してください。
良質なフィードバックを返そう!360度評価でコメントを書くときのポイントは?
360度評価では、公平な評価結果を如何に上手にフィードバックできるかが重要です。
単なる数値上の結果だけでなく、その結果から被評価者が今後成長するためのきっかけとできるかが鍵となります。
そこで、どのようにしてフィードバックすればよいのかについて、ここでは具体例を交えて解説します。
褒めると指導するを適度なバランスで取り入れる
フィードバックでよくありがちなのが、目標を達成できなかった場合に、その点についてのみコメントしたり本人に伝えるケースです。
確かに、達成できないことについて原因を究明して、目標を達成するように改善を図ることは重要ですが、フィードバックされる側にとってはネガティブなことばかり伝えられても嫌になるものです。
そこで、良かった点も積極的に取り入れてコメントするとよいでしょう。
良い点は、意外と本人が気付いていないケースが多いです。
プロセス上での努力であったり心掛けていたこと、改善に取り組んだ姿勢について取り上げると効果が高まります。
ただ、注意すべき点としては褒めることばかりに偏らないことです。
また、他の社員と比較して褒めるのは厳禁で、比較された相手に嫌な思いをさせる可能性があります。
具体的なコメントに終始する
フィードバック時のコメントとして、「期待している」であったり「頑張りましょう」という言葉を使いがちです。
ただ、このコメントはあまりにも抽象的であり、具体的に何を期待しているのか、何を頑張ればよいのかがわかりません。
フィードバック時のコメントでは、「今後○○について頑張りましょう」や「○○分野について成長することを期待する」など具体性を持たせます。
フィードバックを受ける従業員が、何をどれだけ要求されているのかが伝わるような記載が理想です。
これによって、次のフェーズに向けてどのような行動をとるべきかを理解してもらう効果が期待できます。
360度評価を運用する際の注意点
360度評価をおこなうにあたって、注意点を押さえておこないましょう。
それぞれの注意点を押さえることで、無駄にならない360度評価をおこなうことができ今後の社員の発展につながります。
ここで挙げる360度評価の注意点は、以下の通りです。
- 育成視点の360度評価は報酬に反映させるべきではない
- 導入の目的は人材マネジメントである認識を持つ
- 評価項目は執務態度をメインにする
- 評価後のフィードバックを忘れない
- 評価得点は平均値に設定する
上記の注意点を踏まえて、360度評価をおこないましょう。
それでは、それぞれ詳しく見ていきます。
育成視点の360度評価は報酬に反映させるべきではない
育成視点での360度評価をする際は、報酬決定に直接反映させないようにしましょう。
部下と上司での評価にギャップが生じ、報酬に見合っていないことに繋がるからです。
本来、人事評価というのは、評価された者が多くの報酬を得られるという仕組みでした。
しかし、360度評価は上司や人事だけでは評価しづらい部分を評価するというものです。
要するに、上司などの人事評価で補えない部分を360度評価で補うというイメージですね。
360度評価を鵜呑みにして報酬を上げてしまうと、報酬に見合った働きができるかは不透明ですよね。
そのため、人事評価と360度評価は切り離さなければなりません。
360度評価はあくまでも報酬を決定するための材料といっていいでしょう。
導入の目的は人材マネジメントである認識を持つ
360度評価は人材をマネジメントすることにつながります。
なぜなら、評価対象者の見方や能力値が幅広く見えるようになり、適切な評価につながるからです。
上司のような立場の人間では、立場の違いから部下の隠れた性格や能力を把握することが困難になります。
また、育った世代が違うなど考え方も異なることでしょう。
しかし、360度評価を取り入れることで、上司含む人事の人間の評価のみならず部下や対象者の同世代の評価を聞くことができ両者の考え方をすり合わせることが可能になりますよね。
トータルした評価を踏まえて今後の人材育成などに参考になる部分があるかと思いますので、人材マネジメントの視点で360度評価をおこなうことは重要です。
評価項目は執務態度をメインにする
360度評価をおこなう際は、執務態度をメインに評価項目を設定しましょう。
定量的な評価が見える「成果」の部分や、個人の「能力」という点は、なかなか評価をすることが難しいからです。
より近くで見ることができる「執務態度」をメインで評価することが、360度評価の狙いでもあります。
執務態度は日常の仕事する姿や、様子を観察することで評価が簡単にできます。
また、上司や人事の方は評価対象者の普段の姿をあまり見ることができないかもしれません。
そのため、評価対象者と同じ時間を過ごしている同期やチームメンバーの方が、よりリアルな評価ができる可能性が上がりますよね。
上司や人事の方たちでは補えない評価をするためにも、評価項目には「執務態度」をメインにしましょう。
評価後のフィードバックを忘れない
360度評価をし終えたら、フィードバックは必ずおこないましょう。
評価を踏まえたうえでフィードバックをすることで、評価対象者の今後の動きに変化が生まれるからです。
評価する際に効果的なフィードバックをするときには、以下の点に注意してみましょう。
- アドバイスと激励のバランス
- 具体的な行動方法のアドバイス
上記のポイントを押さえることで、評価される側は今後の活動に前向きに取り組むことができます。
また、「具体的な行動方法」に関しては実際に行動する方法を参考にすることができるので、非常に効果的です。
アドバイスと激励のバランスを調整し評価対象者のことを思ってフィードバックをしてあげることが、効果的なフィードバックと言えるでしょう。
評価得点は平均値に設定する
360度評価をおこなうと、幅広い立場の人間から評価が集まります。そのため、評価得点を平均値に設定しなければなりません。
なぜなら、立場に関係なく平等に評価しなければならないからです。
例えば、A君(一般社員)とBさん(上司)がC君の評価をしたとします。A君C君に5点をつけましたが、Bさんは10点をつけました。この場合、立場が上であるBさんの評価を採用してしまうと、C君の評価は10点になってしまいます。
このようなことにならないように、A君とBさんの評価点を足して2で割ることで、C君の評価点は「7.5点」となり平等な評価をおこなうことができるというわけです。
今回は2人での例えでしたが、本来であればもっと多い人数での平均値になるでしょう。
360度評価は多くの人間が評価対象者をどれぐらい評価しているのかが、一目で可視化することが可能になっています。
【実例】360度評価の評価項目
360度評価は社員全体の評価を可視化できることで、会社からどのような評価を得ているのかを一目でわかることできます。
しかし、360度評価の運用方法を誤ってしまうと、正しい評価を表示することが難しくなるでしょう。効果的な360度評価をおこなうためにも、評価項目を整えることが大切です。
ここでは、実際にあった「360度評価での評価項目」をご紹介します。
【一般社員】
- 態度
- 印象
- 対応力
- 部署ごとの態度
- チームワーク力
- 業務遂行
- 挨拶
【リーダー系社員】
- 課題思考力
- 目標達成力
- 判断力
- リーダーシップ
- コミュニケーション
- 人材育成
上記では「一般」と「リーダー系」と分けてご紹介しましたが、かなり異なることがわかりますよね。
上記の項目を参考にし、効果的かつ正しい社員への評価をおこなうようにしましょう。
360度評価を導入した企業の事例
360度評価は、大企業を中心として様々な企業で取り入れられています。
ここでは、実際に360度評価を導入して成果を上げている企業をピックアップして紹介します。
日商エレクトロニクス株式会社
引用元:日商エレクトロニクス株式会社公式HP
日商エレクトロニクス株式会社では、2018年の部長研修における最重要テーマとして360度評価を実践し、それを社内展開しました。
当初は、同僚や部下から自分に対する評価のギャップに悩みましたが、価値ある気づきを多く得られるチャンスが増えました。
一度トライアルを実施した後に、対象や評価項目のパターンを増加させて本運用がスタートしています。
評価をする立場になってもらうこと、評価を定期的に繰り返すことを大切にすることで、360度評価から成果に繋がったのです。
テルモ株式会社
引用元:テルモ株式会社公式HP
健康志向の高まりから、血圧計などを製造販売しているテルモ株式会社に注目が集まっています。
そのテルモ株式会社では、2011年と早い段階から360度評価を取り入れています。
360度アンケートと呼ばれる活動を実施し、国内の役員と部門長クラスに対して、年1回実施しているのです。
360度アンケートの結果は人事評価のインプットとはしない代わりに、社内へ公表して誰でも閲覧できる状態です。
アンケートの質問カテゴリーは計15項目あり、各々の項目において5段階で回答する形を採用しています。
また、やって欲しいこととやって欲しくないことについて、自由にコメントできるコメント欄も2カ所設定しています。
この活動により、結果として風通しの良い社風が生まれました。
株式会社クレディセゾン
引用元:株式会社クレディセゾン公式HP
株式会社クレディセゾンは、主に金融系サービスを展開している会社です。
株式会社クレディセゾンでは、職場の人間関係形成などを目的として、MAPと呼ばれる活動を始めました。
MAPは、2012年にスタートして日頃の自分の行動特性を理解して現状を把握し、行動を変えることなどをターゲットとしています。
年1回、全社員を対象として行っており、評価対象者が評価者を指名して、上長は人選に偏りがないかをチェックします。
質問項目は、7つのタイプの中から1つを選択して、設定されている「BQ・ビジネス感度」に基づく28項目に関して5段階で評価されるのです。
28項目は、初期設定のままではなく毎年ブラッシュアップされており、評価結果は夢中力タイプだけの比較にとどりません。
イラストなどを積極的に取り入れて、分かりやすさを重視して親しみやすさを重視しています。
「BQ・ビジネス感度」の総合結果は、評価対象者と評価者の回答の数値的な比較だけでなく、グラフ化することによって視覚的にフィードバックされるのです。
MAPの導入によって、企業が持つ価値観や、行動指針に対する社員の理解を深める良いきっかけとなりました。
住商セメント株式会社
引用元:住商セメント株式会社公式HP
住商セメント株式会社では、被評価者への気づきの機会を与えることを期待して、管理職をターゲットに多面観察が検討されていました。
導入以前は、部下に指示を出すだけの上司や、部下から上がってくる声に対して聞く耳を持たず、改善すべき点が見えない状況が横行していました。
そこで、匿名性を担保しつつ、率直にフィードバックできるきっかけとして360度評価が導入されたのです。
まだトライアルの段階ではありますが、シンプルなシステムを導入することで活用してもらいやすい環境が整えられています。
クラスメソッド株式会社
引用元:クラスメソッド株式会社公式HP
クラスメソッド株式会社では、AWS事業本部において360度評価に取り組んでいます。
50名弱と決して大きな規模ではありませんが、マネージャーを増やしマネジメント範囲を絞るために360度評価にチャレンジした形です。
360度評価を実施する上で、まずは評価軸を決めることに注力しました。
そして、カルチャー5項目、エンジニアリング5項目、合計27項目の評価項目を決めて、運用を始めています。
フィードバックするだけでなく、振り返りを行うことでトライアルから本運用につなげようとしています。
360度評価で風通しの良い企業を目指そう!
360度評価は、公平な評価を実現できるだけでなく、モチベーションを高めるなどの効果が期待できます。
ただし、安易に導入しても失敗するケースが多いのです。
まずは、どのような効果を期待したいのかをしっかりと話し合い、目的に応じて最適な360度評価の仕組みを構築しましょう。