社員の業績や能力などを把握するために用いられる「人事評価シート」。
自分の評価を左右するものですから、しっかりと書いて正当に評価されたいのではないでしょうか。
本記事では、書く時のポイントを中心に人事評価シートについて解説していきます。
人事シートの書き方だけでなく、人事評価シートの書き方も職種別に紹介するので、この記事を読めば自分の職種に応じた適切な人事評価シートの書き方がわかるでしょう。
人事評価シートを書く目的を5つ紹介
まずは人事評価シートを利用する目的を以下の5つに分けて紹介します。
- 社員の能力を正確に把握するため
- 社員の成長を促進するため
- 会社の方向性を正確にするため
- 社員の持ちベース四を向上させるため
- 正確に目標設定するため
企業が人事評価を何のために行なっているのかを理解しておくことは、人事評価シートを記入していく上でもとても重要です。
すでに知っているという人も、もう一度確認してみてください。
①社員の能力を正確に把握するため
与えられた業務をどのような質で行なえたかを評価することで、社員の能力を正確に把握する目的があります。
社員の能力を正確に把握できれば、人材を適切な部署に配置することもできますし、今後の育成計画を立てることもできます。
また、給与や賞与額を適切に設定するためにも役立ちます。
②社員の成長を促進するため
人事評価は社員の成長を促進するためにも役立ちます。
というのも、人事評価シートに記入することで社員は自分の成果や課題を確認することができ、優先的に身につけるべき能力や目標を把握することができるからです。
また、人事評価シートを定期的に振り返ることで、目標到達度や成長を確認することもできます。
社員が自分の過去の姿や現在の姿を評価として確認することで、より自主的な行動や成長を促すことができるでしょう。
③会社の方向性を正確に伝えるため
人事評価シートには会社の方向性を社員に伝えるという役割もあります。
人事評価シートは、企業がなにをもって社員を評価するのかという評価基準に沿って内容が構成されています。
そのため、人事評価シートへの記入を通して、会社が社員に求めている行動や成果がわかるようになっています。
会社が何を求めているのかを社員たちが理解することで、社員たちも同じ方向性で業務を行なうことができます。
④社員のモチベーションを向上させるため
正当な評価は社員のモチベーションを向上させることもできます。
自分に対する評価がどのように行なわれているのか不透明だと、評価がしっかりと行なわれているのか不満に思う社員も必ずでてきます。
人事評価シートは明確な評価基準に基づいて評価が行なわれるので、公平に社員を評価することができます。
人事評価シートを使って正当に評価し給与や賞与などにも反映することで、社員のモチベーションをしっかりと向上させることができるのでしょう。
⑤正確に目標設定をするため
人事評価シートには今後の目標も記載されます。
成果や課題を明確にしたうえで今後の目標を明確に設定することができるため、社員が目標に向かって自主的に努力できるようになります。
また、社員が設定した目標について会社も簡単に把握できるので、目標の内容や達成率を今後の評価や育成計画に活かすことができます。
人事評価シートに入れるべき要素
人事評価シートにはどのような内容が含まれるべきなのでしょうか。
ここからは、人事評価シートを策定する企業側の視点から、人事評価シートに入れるべき3つの評価項目について紹介します。
業績基準
業績基準は社員が達成した業績について評価するための基準です。
業績基準の評価項目の中には、数値目標の達成度や設定した目標の達成度、日常の業務でどれだけ組織に貢献したかなどが含まれます。
能力基準
能力基準は組織に貢献できる能力を評価するための基準です。
能力基準によって評価される項目には、以下のようなものが含まれます。
- 効率よく仕事を進めるための企画力
- 業務を自分の力で行なう実行力
- リスクに対応するリスク管理能力
- 問題を改善する改善力
情意基準
情意基準は社員の仕事に対する態度や、やる気など、数値化しにくい部分を評価するための基準です。
例えば、アクシデントが起こっても責任をもって仕事に取り組めたか、同僚と協力して業務を行えたか、積極的に業務に取り組めたかなどが評価されます。
人事評価を書く時のポイント7選
人事評価は今後の待遇や給与などにも直結するだけでなく、自分の成長にもつながるとても大事な工程です。
それなのに、人事評価シートの書き方がよくわからずに正当な評価を受けることができないのであれば非常にもったいないです。
ここからは、そのようなことがないように人事評価シートを書く時に意識しておきたいポイントについて紹介していきます。
①客観的に評価する
自己評価は、評価の根拠とともに事実を客観的に示して行ないましょう。
例えば「努力の結果業績が上がったように思う」「評価されるべき働き方をした」のような、主観的であいまいな評価をしてはいけません。
第三者の視点から自分を見つめなおし、客観的な事実に基づいて自己分析を行なうことを心がけましょう。
②数字を用いて評価する
客観的な事実として数値を用いることができる場合は、必ず具体的な数値もあわせて記載しましょう。
「売り上げ目標に対する到達度」や「前年同時期と比べた成長度」など、自分の実績を裏付ける具体的な数値があると説得力も増しますし、しっかりとした評価を受けることができます。
実績を数値で表しにくい場合も、具体的な行動をきちんと言語化して表すことを心がけましょう。
③結論から書いて、簡潔に評価する
結論から先に書くなどして、可能な限り簡潔に表すことも重要です。
というのも、人事評価シートに記入した内容を人事担当や経営層が評価する際に、結論がわかりにくいと評価をするのが困難になってしまうからです。
「何が言いたいのか」がはっきりと伝わるように、全体を通して簡潔に記入することを心がけましょう。
④前向きな振り返りをする
ポジティブな表現で前向きな振り返りを心がけましょう。
自分の課題や反省について言及する際にネガティブな表現で振り返ってしまうと、評価者の印象も悪くなってしまいます。
正当な評価を受けるためには、自己分析を正確に行なうのは前提として、評価者に良い印象を持ってもらうことも重要です。
自分の失敗や課題についても、ネガティブ表現ではなくポジティブな表現を心がけて、前向きに振り返りましょう。
⑤失敗や反省なども報告する
成果や実績だけでなく、失敗や問題点もしっかりと記載しましょう。
「評価が下がってしまうのでは」という不安を持つ人もいるかもしれませんが、失敗の原因を分析し成長の糧にしようという姿勢を示すことができれば、むしろ良い評価につながります。
「失敗は成功の素」という名言もあるように、自分をしっかりと見つめなおし、失敗や問題点も自分の成長に活かしていきましょう。
⑥改善点を記載する
目標を思うように達成できなかったり、十分な成果や業績を上げられなかったりした場合には、今後の改善点を具体的に記載しましょう。
今後どのように改善していくかという意欲の高さは会社にも高く評価されます。
加えて、改善策を現実的かつ具体的に策定できれば、対応力や改善力などのスキルのアピールにもつながります。
⑦実現可能な目標設定をする
高すぎず低すぎない程度の目標を設定することも重要です。
目標が高すぎるとどうしても到達できないし、逆に低すぎるとモチベーションが低下してしまうからです。
現時点での課題や将来的なビジョンなどの根拠をもとにした策定を心がけると、実現可能で意味のある目標を設定することができます。
職種別に人事評価シートの書き方と記入例文を紹介
人事評価においては、職種ごとに重視する項目も異なります。
どのような成果が生まれるのか、どのような能力が求められるのかは職種ごと、会社ごとに異なるので、人事評価にも職種に応じた違いが生まれるのは当然です。
ここでは、人事評価シートの書き方と例文を職種ごとに紹介していきます。
事務職の例文
事務職は基本的に数値目標を設定できず、実績を数値化しにくい職種です。
できるだけ具体的な根拠を示すように心がけながら、日常の業務での成果や企画力、改善力などをしっかりと盛り込んで評価を行ないましょう。
【例文】
週に5回依頼していた集荷作業を、部門間での調整を通して3回にまとめた。その結果集荷にかかる費用を前期に比べ10%削減。
また、当事者間に任せきりとなっていた引き継ぎ業務をマニュアル化した。その結果、それまで平均して1週間かかっていた業務の引き継ぎを3日で完了させることができるようになった。
営業職の例文
営業職は売り上げ目標達成率や契約獲得数など、実績を数値で表しやすいので比較的容易に評価を行なえる職種です。
自己評価を行なう際には必ず数値を根拠として、明確でわかりやすい形で記載することを心がけましょう。
【例文】
今年度の売り上げは120万円、目標である100万円に対し達成率は120%となった。その反面、新規契約の獲得数は目標である30件に対し25件だった。
既存契約の対応に追われ、新規契約獲得のために時間を割けなかったためと考える。次年度は新規契約獲得のための営業プランを別途策定し、新たな顧客への営業活動を計画的に行なう。
公務員の例文
数値化しにくい業務が多い場合があるので、日常の業務での具体的な取り組みについて詳しく記述しましょう。
小さな取り組みや結果でもしっかりと明記することで、能力や熱意を積極的にアピールします。
【例文】
法律の改正により業務が一部変更となったことから、ミスを事前に防ぐためチェックリストを作成した。これによりミスの発生率0%という成果を出せた。
また、チェックリストを部署内で共有し部署全体での作業ミス削減に貢献した。
技術職の例文
技術職には企業の課題をどのように把握し、課題に対してどのように技術貢献ができたかという点が求められます。
作業効率化や品質向上のための取り組みや実績を具体的に記述しましょう。
【例文】
デバック工程において多発した品質の問題を解決するため、デバック項目や手法の見直しを提案、実行した。
初期工程での確認項目を追加したことで、バグ検出率が15%向上。品質向上だけでなく後工程での手戻りを防ぎ、作業工数も削減した。
製造職の例文
製造工程が細分化されている現場においては、製造職に求められるスキルは明確です。
作業を確実に行なっているかどうかや、スキル習得への熱意などを具体的に記述しましょう。
【例文】
作業効率を向上させる作業方法を提案した。提案は部分的に採用され、担当セクションでの作業工数が削減された。
また、同僚とともに資格取得のための時間を計画的に捻出した。来年度前半期までの取得を目指す。
介護職の例文
介護職には、介護における知識やスキルの向上はもちろん、環境整備への取り組みなども求められます。
自主的に設定した目標を基準に自己評価を客観的に行ないましょう。
【例文】
利用者に応じたリスクマネジメント意識を職員間で共有するよう提案した。具体的には、施設の外に出てしまう利用者に対して施錠を徹底するなど。
また、職員間で論文、研究書、書籍などで得た知識の共有を計画し実行した。職員の反応も良かったので、今後も継続して行なう。
まとめ
人事評価は企業が社員の実績や能力を正確に把握し評価するためだけではなく、社員自身が自らを見つめなおし今後の成長に活かすためにもとても重要な工程です。
そのため決して適当に書かずに、自分の実績を十分に伝えられるように気を付けましょう。
人事評価シートを書く時には、この記事で紹介した人事評価の目的や書く時のポイントをしっかりと意識して実践してみてくださいね。