BCPといえば自然災害への対策のイメージが強いですが、BCPはあらゆるリスクを想定し、備える必要があります。
特に近年では感染症リスクへの対策が重要視されており、BCPに盛り込む企業が増えています。
2020年に始まったコロナ禍では、事業が完全に停止した企業や、閉業を余儀なくされた企業が多く見られました。
そういった事態を避けるために、本記事では感染症対策をBCPに盛り込む際のポイントやフェーズごとの対策などをまとめました。
事業継続のためには感染症対策も重要です。
BCPをこれから策定する事業者や見直しをしている事業者は、ぜひ参考にしてください。
目次
BCPには感染症対策も含まれる
BCP(事業継続計画)は不測の事態が起きた時も、事業を継続・早急に復旧させるために、あらかじめ定める計画のことです。
BCPで備えるべきリスクは、地震や津波などの自然災害だけではありません。
火災や事故、従業員の不正、人為的ミスなど多岐にわたり、その中に感染症による被害も含まれます。
また、BCPで対策すべき感染症は、新型コロナウイルスだけではありません。
鳥インフルエンザやノロウイルス・ロタウイルスといった季節性の感染症、社内やイベントで起こる食中毒なども含みます。
まずは、事業における感染症対策の重要性をお伝えします。
事業継続には感染症対策も重要
事業継続のために、BCPには感染症対策も盛り込みましょう。
感染症による事業停止や売り上げの減少は、多くの事業者にとって記憶に新しいことでしょう。
特に世界的な規模の感染症の場合、落ち着いたと思っても第2波、第3波と、先の見えない状況が続くことも考えられます。
「帝国データバンク:『新型コロナウイルス関連倒産』」のレポートでは、2022年5月の段階でも、新型コロナウイルス関連で倒産した企業は増え続けています。
事業者にとって感染症は大きなリスクであり、事業継続のために取り組むべき対策です。
特に介護施設や病院では感染症対策が求められる
特に介護施設や病院では、感染症の対策が重要視されています。
介護業界では他業種に先駆けて、2024年からBCPの策定が義務化されました。
背景としては新型コロナウイルスの影響が大きく、高齢者が罹患した場合に重症化するリスクが高くなること、介護施設内でクラスターが発生するリスクがあることも挙げられます。
介護事業においては利用者の生命維持に直結し、また、職員が罹患して働けなくなると日常生活が送れなくなる利用者も出てくる恐れがあります。
介護・医療業界では、特に感染症に対するリスクが大きく責任も重いことから、感染症に重きを置いたBCPを早急に策定しましょう。
感染症対策BCPについて
感染症対策に重点を置いたBCPはその他のリスクに対するBCPと、どのような違いがあるのでしょうか。
代表的なリスクである自然災害に対するBCPとの違いを説明するとともに、感染症対策BCPマニュアルを整備する際のポイントをお伝えします。
自然災害BCPとの違い
自然災害BCPとの大きな違いは、感染症BCPは人に対する健康被害やリスク発生後の感染防止策に重点を置くことです。
また、突発的な災害と比べ、感染症リスクは影響が長期化する可能性もあります。
災害の場合は、事業を復旧できれば業績回復が見込めるケースも多いのです。
しかし感染症の場合は一度流行すると、特に集客型のビジネスでは長期にわたって来客が減少し、業績が悪化する恐れもあります。
ただし、季節性の感染症や海外からわたってくる感染症の場合、地震や津波などの突発的な災害に比べ、比較的準備しやすいのも特徴です。
準備できる体制をBCPにより平常時から整えておけば、感染症のリスクが目前まで迫ったとしても、感染防止策の徹底により被害はある程度抑えられます。
感染症対策BCPのマニュアルを整備するポイント
感染症対策BCPを策定するポイントは、以下の3点です。
- 感染防止策に重きを置く
- 事業継続においては人のやりくりが重要
- 正確な情報を得て、都度適切な判断が必要
重要なのは感染症を社内に持ち込まないことです。
消毒の徹底や「3つの密」(密閉・密集・密接)の回避、消毒液やマスクの備蓄、体調管理などは基本的なことですが、感染症対策としては不可欠な取り組みです。
備蓄品のリストや体調管理チェック体制などは、マニュアルとして整えておきましょう。
また、社内で集団感染が発生した場合、現場に出勤できる人員が大幅に減ってしまう恐れがあります。
事業継続のためには、人手が減っても対応できるよう日頃から教育・訓練を行ったり、急に出勤停止となっても業務が続けられるよう、リモートワーク環境を整えたりすることが必要です。
加えて、常に正しい情報を得る必要があります。
特に未知の感染症の場合は、誤った情報に企業自体が踊らされないよう気をつけましょう。
もしもの時のために情報の管理体制を整え、適切な判断を心がけましょう。
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【フェーズ別】BCPにおける感染症対策のポイント
感染症BCPを策定する上で、フェーズごとに行うべき感染症対策のポイントを解説します。
フェーズは、以下のとおりです。
- 平常時
- 感染初期~拡大期
- 社内での感染者発生時
1.平常時
平常時であれば、以下の取り組みを行いましょう。
- 定期的な備蓄品の確認
- 各自手洗い・消毒の実施
- 不測の事態に備えた訓練・研修
- BCP計画のメンテナンス・周知
リモートワーク体制が整っていないなら、平常時から試験的に導入しておくとよいでしょう。
2.感染初期~拡大期
感染初期には、以下の取り組みが必要です。
- 業務の絞り込み
- 不要不急の会議・出張の休止
- 時差出勤・リモートワークの導入
- 来訪者への検温・消毒の協力依頼
- 体調不良者の出勤停止
BCPで定めた感染予防・事業継続対応の本格的な実施を行います。
また、政府・自治体による支援を受けられる場合もあります。
少なからず影響を受けている企業は、確認を怠らないようにしましょう。
3.社内での感染者発生時
社内で感染者が出てしまった場合は前項の取り組みに加え、以下の内容も行いましょう。
- 職場内清掃・消毒
- 人員配置の見直し
- 感染確率の高い社員の洗い出し
大規模な感染症の場合、社内に感染者が出てしまうことは、仕方のないことと受け入れるのも大切です。
罹患した従業員を責めることなく、企業として適切に対応しましょう。
感染症流行中に自然災害が発生した場合の対応も検討しておく
BCP策定時はあらゆるリスクを想定するものであり、当然、感染症流行中に大規模な災害が発生する可能性も考えるべきです。
感染症対策をBCPに盛り込むなら、そういった事態も念頭に置きましょう。
たとえば、感染症流行中に大規模地震が発生した場合を想定すると、以下のような取り組みができます。
- 地震により長期間物流機能が停止した際の、備蓄品の確保手段の選定
- 感染症流行中に大規模地震が起きた場合を想定した、3密を避けた状態での避難訓練
- 地震直前に社内でクラスターが発生し、多くの従業員がリモートワーク中だった場合の初動対応の策定
感染症の流行と並行して起こるリスクには、さまざまなものが考えられます。
地域や自社の環境が抱えるリスクに合わせて、柔軟な対応ができるよう、徹底したBCPを策定しましょう。
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まとめ
感染症による企業への影響を、痛感した事業者は多いはず。
企業として今後も感染症リスクに備えるためには、BCPでの対策を講じておくことをおすすめします。
すでにBCPを策定している事業者も、これを機にあらためて見直してみてはいかがでしょうか。