マーケティング関連の仕事でよく耳にする機会も多いであろう、
MA(マーケティングオートメーション)ですが、皆さんはどのようなイメージをお持ちですか。
「色々種類があって分からない」「自分は営業だから別部門の仕事だと思っている」「正直、MAなんて初めて聞いた…」。このように考える人もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、最近よく聞くMAとは何なのか、できることや事例を解説します。
最後まで読むことでMAの知識が増え、導入の検討や見直しに役立てられるので、ぜひご覧ください。
目次
そもそもMA(マーケティングオートメーション)とは?
従来、主に営業が新規顧客の開拓や既存顧客への継続的なアプローチを行っていましたが、
それにデジタルマーケティングの手法を取り入れた仕組み、またはソフトウェア・ツールのことをマーケティングオートメーションといい頭文字をとって【MA】と言われることが多いです。
これらを手動でやるとなると、コストや時間がかかり、各個人の能力やノウハウに依存してしまうこともあります。
見込み客リスト作成、新規営業、商談発掘などの営業活動をMAツールで自動化することで効率の良い営業方針が分かり、情報管理の負担も減らせるのです。
インターネットやAIが普及した現代ビジネスでは、MAは必要不可欠といっても過言ではありません。
なぜ、MA(マーケティングオートメーション)が普及したのか
MAの概念は1990年代にアメリカで誕生し、日本には10年以上遅れて入ってきています。
これまでの日本の営業スタイルは、足を使って顧客訪問し、対面で膝を交えて話すのが一般的でした。
ではなぜ、旧来のアプローチが影を潜め、MAが普及しだしたのでしょうか。
理由1:インターネットの普及によって変化した、購買プロセス
インターネットの普及により、顧客の購入プロセスに大きな変化がもたらされました。
今までは受動的に営業の訪問を受けて話を聞くか、電話で問い合わせて営業から直接資料をもらうなどで、人を介した接点が生れました。
しかし今では購入の際、まず自分でインターネットから情報収集します。
必要な情報や資料はインターネットから手に入り、比較も容易にできるので、
わざわざ時間と手間をかけて担当営業から話を聞く必要がなくなったのです。
理由2:プロセスの変化によって、法人営業の手法の変化が必要になった
購入プロセスの起点がインターネットに移行したことで、営業手法もWeb中心にならざるをえなくなりました。
Webにない情報は存在しないに等しくなり、資料のダウンロードから購入までのプロセスも、全てインターネット経由で行われることが当たり前に。
こうなると、人力で営業活動をして情報を集めるよりも、ネットへのアクセス記録を分析して方針を立て、
営業アプローチはメールやWeb広告で行うほうが効果的です。
Webマーケティングならば情報は明確に数値化されるので、より高度で深い分析ができるようになります。
理由3:コスト削減が求められるようになった
これまでの企業は売り上げの拡大とともに成長してきましたが、経済市場が縮小し「失われた30年」と呼ばれるこの時代では、利益をあげるよりもコストカットが急務です。
売る側なら、MAを導入することで営業やマーケティングにかかる人件費を削減でき、縮小傾向にある市場でより効率的に商品販売を行えます。
また買う側なら、営業による手厚いアプローチよりも、徹底的にコストカットされた安くてそこそこ使える商品の方がありがたい。
日本の社会全体に余裕がなくなってきたことで、より効率的な手法にシフトせざるおえなくなったのです。
(MA)マーケティングオートメーションが自動にできることとその特徴
インターネットの普及により、現代のビジネスにはMAが欠かせない存在になりました。
ここからは、具体的にMAによって何が自動化でき、何が解決できるのかを解説していきます。
具体的に(MA)マーケティングオートメーションができる作業
MAによって、これまで手動で行っていた管理やマーケティングに関する作業を自動で行えます。
見込み顧客リストの管理
見込み顧客リストの管理とは、すなわち機会損失の削減です。
今までは営業が商談にこぎつけても、名刺情報や商談内容を管理・分析するまでに至らないケースがありました。
「商談不成立だった顧客のニーズを社内の別部門なら満たせるのに、情報の共有や分析が不十分だったために活かせなかった」、というのはとてももったいないです。
MAの名刺管理ソフトでは、情報をデータベースに保存することで、
業種・ニーズ・Web行動履歴・相手の役職などを整理して管理・分析でき、特定のリストも瞬時に作成可能です。
メールによる見込み顧客への継続的なアプローチと効果測定
メールアドレスを取得した見込み顧客に対し、メールでのアプローチを自動で行えます。
メールといえば、新商品の告知やイベント・セミナーの集客といった売り込み時にだけ活用する企業も多く、そうしたメールに対する見込み顧客の反応は冷ややかです。
MAではこうした一斉送信のメルマガだけでなく、顧客の行動フェイズに合わせて内容を変えていく「ステップメール」や、
設定した行動を取った人に対して送る「トリガーメール」など、より効果的なアプローチを自動で行えます。
さらに、メールの開封率やURLのクリック率、CV率(コンバージョン、成果率)も自動で計算できます。
顧客のニーズや行動を明確な数値として把握することで、試行錯誤しながらより適切な施策を打てるようになるのです。
リアルタイムでサービスを検討している顧客の可視化
Webサイト上での行動履歴を取得できるので、どのくらい導入の見込みがあるかをスコアリングし、
角度の高い見込み顧客から優先的に営業をかけることもできます。
商品ページや事例を何度も閲覧している絶好のタイミングでアプローチをかけられれば、それだけ営業の効果も上がるでしょう。
Webサイトには競合他社を含めあらゆる商品情報が掲載されており、
情報過多で検討時間が長くなればなるほど、見込み顧客は目立った情報に流されやすくなる傾向があります。
適切なタイミングでこちらからアプローチをかけられるのは、大きなアドバンテージになります。
(MA)マーケティングオートメーションが解決できる課題
MAのさまざまな機能は、具体的にどのような課題を解決できるのでしょうか。
どの企業でも心当たりがあるような課題ばかりなので、自社に当てはまっているかどうか、チェックしながら見てみてください。
競合他社からの提案で手遅れ状態になってしまう
商品によっては、どの企業もクオリティやサービスに大差がなく、
昔からの関係性やタイミングといった外的な要素で購入が決められてしまうパターンも少なくありません。
そのため、見込み顧客が検討を始めてすぐのタイミングでアプローチをかけ、競合他社よりも早い段階で接触したほうが有利です。
もし仮に商談にありつけなかったとしても、見込み顧客の行動情報は把握できるため、ニーズの変化を分析して次につなげられます。
見込み顧客との接触した履歴を追う事が出来ない
新規営業や展示会で名刺交換を積み上げたとしても、接触場所や回数、想定されるニーズや相手のリアクションなどを手動で一元管理するのは難しいです。
その後、直接商談や検討までこぎつけたとしても、それが営業努力によるものなのか、商品が相手のニーズを満たしているのか分からないという問題もあります。
こうした問題を解決するためには、適したMAツールを導入し見込み顧客の情報を自動で収集・管理し、行動履歴まで把握できるような仕組みを用意する他ありません。
業務過多により担当者の業務効率が上がらない
MAで自動化できる仕事をマーケティング担当が手動でやろうとすれば、
業務過多や情報不足によるミスや抜け漏れが起こり、業務効率は悪くなるでしょう。
営業が顧客の情報を漏れなくマーケティング担当に共有し、
それを管理・分析してリスト作成や方針決定を行うのはハードルが高く、大きな負担になります。
それに数値が出なければ、マーケティングの効果が出ているのかという検証も難しいので、正当な評価もされにくい場合もあります。
手あたり次第の営業で、時間だけがかかる
営業活動では、テレアポや訪問営業で数を稼ぐことも時には大切です。
しかし、やみくもに手当たり次第の営業をするのは、得策とは言えません。
先ほども述べた通り、商品の主な情報源はネットになるので、いきなりのテレアポや訪問営業はむしろ迷惑行為と捉えられてしまいます。
営業をかけるなら、より角度の高い見込み顧客に、適切なタイミングで行う必要があるのです。
顧客ニーズが可視化されていないと、チャンスを取りこぼしてしまったり、逆に悪い印象を持たれてしあったりと、労力に見合った成果が得られないことも多々あります。
(MA)マーケティングオートメーションの導入した際のメリット
MAの導入により、業務上の生産性は格段に上がります。
ここからは、MAを導入するメリットについて解説します。
一度獲得した見込み顧客を保管できる
見込み顧客のデータは、たとえ受注できなくとも大切な情報になります。
しかし情報の共有や管理を手作業で行うのは非常に手間がかかり、リストアップや検索すらまともにできないことも。
一度獲得した情報は自動的に保管・整理されるので、古い情報でも必要に応じて、いつでも容易に検索できます。
リストの優先順位を可視化できる
Webでの行動履歴から受注角度の高さをスコアリングできるので、
誰にどのようなアプローチを優先的にしていけばいいのか、一目でわかります。
優先順位を可視化することで、人手が少ない中でも効率の良い営業活動ができるようになるのです。
営業の生産性が向上する
手当たり次第に数を打つことばかりの営業では、とても費用対効果に優れている手法とは言えません。
MAを導入すれば、数値に基づいた分析データによって効率の良い営業活動が可能です。
営業にかける時間やコストを抑えることで、生産性を向上させられます。
ツールの一元化でマーケティング活動が楽になる
マーケティングツールや営業ツールを使い分けていると、ツール間の連携が取れないことで、報の共有や分析が難しくなります。
ツールを一元化することで、部署やチーム間の垣根を越えて情報を集約でき、マーケティング活動に活かしやすくなるのです。
MA・SFA・CRMのできることとその違い、それぞれの特徴・役割まで
ここまでMAについて解説してきましたが、現在注目されているマーケティングツールには、
MAの他に「SFA(セールスフォースオートメーション)」「CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)」があります。
これらはMAとはどのような違いや特徴があるのでしょうか。
SFA(セールスフォースオートメーション)
SFAは、見込み顧客の情報や分類、営業の内容と反応、今後の方針など、営業活動に関するあらゆる情報をデータ化するツールです。
営業活動に際して得られた成果や反応をデータ化して共有することで、適切なアプローチに必要な情報や、試行錯誤のための材料になります。
また、営業成績を上げるためだけでなく、引継ぎやノウハウの共有による人材育成にも役立つのが特徴です。
個人の関係性やスキルに依存することなく、営業全体として効率のよい管理・アプローチを実現するためのツールとなります。
CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)
SFAが営業開始から受注までをサポートするツールなのに対し、CRMは顧客との関係を維持・向上するためのツールとなっています。
顧客が受けた営業内容から、意見やクレーム、他の商品の購入履歴、新たに生まれたニーズや動向変化まで、商談成立後の情報をトータルに集積。
それらを分析し、適切な顧客フォローの方針を打ち出します。
顧客の満足度を向上させることで、一度売って終わりではなく、長期的な収益を見込めるような関係を築きます。
各ツールの一番良い使い方
MA、SFA、CRMの各ツールは、担っている役割こそ違うものの、マーケティングから営業、フォローアップといった一連の流れでつながっています。
しかしいきなり全てのツールを導入するのは、費用の面で問題があったり、社員を混乱させてしまったりするかもしれません。
そこで、自社の課題や強化したい部分に合わせて選択することをおすすめします。
集客が悪いならMA、営業ノウハウの蓄積や共有が不足してるならSFA、顧客との関係が維持できないならCRMといったように、目的に合わせて導入を検討するとよいでしょう。
(MA)マーケティングオートメーションの成功事例
ここまでMAについて解説してきましたが、「メリットはわかったけど具体的にイメージできない」「本当に効果があるのか不安」と思った方もいらっしゃるでしょう。
ここからは実際に、「LINE Pay株式会社」「コクヨ株式会社」の事例をご紹介します。
新進気鋭のIT企業と歴史のある大手老舗、対照的な企業はそれぞれどのような成果を挙げたのでしょうか。
LINE Pay株式会社
キャッシュレス決済元年と呼ばれる2018年、新規参入組が急増する中で、「LINE Pay」の加盟店拡大を目的にMAの運用をスタートしました。
大企業に次いだターゲットは、中小規模店舗。
ただ、忙しく店舗ごとに課題が異なる個人店では、新たなサービスを導入するハードルは高いです。
そこでMAを活用し、WEB上での資料請求の仕組みを作り、メールでのフォローアップを実施。導入メリットを段階的に説明しました。
そして資料請求・申し込み情報に合わせてスピーディに架電し、見込み顧客の熱が冷めないうちにアプローチをかけます。
結果、導入から1年後にはWebサイトからの加盟申し込みが110~140%で推移するようになりました。
セミナーの告知・スケジュール管理や、営業訪問時の優先順位づけにも役立っており、今後はDMなどのコミュニケーションチャネルへも対応も進めていく方針です。
引用元:Adobe
コクヨ株式会社の成功事例~新規見込み顧客の獲得~
コクヨは1905年から続く老舗の大企業ですが、2020年以降の景気の冷え込みを考慮し、テクノロジーを活用した営業効率の改善を急務としていました。
そこでMAを導入し、見込み顧客の購入検討フェイズを可視化することで、競合よりも早いタイミングで効率よく営業を仕掛けようと考えたのです。
以前からも名刺管理ツールやSFAと組み合わせて営業の効率化を図っていましたが、継続なデータ取得が難しく、ボリュームが不足するといった課題がありました。
実際にMAを導入したところ、セミナー実施前後のフォローが自動化されて作業効率が上がり、集客率は3倍に。
また、資料請求率、新規顧客数、案件化率はそれぞれ10%上昇しました。
コクヨ本体と関連会社のコクヨマーケティングとの連携もスムーズになり、データの集約における会社間の垣根も無くなってきています。
引用元:Adobe
(MA)マーケティングオートメーションの注意点
ここまで、MAのメリットや成功事例について解説してきました。
最後に、MAの注意点や、よくある失敗例についてご紹介します。
ツールを使いこなせない
MAツールはハイスペックゆえに、設定や各機能の活用には手間や時間がかかります。
設定できる人が部署内におらず、「結局、一斉メールしか使っていない」なんてことも。
あるいはデータを収集できたとしても、それを分析して新たなコンテンツを作り出さなければ意味がありません。
メリットは大きいものの、完全にツール頼みでは、性能を活かしきれない危険性もあります。
そもそもサイトの訪問者が少なく、データが集まらない
せっかくツールを導入しても、そもそもサイトの訪問者が少なければ、
スコアリングのサンプル数が集まらないので分析もできません。
コンテンツ作りに時間とコストをかけているのに、費用対効果が明らかに合っていない。
このような状態になった段階で導入するのが適切でしょう。
営業と連携が取れない
もし営業主導ではなくマーケティング担当が管理しているなら、営業との連携も大事な要素です。
提案の軸や見込み顧客の評価基準は、営業が介入しなければ的外れになってしまいます。
導入の際は営業にも根回しをし、どのように活用していくかを話し合った方がよいでしょう。
まとめ
MAは現代のビジネスには不可欠と言っても過言ではないツールです。
手作業や感覚でやっていたマーケティングや情報管理も、自動化によって生産性は向上します。
また、ニーズの変化を読み取ることで、迅速な営業アプローチを仕掛けられます。
しかし、自社の課題や活用方法を考えずに導入しても意味はありません。
自社の課題の見直し、MAを管理する人員の確保、部署間の連携を強めておくことが、MA運用成功の秘訣と言えます。